第3話 神は貴方の味方だ


聖堂内にある食堂には既に複数の修道女達が席に着いていた。


「あっ! ブリッジちゃんっ! 」。


ブリッジが食堂に姿を現すと数人の修道女達が歩み寄ってきた。


「おはよ~! みんな~! ごめんね~! 」。


ブリッジは申し訳なさそうな様子で修道女達に両手を合わせた。


「しょうがないよ~! 昨日は夜遅くまで演劇の稽古だったんだし、お休みの日もずっと無かったでしょう? 一応、お部屋まで行って声は掛けたんだけど、無理矢理起こしちゃうのもなんか可哀想だったから...」。


「ブリッジちゃん、今日は休んだら? 無理しちゃうと倒れちゃうよ? 」。


「そうだよ~! 心配だよ~! 」。


修道女達は先程のセブンスと同様に、心配そうな表情を浮かべてブリッジにそう言った。


「ありがと~! でも大丈夫だよ~! 久々にぐっすり眠れたから! 」。


「...それでしっかり寝坊もしたと」。


皆の前で気丈に振る舞っているブリッジに対し、遅れて食堂内に入ってきたミュージーは微笑を浮かべながらそう横槍を入れた。


「...」。


ブリッジは頬を膨らませながらしかめっ面でミュージーを睨み付けた。


「あっ! ミュージーさんっ! 」。


「キャ~! ミュージーさんよ~! 」。


「ミュージーさぁ~ん! 」。


ミュージーが姿を現すと席に着いていた他の修道女達も立ち上がり、目を輝かせながら歩み寄ってきた。


「やぁ、おはよう」。


ミュージーは笑みを浮かべながら修道女達に挨拶をした。


「おはようございま~す! 」。


「ミュージーさんっ! 今日もかっこいいですねっ! 」。


「ホント、背が高くて凛々しいわ~! 」。


「こらこらっ! 皆さんっ! はしたないですよぉ~! 」。


セブンスは苦笑交じりで修道女達にそうたしなめた。


「はっはっは~! 何やら賑やかですな~! 」。


アングリー神官長は満面の笑みを浮かべてそう言いながら食堂に姿を現した。


「あっ! アングリー神官長っ! 」。


修道女達はアングリー神官長の姿を確認すると、慌てながらもその場で姿勢を正しくした。


「ほっほっほ~! おはようございます、皆さん。今日も元気そうで何よりですな~」。


「お、おはようございます...」。


先程まではしゃいでいた修道女達は、恥ずかしそうにうつむきながらアングリー神官長に挨拶を返した。


「さぁ、皆さん。席に着きましょう。配膳の方がそろそろ食事を運んできますわ」。


セブンスがそう促すと、修道女達は続々と席についた。


「ミュージーさんも久々に私達と朝食はいかがですかな? 」。


アングリー神官長がそう食事を勧めると、ミュージーは苦笑いをしながら人差し指でポリポリと自身の頬を掻いた。


「あ、いや...。僕は城へ戻らなくてはいけないので、この辺で失礼します」。


「そうですか、兵士としての御仕事は大変だと思いますが御自愛くださいね」。


「ありがとうございます」。


「えぇ~!? ミュージーさん御一緒に食事しましょうよぉ~! 」。


「ミュージーさぁ~ん! 」。


「はははっ! すまないね、みんな。また今度ね」。


ミュージーは修道女達に微笑みながらそう言い残して食堂から出ていった。


「はぁ~! 今日はミュージーさんに会えて幸せな日だわぁ~! 」。


「ミュージーさん優しいしかっこいいし、背が高くて素敵よねぇ~! 」。


「王様直属である特殊治安部隊として活躍している優秀な兵士様ですもの~! 噂では騎士団の方へ転勤されるみたいですわよ~? 」。


「ホントォ~? 馬族魔獣に乗馬していらっしゃるミュージーさんを御目にかかりたいわぁ~! 」。


「...」。


嬉々とした様子でそう話していた修道女達を余所に、ブリッジはミュージーが去っていた食堂の出入口を神妙な面持ちで見つめていた。




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