その暗殺者は蜜の味
つばーきき
第1話 暗殺者の少女の転生
「紺一族」世界最高の暗殺一族を聞けば裏社会の人間なら1000人に1000人がそう答えるだろう。一説によると、鎌倉時代から存在する一族と言われている。
そんな紺一族の長に史上最年少で選ばれたものがいた。
800年以上続く紺一族42代目。そんな彼女は今、病院にいた。
「長、困ります。今死んでしまうのは、どうか…」
「ごめんね、でもね、大丈夫だからさ、少し1人にさせてもらえないかな?私だって死にたくないし、簡単に死ぬ命でもないからさ。あなたは私の側にずっといたんだから知ってるでしょ?私、史上最年少の14歳で長になったスーパー天才エリートだよ?それからまだ1年しか経ってなくてまだ15歳なの。そんな年齢で死んでたまるかって話だよ…!」
「長…はっ、承知しました」
個室の戸が閉まる。今は夜の10時で外は真っ暗。病室には6つのベッドがあるが私以外に人はいない。
「原因不明の病とか、今時にもあるんだな」
私の一族は暗殺と言っても、殺すのは悪人ばかりだ。連続殺人犯、裏金で人を間接的に殺すタチの悪い政治家、理不尽な理由で逆に暗殺者を送り込む屑権力者。
殺したのはそんな悪人ばかりのこの私が、なんで、こんな死に方をしなきゃいけないの?
まだ殺してない…、まだこの世には大量の塵がこびりついてる…そうゆう奴らを私は、もっと、もっと…!
「ツッ⁉︎」
また血を吐いた、あと1週間も経てば私は死ぬだろう。ほんとにこの世には神様っていないのかな。それとも人を殺した時点でもうこうなる運命だったのかな。
でもおかしいよね?
私は一族が暗殺家業ってだけだったんだから、こうなるのは仕方ないよね?…いや違う、殺さないといけない悪人がいるから悪いんだ。この世の屑はここにまでも影響を与えるっていうのか。
…ほんとに面倒くさい。ふざけないでほしい。
私、死ぬのか…
嫌だ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
何で?何でなの?何で何で何で…??なんで私が死なないといけないの?
この私が…正義の私が…!
「⁉︎」
しまった、窓の向こうにスナイパーが…。まずい、紺一族が、崩れてしまう…。ひどいなぁ…
「紺一族はっ…任せたからね…‼︎」
最後に…長として、カッコつけられた…かな?
…えへ、あはは、嫌だなぁ
死にたくないよぉ…
パアァン
「ツッ⁉︎」
何だ?手足が、体が小さく感じる?誰か呼ぼうか?
「やえあー」
⁉︎⁉︎なんだこれ⁉︎呂律が全く回らない⁉︎
…というか、私まだ生きてる?
「あら?何か喋ろうとしたのかしら?可愛いわねぇ」
「私達の血があるのだからな。早く喋られるくらいの有能な人材になるかもな」
「ちょっとあなた。私たちの娘なのよ?人材と見るのは結構ですけど、ちゃんと愛情を尽くしてもらいますからね!」
「はっはっは。もちろんさ。この子は立派に育ててみせるよ」
なんだこの人たちは。夫婦か?
そもそも私、何だこれ。
あれ?ん?え⁉︎私、赤ん坊になってるんですけど⁉︎
5年後
どうやら私は異世界に転生してしまったらしい。
森の奥にある小さな家で中は外見通り少しボロくて、でも最低限の快適さがある落ち着いた家。
私はこの世界の両親に蜜奈と名付けられた。うっすらと銀色がかった白く短い髪、頭についている母譲りの猫耳は流石に結構びっくりしたね。
「蜜奈、魔法の練習の時間だ」
「はーい」
「今日は魔法の基礎のおさらいだ。お前は大人でもほとんどいない程の実力はつけたが、知識がなければ応用が効かない。応用が効かなければどう足掻いても勝てない相手が出てくる。そういう訳だ」
彼は私の父親、蝶乃
「まずは魔法とは何かについてだ。魔法というのは物体や概念を生成、操作する特殊な力だ。その実態は血液内に存在する魔力とその流れが体外に放出することで、物体などを生成や操作できる、といったものだ。ここまでは良いか?」
このように今日は父さんから様々な魔法の基礎を教わった。
そう、今更だがこの世界には魔法というものが存在する。
魔法は4大元素の『火』、『水』、『風』、『光』の基本4属性があり、そこから派生する属性はほぼ無限にあるという。人それぞれに適正があり、その適正属性は1人につき1つ以上あり、歴史上最高では4つの適正属性がある人がいたという。適正の見つけ方は、自分の感覚とイメージの仕方だそうだ。
「では改めて、おまえの魔法を見せてみよ」
「はーい」
私はすぐそこに落ちていた石ころを宙に投げ、魔法を発動した。
『空間魔法』
私は魔法を発動し、投げた石ころを消した。
私の使った魔法は、おおよそは『光』と『水』の派生である『空間魔法』。石ころをその空間ごと存在を抉り取る、といった魔法だ。
その他にも『反魔法』という技術がある。
『火』なら『冷』、『水』なら『汚』、『風』なら『土』、『光』なら『闇』といった具合だ。
とにかく私は魔法を極めた。そのうちで私には3つの適正があることがわかった。
『空間』と反魔法の『時間』、『風』と反魔法の『土』、『光』と反魔法の『闇』。
別に適正がなくてもそこそこは魔法が使えるのだというが、私でいうこの3つの適正属性で使える最高の魔法を超えた魔法は使えないらしい。
ややこしいが私はしっかり理解したつもりでいる。要は魔法は属性とその真逆があり、それが1セットで適正になっている、というわけだと思う。そして属性の範囲内ならおおよそどんな操作も可能という訳だ。
…あれ、なんか意味わかんなくなってきちゃった。
そして今日の父さんの魔法の練習は終わった。
「はーい、それじゃあ武術についてやっていくわねー」
彼女は蝶乃
「武術は魔法と違ってとーっても簡単。流派と型があり、それを駆使するだけ。簡単でしょう?」
言葉だけで理解するのは簡単だ。だが型は刃の角度が5度とかでも違えば何も切れない間抜けの完成だし、呼吸の仕方、直前の構え、距離感など、精密な技術が必要になる。
それでも私はこの流派を極めた。お母さんの流派=
「凄いわ蜜奈ちゃん!大人でもマスターできるのはほんの1部なのに!5歳で流派をマスターなんて、世界初なんじゃないかしら!」
「それを言うなら魔法もそうだ。あそこまで魔法を上手く使えるのは私を除けばいないんじゃないか?」
「いずれはお父さんも越して見せるから、覚悟しといてね!」
「はっはっは。期待しているぞ」
「私は絶対に超えられないと思いますけどね!」
「いーや、超えてみせるねー!」
ほんとにこの家族は、居心地が良い。
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