閉塞感を吹き飛ばせ

柿井優嬉

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 私が通っていた小学校の卒業式は、卒業する生徒の全員が、校長先生から卒業証書を受け取る前に壇上から、将来の夢や目標を高らかに宣言するようになっていた。

 しかし、小六だと、もう純粋に夢を口にするなんて恥ずかしい年頃で、「中学校で部活を頑張る」といった現実的で面白みのない言葉を選ぶコが大半だった。

 そんななか、あいつ——大塚幸平はこう言ったのだ。

「日本の少子化をストップさせまーす!」

 はあ?

 その心で思ったのをもう少しで実際に声に出してしまうところだったくらい、私は「なに、それ?」と驚いた。

 でも、大塚というのはお調子者キャラで、突飛な言動をするのは珍しいことではなく、だからどうせまたふざけたのだろうと考えて、すぐに落ち着いた。

 とはいえ、なんでそんな目標にしたのか、やっぱりちょっと気になるのが消えず頭に残っていて、三年生と四年生では一緒だったけれど、そのときは別のクラスだった私は、同じ公立の中学に進むようだと知っていたので、そこでチャンスがあったら訊いてみようと思っていた。

 ところが——。

「え? 事故に遭った?」

「うん。でね……」

「な、なに?」

「大塚くん、死んじゃったんだって」

「……うそ」

 先に情報を得た友達が教えてくれたのだが、大塚は、卒業式の翌日の春休みにあたる期間に、交通事故で亡くなってしまったのである。

 こうして、卒業式での宣言と事故による他界という二度、立て続けにびっくりさせられたわけだけれども、まさかもう一回そんな機会が訪れるとは、大塚は死んだのだから、夢にも思わなかった。

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