第18話
はっとしてまぶたをあげた。
「結愛、大丈夫か?」
視界に広がるのは千都さんの顔。
なに、がおきて…?
「結愛?」
「ゆきとさん…」
「なんだ?」
「わたしのなまえ」
「結愛だろ?」
「そ、う…結愛はわたしなの」
「? ああ、そうだな?」
もしかして夢だったの…?
頬をつねったのに…?
そういえば千都さんが遅くなるからって先に寝てたんだっけ…。
「最近様子がおかしいよな。何があったんだよ」
「………こわいこと」
「怖いこと?」
「千都さんを奪うっていう女の子がいて、奪われちゃうのが怖くて…」
涙があふれる。
頬をなでてくれる千都さんの手に自分の手を重ねた。
大好きなこの手が他の人に触れるなんて想像すらしたくない。
ましてやあの子になんて触ってほしくない。
「俺が誰かに奪われるなんてありえねぇよ」
「でも、でもね」
「でもじゃねぇよ」
「私にそっくりなんだよ!?」
そういうと千都さんは目を見開いて、すぐに「ああ」とこぼした。
その意味を聞こうとしたとき、
「俺がお前を間違えるわけねぇだろ。どんなにそっくりだろうと見分けれるに決まってんだろ」
「どこに証拠が…!」
「俺を信じろ。結愛」
「っ……」
千都さんは優しく微笑んで、私の汗ばむ額から前髪をはがした。
「もう一回風呂に入りに行くか」
「……いっしょにはいりたい」
「ああ。当たり前だろ。ほら風邪ひく前に行くぞ」
布団から起き上がってお風呂に入る準備を始めた。
………
その次の日、千都さんに詳細を聞かれた。
両親を見かけたこと。
それから私にそっくりな『彼女』のことを話した。
「お前の親がどうやって来たんだ…?」
「どういうことですか…?」
「お前の親は海外にいるはずなんだ。それも監視付きでだ」
「じゃあ私が見たのは…」
「他人の空似か…。こっちに来たなんて情報も入ってなければ、見失ったとも報告がない」
じゃあいったい…?
「当分、お前の出勤には送迎をつける。俺がしてやりてぇけど都合がつかねぇから、シグにでも頼んでおく」
「ありがとうございます」
「これ以上の接近があれば出勤させれねぇから、それは勘弁しろよ」
「うん」
出勤していいんだ…。
それがとっても嬉しい。
また出勤しちゃだめって言われるかと思ってたからよかった。
「ありがとう、千都さん」
「気をつけろよ」
「はい」
気を引き締めていこう。
千都さんをとられたくないから。
絶対に彼だけは失いたくないから。
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