第13話 目の前での被害

「これは…ちょっと他人は信用できない状況だなぁ…」


 ふとそんな事を考える。流石にこの情報を鵜呑みにするほど馬鹿じゃない、と言いたいけど、経験上あの目つき、目の奥の光。嘘を言っている感触ではなかった。


「ちなみに万妖麗寿は大丈夫なんだよね…?」


「ああ、もちろんだ。といっても、こんなの口先でしか言えないから信用するのは難しいだろうがな」


「大丈夫、声色でわかるさ。刀だから汗の滲み具合とかはわかんないけどさ。言ったと思うけど、私の前世、めちゃくちゃ凄いんだからね?」


「そうだな。そして今も凄いだろう?魔法まで使いこなし、麗剣や紺の術を使いこなす、とても人間とは思えない性能だ」


「…それ、褒めてる?」


「いやいやいや、もちろん褒めてるだとも!」


「信用なんないなー?」


「え!ちょっと!?声色でわかるんじゃないのか!」


「なにそれ知らなーい」


「え、ちょっと、ごめんって!」


「許せないな?」


「ごめんなさいってー!」


 こんな馬鹿みたいな会話も、今は本当に心の支えになる。前世では全ての人間を疑い、心の中で殺してきた。

 そう考えたら、現状大した問題はないんじゃないか?前世の周りはもっと酷かった。私も一応嘘を見抜く技術と勘を持っている訳だしね。


「そうだよね!適度に他人を疑い続けるのは全人類共通みたいなところあるしね!」


「(その解釈はどうなんだ…?)」


 万妖麗寿がそんなことを思っているとはつゆ知らず、私は自分で解釈するのだった。



「ァァ…」


「!?」


「蜜奈!」


「間違いないね、悲鳴だ」


「ああ、どうする?」


「そりゃ向かうさ。走るよ!」


 くそ、倒したと思ったらこれか!!まあ疲労は大してしてない、だけど七不思議の可能性は高い…!急げ!


 そして走って声のした所に着いた。ここは図書館か?


「あ、あぁ…」


「どうしたの?」


 一人の廊下にいる女子生徒が尻餅をついて、図書室の中を覗いている。蒼白した顔には、強い恐怖が刻まれていた。


「あ、あす…あすみちゃんが…」


 ふと図書室内に目をやると、


「!!?!」


 そこには信じられないものがあった。


「これって…ミイラ?」


「あ、あすみちゃん…」


「落ち着こうか。私はこの子と関わりが無かったから落ち着けてるところも一応あるけど、本当に友達を想うなら、ここで冷静になって。いい?」


「え、あ、」


「取り敢えず深呼吸してみようか」


 そして深呼吸を10秒ほどさせる。その間に周りの気配を探る。すると、図書室の感覚が微妙…いや、大きく違う事に気がついた。面積も少し大きくなっているが、大きく増えたのは…上方向だ。

 しかもそこに、今までこの世で感じたことの無い圧を感じる。いや、こんなのこの世界とかじゃない。これに比べたら、戦車なんて子虫と同じレベルだ…。生まれて初めでだよ、こんな圧力…。


「この気配は…?」


「ふぅ…なんとか、落ち着けたと思います…」


「ん、素早い感情の切り替えありがと。で、早速でごめんね?今ここで何が起こったか、説明できる?」


「は、はい…。えっと、あっと、え、あぁぁ…」


「…落ち着けない?大丈夫?」


「はな、話します…。えっと、あすみ…あっ、友達が図書室に入って、それで…そこから…私後ろに居たんだけど、私の目の前で扉が、バンッって閉まって、開けようとしても、開かなくて…。それで…何分か経ったら、急に鍵が開いた音がして、開けたら…あすみちゃんが…あ、あぁ…」


 なんだそのホラー展開。あまりにも惨すぎないか?


