女神アテナに挑んだ少女ー転生から始まる地中海の英雄譚
九月ソナタ
一章 ゴーシャン王国
1. 少女、村を出る
ゲンカンは13歳のやせっぽちな女子である。
ゲンカンとは変な名前だが、これは赤ん坊の時に拾ってくれた
絨毯工房の
古い木製の箱を背負っているが、その中にははさみと布がはいっている。時々、箱から甘い菓子の匂いがするのは、それは飴屋の少年がもっていた箱ななのだからである。
ゲンカンは絨毯の仕事をしていた時は、運動といったら布で作った球を
だから村を出たすぐには心臓がすぐに悲鳴をあげ、
でも、1ヵ月も歩き続けるとしだいに慣れてきて、歩くのが楽しくなった。
工房にいた時には、靴の指のところに穴があいたり、足のサイズが合わなくなったら、新しいのがもらえた。けれど、旅に出ると、
ゲンカンが初旅で学んだことはほかにもある。
「歩けば、身体が強くなる。でも、靴は減る。腹も空く」
ということもそうだ。
ゲンカンは夜になると、アーニャのことを思った。アーニャは工房の親方の奥さんで、母さんみたいな人だった。
工房に戻りたいとは思わないけれど、楽しいことがいくつもあった。アーニャがいつもそばにいてくれたし、友達もいた。手を動かしてものを作るのも、大好きだった。
ゲンカンは太陽を見て、その沈む方向に歩いて行った。
そちらの方角に、友達のジャミルがいるはずなのだ。ゲンカンはジャミルを追って旅に出たのだ。
どのくらい歩けば、ジャミルのいる西の国に着くのかはわからない。世界というところは、思った以上に広いのだ。
世界に果てがあるのだろうか。どこが端っこなのだろうか。
これまでの人生では、そのうちになんとかなるだろうと思って生きてきたけれど、どうにもならないことがでてきた。
出発の朝にアーニャからはお金をもらったし、自分の貯めたお小遣い、友達からも
どうもお金というものには羽根がついているらしく、どこかへ飛んでいってしまったようだ。
ゴーシャン王国の主都に着いた時には、ゲンカンのさいふは空っぽだった。さて、どうしようか。
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