第五話 ハートブレイカー Heartbreaker 3 ③
マンティコアが凪の姿になって、私がその横で奴隷のように並んでいるのを……たとえば、私が門番をやっていて、凪がその横にいて、私が「次の食料はアレがいいですよ」なんて教えているところを……そしてそこに、この前私が失恋した先輩が可愛い彼女と一緒に来たとしても、私はもう何とも思わないで、機械的にしか挨拶をしないのだ……。
しかもそれだけではない。マンティコアの恐るべき言葉は、その後ろの彼女たちの目的を表していた。
彼女と早乙女正美は、ただ自身の保身のためだけに私たちを殺すのではないのだ。これは彼女たちの、世界を人間から乗っ取る計画の一部なのだ……。
こんなのが……こんな奴らが学校から卒業して外に出たら、世界はいったいどうなってしまうのだ!?
彼女は近づいてきた。
「…………!」
私は、エコーズの身体をぎゅっ、と抱きしめた。
そのときである。
傷ついた彼の腕が、ゆっくりと差し上げられた。
ぶるぶる震えている。指は握るでも開くでもなく、中途半端に力無くだらりとしていた。
その手で、彼はマンティコアを指した。
「なんだ? なんのつもり? まだ、なんかしようって言うの?」
マンティコアは嘲笑った。
「…………」
エコーズは、しかし彼女を見ていなかった。
彼女の向こうにひろがる星空を見ているようだった。
そして彼は、誰かを相手にするでもなく、ただ空だけに向かって、急にはっきりとした言葉で喋った。
「──我が身を〝情報〟に変えて、今、御許に〝報告〟を送る!」
次の瞬間、私の目の前は真っ白な閃光に塗りつぶされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます