27. 少年たちの事件簿 I


  第二王子は「サナシスとハミル」の調書を手に取ってみた。読み直すのは久しぶりである。

 

 その事件が起きたのは、14年前。

  それにはこう記載されている。

      

 *

 サナシスとハミルはともに16歳、島で生まれて、島で育った。

 孤児だが、これまで犯罪は犯したことはない。


 今回のことについては、ふたりはいくら質問されても、口をつぐんで、なにも言おうとしない。


 *

 茶色の風紀フクロウの証言。


 私がなんか変な音を聴いて、海辺に飛んでいくと、まだ少年だと思われるふたりが顔を近づけているようなので、観察してみると、なんだか顔をなめ合っているように見えました。

 これは風紀ルールに違反している行為ではないかと思いました。


 怪しいとは思っても、まだ確信がなかったので、木の上に留まって観察していると、ふたりがキスをし始めましたので、逮捕したしだいです。


 *

 検察の見解

 

 サナシスとハミルはともに16歳。孤児。

 風紀違反の現行犯で逮捕されて、それぞれ牢屋にいれられた。

ふたりは黙秘権を行使したが、検察側にはフクロウの証言と動かぬ状況証拠があった。

 

証拠1: 

 ハミルの顔が唾液で濡れていたこと。


証拠(証言)2:

 茶色のフクロウが「海の波が太陽に反射して輝くように、少年の白い肌の上で、つばがきらきらと光っていた」という現場にいなければわからない確固たる証言をしていること。


証拠3: 

 科学検査では、ハミルの顔についていたのは波しぶきではなく、人間の「つば」か「よだれ」か「唾液」などの消化液だと判明したこと。


 以上のことから、検察側は99・9%いや、100%の勝利を確信した。

  

        

             *

             

 

  第二王子はその裁判記録のほうを開いた。

  ふたりの弁護人は、エヴァンネリ。

 

  ああ、弁護をしたのが、あの玄関だったのか。

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