第4話 自称ライバルは真面目だけどドジっ娘で可愛い。

文章を少し修正しました。



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 好きなアニメ世界へ転生したと言っても、リョウガは原作を崩すつもりは毛頭なかった。

 アニメも漫画もそうだが、あまり殺伐としてない割りにヒヤヒヤとする場面も少なからず存在する。


 特に厄介だったのはゲーム版で導入された『地下の超古代ダンジョン』の攻略。

 このゲームではレベルシステムが加わり、実際にキャラを育ててモンスターとバトルして勝ったり、迷宮を攻略しないとストーリーが進まない。ある程度のバトルゲーのセンスも試される。

 その上、選択肢次第では危険なシナリオルートや厄介なモンスターに遭遇してしまい、ヒロインたちがかなり危機的状況に追い込まれる厄介なゲームだった。


 なので攻略キャラも十分に成長させて、パーティー編成も慎重に選ぶ必要があったが、攻略重視なゲーマーと違ってリョウガはたとえ非効率だとしてもゲームヒロインは絶対に外そうとはしなかった。


 何故なら―――




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 で、何故こうなったわけか? まぁ俺が悪いのは分かるが……ここまでやる?


「こ、これでよろしいでしょうか? せ、先輩」


「……まぁいいでしょう。ところどころ誤字、脱字はありますが、目を瞑りましょう。それに」


 縛られた椅子から解放されたと思ったら、正座しながら膝の上に分厚い石の重り(四角ブロック)を置かれて、それを机代わりに汗ダラダラで反省文を書かされていた。


 いやいや、何処の拷問教室だよ!って言いたいが。


「(にこ?)」


「(うわー超怖い)」


 師匠ことカグヤ先輩はニコリと微笑んで超怖い。

 アニメや漫画で見た敵キャラをお仕置きする時の笑顔だから余計に恐怖が倍増する。中学時代のキツイ指導の所為で余計怖い。


「その反省し切っている貴方の姿を写真でお見せすれば、三年の先輩方や先生方も不満は納めるでしょうし」


「先輩の鬼っぷりも伝わると思いますけどね」


「ご安心ください。私がということはどの学年関係なく、既に学園全体の周知されているので」


「ハハハハ、マジでブレませんねぇ。はぁ、先輩には一生勝てる気がしませんわ」


 もうラスボスの間違いじゃないだろうか? いっそ清々しいくらいのメイドの生徒会長に俺も降参ポーズで両手を上げた。


「そう簡単に抜かれたら先輩として、そして師としても威厳がないじゃないですか」


 逆に勝てる人がどのくらいこの学園にいるのか。今度のはさっきとは少し違う優しげな微笑みを向けてくる。

 微かに魔力が練られた指を一本上げると膝に乗っていた石のブロックが退かされてやっと解放された。


「ですが、貴方の所持する『スキル』と『あの魔法』なら、そう遠くない未来で私に届いて追い越すかもしれません。……あるいは既に届いていますか?」


「それこそご冗談を。さっき先輩が言ったじゃないですか。簡単に抜かれたら先輩として師としても威厳がないって」


 流石に誤魔化せるとは思っていないが、嘘でもない。

 ただカグヤ先輩はそれ以上踏み込むことはしなかった。


「ああ、そうでしたね。自分で言ったのに忘れてました」


「ハハハッ、先輩もドジっ娘ですね!」


「私も? ってもしかしてイリナさんのことですか? あの子もそこまでじゃないと思いますが」


「それは甘い。甘過ぎますよ先輩!」


 話題をズラすつもりはない。その言葉こそは俺の正直な本音である。


「よくポンコツになるヒナちゃんとは別の要素が備わっている。間違いなくドジっ娘魔法少女のイリナちゃんですよ!」


「本人がこの場にいなくて本当に良かったです。あの子は真面目ですが、沸点も低い。生徒会室で暴れられたらお掃除が大変なことになってました」


 先輩の言い方も結構失礼な気もするが、いちいち口にしていたらまた時間を取られてしまう。

 時間も結構経っているので余計な脱線はここまでにして、テキパキと生徒会室を後にした。




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 このアース魔法学園には『地下の超古代ダンジョン』が存在する。

 前世の俺が見ていたアニメには存在しなかったが、ゲーム版で導入されて広がり後々に公開された続編アニメや漫画にも追加されたものだ。

 

 そこにはモンスターが生息したり、定番の薬草や宝箱などのアイテムは勿論あり、謎に包まれた魔法兵器なども存在したりする。

 

 出入りが出来るのは魔法使いの女性とスキル所持者の男性のみ。 

 当然であるが怪我は勿論、命の危険もある。


 それがダンジョンである。地下の階層は100階を軽く超えており、まだまだ謎多き地下迷宮であった。

 だからソロではなくパーティーでの攻略が推奨されている。……のだが。


「やれやれ、任務が終わってすぐダンジョンとはお前も大概だなイリナ」


「何が大概なのかは知りませんが、私の魔法だと外では鍛錬に不向きなので、当たり前のようにこちらを利用しているだけですが? 何か拙いことが?」


 階層にしてそこは地下30階層。灰色の洞窟のような場所で普通なら地上からなら最低でも1日は掛かる筈の場所。

 レベルもランクも高いパーティーでの攻略が当たり前な階層である。

 俺が軽く引いているに可愛らしく小首を傾げる金髪ポニテの女子は全然気にしていなかった。


「でもちょうど良かったです。この辺りのモンスターもそろそろ狩りがいがなくなっていたので」


「真面目な顔でさらっと怖いこと言ってるよコイツ」


 格好は白にピンクの大きめなスカートと赤いマント。

 可愛らしいが、既にボロボロで色々ヤバいことになっており、スケベな俺でも流石に色々と言いたいが、肝心の本人は全然気づいていない。


「我々のレベルも大体同じの筈。体の方もだいぶ暖まりましたし、そろそろ本気を出したいと思っていたところです」


 武器と思われる緋色の槍の先端は金色の剣になっており、近接での剣戟としても使用可能。

 さらに杖としても有効なので近距離、中距離、遠距離、全てに対応している。


「お手合わせ、して頂けますか? 


「カッコよくクルクル槍を回してやる気満々なところ悪いけど、俺が来るまで結構な数のモンスターと戦ってたのか? 上とかスカートとか、結構際どいぜ?」


「……へ?」


 数秒、自身の大変際どい、というかほぼ見えている服の中に隠されたが丸見えであることに気付いた自称俺のライバルことイリナ・クラムの顔は、瞬間湯沸かし器のように一瞬で真っ赤かに沸騰すると階層全体に響くくらい悲鳴を上げた。


 騒ぎに反応してモンスターが大量にやって来て、俺が苦労する羽目になるが、良いもの見られたとプラス思考で納得した。


 そうやはりゲームパーティーにはドジっ娘は不可欠なのである!




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自称ライバルは真面目ですがドジっ娘で、ゲーム版で登場しているヒロイン。

魔法少女としては戦闘力は非常に高いが、よくドジを踏み曲がったことを嫌うタイプ。

何故リョウガとライバル関係になってしまったかは次回明かされますが、ザックリ言うならリョウガの女を見る目がポンコツ過ぎたってところでしょうか(笑)。


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