第12話 本当に伝えたいこととは何か

創作に向き合うとき、いつも自分に問いかけるのは「本当に伝えたいことは何か?」ということです。どんなに華やかな言葉や巧妙な構成で書かれていても、心から伝えたいものがなければ、それはただの空虚な表現に過ぎないと感じています。言葉に重みや深みを与えるのは、その背後にある真摯な想いなのです。


書き始めた頃は、他人にどう映るか、どう受け取られるかばかりを気にして、言葉がどこか他人のためのものになっていたように思います。けれども、創作を続ける中で「自分はなぜ書きたいのか?」と自分に問いかけるようになり、自分の中に眠っている「本当に伝えたいこと」に気づくことができました。それは、人からの評価や認められるための言葉ではなく、自分自身が感じている真実の表現でした。


「本当に伝えたいこと」を見つけるためには、自分の感情や経験に向き合う必要があります。日々の些細な感情や思い出の一場面、その中に込められた感覚を深く掘り下げることで、心から出てくる言葉が見えてきます。これには時間がかかることもありますが、自分の内側を丁寧に探っていく過程は、とても貴重なものです。


また、何を伝えたいのかがはっきりしていないと、創作がぶれてしまうこともあります。「これで伝わるのだろうか?」と迷ったり、「もっとこうした方が受け入れられるかもしれない」と考えすぎたりして、言葉が本来の力を失ってしまうこともありました。けれども、「誰かに伝わるかどうか」ではなく、「自分がどうしても伝えたいと思うこと」に焦点を当てることで、より純粋な表現が生まれるのです。


本当に伝えたいことを見つめ直すことは、時には苦しくもあります。自分の弱さや痛みと向き合う瞬間もあるかもしれません。しかし、その先にあるのは、自分だけが知っている真実のかけらです。それを見つけ、形にすることで、作品は初めて自分らしいものとなり、他人には決して真似できない独自の表現が生まれるのです。


創作は、自分の心の中の声を拾い上げ、世界に投げかける行為です。「本当に伝えたいこと」を追求することで、言葉には魂が宿り、自分の内面が表現の中で輝き始めます。その輝きを大切にしながら、これからも自分だけの表現を続けていきたいと思います。

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