第27話 自分の物語に没入する

創作の中で最も心が躍る瞬間の一つは、自分の物語に完全に没入できたときです。その世界に入り込み、登場人物の感情を共有し、物語がまるで現実のように感じられるとき、創作はただの作業ではなく、心の冒険に変わります。自分の物語に没入することで、創作は深く、そして豊かなものになっていきます。


私は以前、自分の物語を「外から眺める」感覚で書いていた時期がありました。物語を組み立て、キャラクターを動かすことに集中しすぎて、その世界の中に自分自身を浸らせることを忘れていたのです。結果として、物語にはどこか冷たさが残り、自分が本当に表現したい感情が表に出てこないことがありました。


しかし、あるとき自分に問いかけました。「この物語の中に、自分はどれだけ入り込んでいるのだろう?」と。それ以来、書くときにはできるだけ物語の中に身を置き、登場人物たちと一緒に歩き、感じ、悩むように心がけています。例えば、キャラクターのセリフを書くとき、私はその瞬間に彼らの気持ちを想像し、まるで自分がその場にいるかのように言葉を紡ぐようにしています。


物語に没入するためのコツの一つは、「その世界に自分が生きている」と想像することです。その物語の中で、空気はどんな匂いがするのか、風景はどのように見えるのか、音はどんな響きなのか――五感を使って物語を感じることで、現実と同じくらい鮮明な世界が広がります。その感覚が、物語に命を吹き込み、リアリティを生むのです。


また、キャラクターに寄り添うことも重要です。キャラクターが何を考え、どのように感じているのかを深く掘り下げることで、彼らがただの創作物ではなく、本当の人間のように生き生きと感じられます。キャラクターたちが自分の意思を持ち始めたとき、私はその物語の中に完全に没入していると実感します。


さらに、物語に没入するためには、自分の心を開くことも必要です。自分が普段抑えている感情や、触れたくないと思っている部分にあえて向き合い、それを物語に反映させることで、深い没入感が得られます。自分自身の一部を物語に投影することで、その世界はより強い感情を持つものとなります。


自分の物語に没入する時間は、現実を離れ、自由に創造の翼を広げる瞬間です。それは自分の内側と向き合い、自分だけの世界を築き上げる喜びでもあります。この没入感が、創作の醍醐味を感じさせ、書くことを特別な体験にしてくれるのです。


これからも、自分の物語に全力で入り込み、その世界を深く掘り下げていきたいと思います。物語の中で生き、感じ、考えることで、私の作品がより豊かになり、心に響くものになると信じています。没入することで広がる創作の可能性を楽しみながら、今日もまた物語を書き続けます。

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