他の男と仲良くしておいて今更幼馴染の俺に告白してきても遅いんだと言いたかったが手遅れなのは俺だった
古野ジョン
第1話 幼馴染が親友と仲良くしている
恋という言葉は幼馴染という関係性にそぐわないような気がする。昔から一緒にいて、遊んだり、勉強したり、風呂に入ったり。そんなの当たり前のことだったし、それを不自然に思うことなんて一度もなかった。
「し、しまちゃん!」
「おはよう、朱里」
「おはようっ……!」
もちろん、俺はカッコつけてクールに振る舞う。ちなみにしまちゃんとは、
「あー、また寝ぐせついてるー!」
「えっ? 直したつもりだったんだけどなあ」
「おばさんに怒られないの?」
「うちのかあさんはもう諦めてるからな」
「もうっ、ちゃんとしてよ!」
朱里は黒髪のボブを揺らし、ぷりぷりと頬を膨らませていた。かわいい。その様子をハハハと笑って受け流し、机の中に教科書なんかを入れていると、朱里もいつの間にかいなくなっていた。おや、自分の席に行ったのかな――
「あの、
「えっ、俺?」
そう思っていると、前の方から朱里の声がした。話している相手は――
「どうしたの、梅宮さん?」
「えーっと、その……」
いつも通り、洋一は紳士的に相手をしていた。洋一は人格面も大変すばらしく、誰に対しても分け隔てなく接する。たとえ朱里が言葉に詰まっていてもそれを急かしたりはしない。……朱里、俺以外の男と話すことも出来たんだな。なんか悔しい。
「ちょっと、相談があって……」
「相談?」
行儀悪く二人の会話に聞き耳を立てていると、朱里が気になることを言い出した。相談だったら俺にしてくれればいいじゃないか。部屋にハエが出たとか、高いところにしまった本が取り出せないとか、どんな些細な相談であってもいつだって俺が引き受けていたのに。少しヤキモチを焼いていたところ、朱里が顔を真っ赤にして口を開いた。
「その、ここでは話せないことなので……放課後とか、時間ありませんかっ?」
「えっ? い、いいけど……」
えっ? 洋一と同様に、思わず困惑して声を上げてしまった。朱里が相談? それも教室では話せないこと……? 居ても立っても居られなくなり、席を立つ。
「ちょっと、朱里――」
「よーしお前ら、席につけー」
しかしタイミングが悪いことに、ちょうど担任が教室に入ってきてしまった。俺はしぶしぶ席に戻る。
相談事、それもみんなの前では話せないこと。……まさか、恋の話じゃないだろうな。しかもわざわざ洋一にするなんて。
悶々とした気持ちが晴れないまま、その日はただただ時間が過ぎていった。しかしこの日から、朱里と洋一の距離はどんどんと縮まっていくことになる――
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