霊異研究会
紅月(あかつき)
#1 猫耳少女(上)
陰鬱な午後、学校の図書館には深い静けさが漂い、時折数人の生徒が通り過ぎることで、その静寂が破られる。この場所は有馬直清のお気に入りの場所で、現実から逃避し、書籍の世界に浸ることができるからだ。特に都市伝説を扱った書籍を好んで読む。
その日も彼女は再び図書館に足を運び、『都市伝説の真実』という本を手に取った。ページをめくりながら、その文字が幽霊のように目の前で跳ねるように感じる。その本はさまざまな霊異現象を詳細に記録しており、その中に「猫耳少女」という伝説が特に彼女の注意を引いた。
猫耳少女とは、白いドレスを着た、猫耳の生えた美しい少女で、独りで帰る生徒の前に現れ、彼らを引き寄せ、次々と不思議な霊異現象を引き起こすと言われている。
「面白い話だな。」直清は独り言をつぶやき、心の中で思った。彼女の気持ちは高揚し、ついに「猫耳少女」がどういう姿をしているのか、もしかしたら自分も本当に出会ってしまうのではないかと、夢のようなシーンを想像していた。白いドレスを着た少女が薄暗い灯りの中で舞い、空気中には神秘的な香りが漂い、まるで覚めることのない夢のようだった。
その時、突然図書館の灯りがちらつき、直清は頭を上げた。周囲はさらに陰気に感じられる。彼女の心には不安が広がり、何かが暗闇から彼女を見守っているように感じられた。すぐに窓の外に目を向けたが、見えるのは厚い雲に覆われた空だけだった。この状況は一瞬の恐怖を感じさせるが、同時に謎の好奇心を呼び起こしていた。
深く息を吸い込んで、これはただの電灯の不具合だと自分に言い聞かせる直清。しかし、すぐに彼女はその影の正体を確かめたくなり、書棚の奥に向かって歩き始めた。近づくにつれて、心臓は激しく鼓動し、まるで未知の存在に近づいているかのようだった。
その時、書棚の角を曲がると、直清はあの神秘的な影を目にした。彼女の心臓は一瞬止まり、白いドレスを着た少女が猫耳をつけて、静かに書棚の間に立っていた。少女の顔は夢のようにぼんやりとしており、長い黒髪は肩のあたりで揺れていた。彼女の目には言葉では表現できない魅力が漂い、直清に近づくように呼びかけているようだった。
直清は恐怖と驚きが入り混じった心情の中、警鐘が鳴り響いた。これが本当に「猫耳少女」なのだろうか? 彼女の直感は、目の前の出来事が普通ではないことを告げていた。直清はその場を離れたいと思うが、好奇心が抑えきれず、足が地面に釘付けのように動かなくなった。
「あなた…あなたは誰?」直清は震える声で尋ねたが、静かな図書館の中でその声はかすかに響くだけだった。
少女は答えず、ただ微笑んだ。まるで直清が近づくのを待っているかのように。直清の心には強烈な衝動が湧き上がり、近づきたいという欲求が生まれたが、恐怖がその心に疑念をもたらしていた。未知の霊異現象を前にして、この少女の謎を解き明かしたい気持ちと、何か恐ろしいものに巻き込まれることへの恐怖が交錯していた。
その瞬間、猫耳少女は振り返り、図書館の奥へ歩き出した。彼女の動きは優雅で軽やかで、まるで幽霊のように静かに消えていった。直清はその瞬間に失われたような寂しさを感じた。まるで奇遇が目の前に現れたかと思うと、すぐに消えてしまったかのようだった。彼女は唇をかみ締め、もう一度周囲を見渡したが、そこには冷たい書棚と静かな空気しかなかった。
「彼女はどこに行ったのだろう?」直清は心の中で疑問を抱き、手に冷や汗を感じていた。その時、再び図書館の灯りがちらつき、不安な気持ちが膨らんだ。まるで暗闇の中に何か隠れているかのように。
突然、書棚の向こう側から低く、ぼんやりとした声が聞こえた。それは耳元でささやかれたように感じられ、直清の心は再び高鳴った。振り返っても、そこには誰もいない。ただ、自分一人の姿だけがそこに残されている。恐怖を感じてその場を離れたいと思うが、足は動かない。
その時、耳元で軽やかな笑い声が響いた。その声は春風のように優しく、直清の心を揺さぶった。声の源を探し続けても、やはり誰の姿も見当たらない。直清の心には不安が広がり、まるで自分が完全に異なる世界に入り込んでしまったように感じられた。
「これって…信じられない。」彼女は心の中でつぶやき、恐怖と好奇心が入り混じったまま、音のする方向へ向かって歩き始めた。直清の心は疑問でいっぱいだった。これは一体何が起こっているのだろう? 彼女はもう一度その真実に迫りたいという気持ちが強くなり、気づいた時には知らぬ間に深い霊異の呪縛に巻き込まれていた。
本書は、直清がその謎にどう立ち向かうのか、彼女の冒険が描かれていく物語です。
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