「あすみちゃんに一体何が起こっちゃったの!?」


 ついに感情を抑えきれなくなったのか、彼女は大声を出してしまう。顔を両手で抑え、涙を零している。


「わからないけど、うーん…さっきの話、悲鳴と走った時間、熱を持ってない感じ…そうだね。自然乾燥って考えるのが自然だな」


「自然乾燥ってそんな…。あすみちゃんは10分くらいしか図書室に居なかったんだよ!?なのに自然乾燥なんて、おかしいでしょ!!」


 彼女が叫んでしまう。無理もない、さっきまで生きてた友達が、急に不可解な死に方をしたのだ。


「(細かい話を聞く余裕は流石にないか…)」


 そして私は図書室内に向かう。多分この中には七不思議がいる。…七不思議か。情報的に十中八九時間を操れる能力の持ち主なんだろう。


「あ、君の友達。ちょっと可哀想だけどもう亡くなっちゃてるから。弔ってあげて?」


「あ…」


 そして私はその死体を彼女の前に優しく置く。


「私は元凶を倒すから。君はその子を連れて、然るべき場所に行って?」


「え、あ、」


 そして彼女を置いていき、図書室のドアを閉める。


 カチッ


「案の定鍵がかかったか…。ま、問題ないかな」


 これは後で壊せばいいし、元凶を殺せばなんら問題は無い。

 それよりもこの空間だ。50メートルありそうな塔の内部の様だ。一面が本で埋め尽くされている。温かい雰囲気のライトが、一周まわって不穏さを醸し出している。

  ふと、30メートルほど上にある階段の様な所にいる、1人の男が目に入る。


「ほう…お客さんかな?」


「ん」


 白く長い髭が目立つ老爺が話しかけてきた。片手には本を、もう片手は杖をついているが、あれは魔術杖だ。決して腰が悪い訳では無いのなだろう


「物騒なお客さんって捉え方で良いよ。君の名前は?」


「ふむ。名を名乗るなら、そちらから名乗るのが定石ではないのか?」


「テンプレだね。いいよ。私の名前は蜜奈。ただの転校生さ。ほら、名乗ったよ?」


「蜜奈…か。あの2人にも、その名前、伝えさせてもらうぞ?」


「あの2人?」


 七不思議の2人の事だろうか?でもまだ3人…いや、第3の不思議の踊るドレスとやらは比較的友好的って話だったはずだ。恐らくそういう面で省かれているのかな。


「まあいいや。君は七不思議で合ってるんだよね?名乗ってって言ったはずなんだけど?」


「おっとすまない。名乗らせてもらうよ。私の名前はウミアタ。しがない名前さ」


「珍しいほうでしょ?」


「君は名前を聞き回り、七不思議を次々と殺していると聞いているが?」


「まあ名前は挨拶みたいなものさ。でも人を殺す奴らは流石に黙って見てる訳にはいかないんだよね」


「ほう。そうか。では次の質問をさせてもら


「いつまで魔法陣展開の暇つぶししてればいいの?」


「…ほう。見抜いていたか」


「そりゃあね。意図的に話を伸ばしてる感じがしたからね。魔力反応は薄いけど背中に出来てるんだから。私が気が付かないわけ無いさ」


「自然にぎこちなくしてたのだが、面白い。面白いねぇ。よし、良いだろう。全力で貴様を殺しに掛かる。行くぞ?」


「雑談、飽きてたんだ。丁度いいね」


 そして奴は上の階段から飛び降りてくる。

 杖はいつの間にか剣の形状になっている。


「さあ見せてやろう!」



 《皇剣こうけん》 時傷じしょう



 突き技か。この程度なら全然、


「余裕だ


 頭を狙ってきたその突きを右に躱すが、もう一撃、突き技が入る。


「おっと」


 体を限界まで反らす。

 両手を地面につけ、カウンター。その勢いのまま足を浮かせ、自分の脚を左右に交差させるように蹴る。刃は上下を向いていた相手の剣を手から無理やり引き剥がす。飛んで行った刀は木の音を立てて5メートルほど遠くに落ちる。

 剣が飛んでいっている間に、刀を鞘から出し、腕を根元から落とす。


 〈紺の術〉 その十三 来疾


 ザンッ!


「おっと」


 奴は距離をとる。


「知ってるよ。君たちはんだろ?だからその程度なら再生出来る。だけど脳の大規模破壊、心臓へのダメージは流石に耐えられないって感じ?」


「今まで七不思議を狩りまくっていた程ではあるな。流石の身のこなしだ」


「はいはいそりゃどう、もっ!!」


 〈紺の術〉その十五 蛇圧じゃあつ


「これは、所謂蛇睨みか。だがこの距離だ。すぐに復活するぞ?」


「ごめんごめん、紺の術はちょっと身体強化が多いんだ。その余裕を作らせて貰っただけだよ」


「…ほう、私の全力が見抜かれているという解釈でいいかい?」


「まあ、そう考えてもらっていいかな」


 〈紺の術〉その五 速剣そうけん

      その六 強化きょうか

      その八 白舞しらまい


 剣術を長けさせる速剣、単純な身体能力上昇の強化、柔軟性上昇の白舞。全部バフだ。


 〈紺の術〉その十八 帯切たいせつ


 そしてこの帯切は、自分の斬撃の軌道を5秒間残す能力。刀身全体に掛かるバフだ。


「準備はいいのか?」


「いいよ。いつでも」



 『時間魔法』 シャイネスクライネクス



「ふむ。乱数で能力値が上がる魔法だが、渋いな」


「私相手にそれは終わったね」


「ふん。ほざいていろ」


 渋いとは言っているが、あれは流石に壊れ性能すぎる。

 老爺であったその見た目は、黒髪の、若い男へと、姿を変えていた。

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