第257話 有名なスポット

無事表彰式も終わり、王都の混乱も収まった頃にはもう帰宅。

いつものペンギン便。ありがたいね。


翌日。

俺は日本に居る。

今日は年に数回の外出日なのだ。


勿論神様には内緒。

と言うか、別に連絡する必要無いだろ。

だって散髪に行くだけだぜ?


そう言えば、引きこもりとかニートって散髪はどうしてるんだろうな?

自分で部屋で切ってるのかね?

ラノベやアニメに出てくるそういう人って意外にさっぱりしてるよな。

引きこもり期間が短いのか? 髪とか伸びない設定?


ネットを見てたら、出張散髪ってのもあったな。

便利そうだけど、さすがに慣れている人に切ってもらいたい。

何も言わなくても、何時も通りに切ってくれるからね。

それに愛用している店のマスターは、詮索をしない寡黙な人。

家から歩いて5分の場所にあるのも良い。


って事で到着しました。


「こんちは~」

「……カズマか。生きてたのか」

「はい? 勿論生きてますよ?」

「……そうか。じゃあ始めるから座れよ」


俺はそのまま椅子に座る……っていやいや! すげー気になるわ!

こっちの世界では、俺って死んだ事になってるのか?!

だとしたら神様に抗議しなきゃいけない!


「あの、何で生きてたって話になるんです?」

「……そういう話をアライさんから聞いたからな」

「あの人か~」


アライさん。

俺の家やこの散髪屋もある、同じ町内のおっさんだ。

無茶苦茶噂話が好きなんだよな~。

俺が住むようになった時も、突撃レポーターのようにやってきた。

あれで町内会長っていうんだから、世の中って判らないよなぁ。


「どんな話か知ってます?」

「……どうせもうすぐ来る。本人から聞けば良いだろう」

「ええ~……」


本人が来るのかよ。

聞けばいくらでも教えてもらえるけど、1聞いたら100くらい質問されるから苦手なんだよなぁ。

日を改めるかと思ったが、既に散髪が始まっている。逃げられない。

しょうがない、覚悟を決めるか。



20分後。

本当にアライさんがやってきた。

……何故手にメモ帳とペンを持っている?!


「カズマ君! 色々聞きたい事があるんだよ!」

「ア、アライさん。その前に聞きたいんですけど。

 俺って死んだ事になってるんですか?!」

「ん? そうだよ?」


何を当たり前の事を聞いてるの?みたいに言い返された!

生きてるから!


「何でそんな話が?」

「ん? 聞きたい?」

「ええ。勿論ですよ」

「ふふふふ。教えても良いけど、代わりにこっちの質問にも答えてもらうよ?」

「はいはい。情報交換ですね。判ってますよ」


この人の恐ろしい所は、こうやって情報を増やしていくのだ。

そして他から聞いた情報と合わせて、真実に近づいていく。

探偵や警察も真っ青な圧倒的な情報量。

ただし、この町限定だが。


「じゃあ教えようか。

 君の家はね、今、有名なスポットになっているんだよ」

「はぁ?! 有名?! 何で?!」

「心霊現象が起きるからだね。

 それが転じて、君は死んだ事になったんだ」


心霊現象って!

ん? よく考えたら神様関連だと、そう思われても不思議じゃないな。

これは神様案件じゃないか?

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