第197話 転んだ理由

「お前たち、何かした?

 走り出したと思ったら、突然転んで。しかもムチャクチャ痛がってるけど」

「いえ、何も?」

「知らなーい!」

「何もしていません」

「否定」


誰も何もしていないのか。

じゃあ、この状況は一体……?


えっと、あの人が開発した『身体強化魔法』を使って、シロ達を倒す為に走り出した。

ここまでは判る。だが、突然倒れて、足を押さえて痛がっている。

釘でも踏んだ?


あっ! もしかして! 王様を守る為に、どこかから狙撃したとか?!

そう思って王様を見たが、あちらも不思議な顔をしている。

そうか、王様も知らないのか。

じゃあやっぱり、何か踏んだのだろうか?


「まぁ、このままじゃあ何も進展しない。

 って事で、ちょっとお前達、確認に行ってくれ。

 治療出来るなら治療してくれても良いから」

「判りました。

 しかし確認はしますが、治療はしませんので」

「あっ、そう……」


どうやらシロ達は俺が狙われたと思っているらしい。

なので非常に怒っている。

……大丈夫だとは思うが、治療のフリして更に痛めつけたりしないよな?




シロ達が見に行って、戻ってきた。


「どうだった?」

「足を骨折していました」

「骨折?! 何で?!」

「さあ? 良い気味ですが」


何で骨折?! 強化してたんじゃないの?!


「ここは私が説明を」

「おお、メガ。判るか」

「はい。予想ですが」

「予想で良いよ」

「では。

 あの魔法は全てを強化するのではなく、筋力を上げたようです」


筋力アップか。

確かにそれなら強くなれるな。

暴力は基本的に力だもん。握力が30kgの人よりも60kgの人の方が強い。

腕立て伏せが5回しか出来ない人よりも、100回出来る人の方が強い。

走るのが早いのも筋力が高いからだ。


「私も経験があるのですが、筋力がいきなり上がると、自己の制御が難しいのです」

「想像よりも自分が早く動くからか?」

「そうです。しかし私、いえ、私達の場合は、肉体改造されていますので。

 脳の反射速度もそうですが、全てのモノが上げられています」

「確かに改造したって言ってたもんな」

「あの人は単純に筋力だけを上げたようです。

 それによって、自分の制御出来る速度を大幅に超えてしまい、足がもつれて転んだようです」

「転んだ理由は判った。

 でもそれで骨折するか?」

「骨は通常のままなので。関節も怪我してましたね。

 後、筋力を上げた事により、体重も増加してたと思われます」


そういう事か。

重量・速度、この辺がアップしているのに、骨や関節、更には脳からの信号伝達速度は元のまま。

結果、順応出来ずに転んで怪我。

納得。

起きるべくして起きた事故だったんだな。


しかし、懸念が一つ。

普通、実践する前に実験しないか?

自分を使わなくても、動物実験とかしないか?

実験もせずに出来たからと、すぐに使うなんてバカだろ。


それにしても、ラノベではお馴染みの『身体強化魔法』。

こんなにも使えないんだな。

強化するなら、本当に体の全ての部位を強化しないと。

ついでに言えば、思考能力も上げないとダメなんだ。


子供の主人公が使えば簡単に大人並の攻撃力になる、作者としては楽な魔法だけど。

ご都合主義とも言うが。

実際には無理のある魔法だったようだ。

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