第42話 復活騎士団長

「レイカ姉、すごい人だ!!」


サイシュトアリ国の王都大広場には、大勢の人が集って何が始まるのかとザワザワしています。

広場には大きな鉄くずの山が二つ出来ていて、その前にイオちゃんとゾングさんがいます。

二人の命を守るため鉄くずの山のまわりには、バリケードが出来ていて、衛兵が護り近づけないようになっています。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


歓声が上がりました。


「アーサーさまぁあーーーーーーーー!!!!!」

「うおおおおおおぉぉぉーーーー!!!!! アーサー様だーー」


アサちゃんはすごい人気です。


「おい、みんなぁーー!! アーサー様が通られる!! 道を開けるんだーーーー!!」


群衆が自主的に二つに割れて道が出来ました。


「アーサー様、ご無事だったのですね。よかったーー」

「アーサー様……相変わらずお美しいーーーー!!」


アサちゃんが横を通ると、群衆の中からアサちゃんに声がかかります。

みな、とても嬉しそうです。

私達はアサちゃんの後ろについて行くだけで、楽に鉄くずの山の前に到着出来ました。


「おおおおーーーーー!!!!! レイカ様!!!!」


ゾングさんは、私を見つけると最初に声をかけてくれました。


「レイカ様、そしてアーサー様!! お久しぶりです」


イオちゃんも私の名前から呼んでくれました。

でも、視線はアサちゃんに釘付けです。頬がほのかに桜色になっています。


「お集まりのみなさーーん!! 心配をかけましたーー!! 俺は無事だーー!! 元気になって帰って来たーー!! ありがとーーう!!」


バリケードの中に入るとアサちゃんは手を振りながらあいさつをしました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


群衆から再び大きな歓声が上がりました。


「イオ様、ただいま戻りました」


「はい」


イオちゃんは、赤い顔をして瞳をウルウルさせてアサちゃんを見つめました。

まるで恋する乙女のようです。……えーーっ、アサちゃんは女の子ですよ。大丈夫でしょうか。


「さささ、そんなことより、レイカ様! 鉄はこの通り集めた……」


どうやら、ゾングさんは早く鉄人が欲しくて我慢ができないようですね。

鉄くずの山は宣言通り、ゾングさんの方が少し大きいみたいです。

壊れた武器や防具、曲がった柵や門、果ては鍋や曲がって使えなくなった包丁などもありますね。


「では、行きましょうか」


私は鉄くずの山から少し距離を取り、両手を広げ手の平を鉄くずの山に向けました。


「おっ、おい、いったい何が始まるんだ」

「ばか、おめー、そりゃあ、あれだ。あれが始まるんだ」

「何を言っているんだ。あれじゃあ分からねえだろう!! そのあれってのが何なんだよー」

「そんなもん、みてりゃあ分かるんだよ。だまって見ていろよ」

「なんだよー、結局しらねーんじゃねえか」

「おお、は、始まるぞーーーー!!!!」


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


再び群衆から歓声があがりました。


「す、すげーー!! 鉄くずの山が溶けて無くなった」

「いや、なくなってねえ。水たまりみたいになっているんだ」

「うおおお、そこから、人が出て来たーー」

「あれは、鎧の兵士だーー」

「一体何人いるんだ?」

「百……いや百五十体くらいは、いるぞーー!!」


私は百体の鎧の兵士と、二十五体の男性型と、二十五体の女性型の鉄人を造り出した。


「すげーー!! すげーーぞーー!!」

「い、いったい、あのおチビちゃんは誰なんだ??」

「……」


群衆が静まりました。

それを、見るとゾングさんが満足そうな顔になり、大きく息を吸いました。


「きけーー!! この方こそがレイカ様だーーーー!!!! 又の名をレンカ!!!! レンカの宝刀の制作者にして、この鉄人達の制作者でもある。そしてアーサー騎士団長の育ての親でもあらせられるぞーーーー!!!!!!」


「あ、あんなチビで、アーサー騎士団長の育ての親だと!!」

「あ、あんなチビなのにレンカの宝刀の制作者!!」


群衆のなかからチビチビと言う声がやたらと聞こえてきます。


「あーー、ちびちび言うなしぃーー!! 好きでチビをやってないしーー!!」


「ええーーーーっ」


私が言うと、家の子達がそろって驚きました。


「あ、あんた達!! 私が好きでやっていると思っているのーーーー!!!!」


「ぎゃははははははーーーーーーーー!!!!!」


子供達が大笑いをしています。

でも、その目には涙が浮かんでいます。

そうよね。そんなこと思っているわけが無いですよね。


「うふふ」


私も笑顔がこぼれました。


「あの、私はこの鎧の鉄人をもらってもよろしいですか?」


イオちゃんは一番手前の、鎧の鉄人が気に入ったようです。


「じゃあ、俺はこっちの女性の鉄人だ」


ゾングさんは女性型美女アンドロイドのような鉄人を選びました。


「どうぞ」


「やったーーーーーーーー!!!!!」


王女様と世界一の大商人が小躍りしています。


「じゃあ、アサちゃん。元気なところを皆さんに見せてあげて下さい」


「はい!!」


アサちゃんは返事をすると、レンカ紫龍刀をすらりと抜き構えました。

龍のうろこの模様が太陽を反射して、キラキラ光輝きます。


「…………」


その場にいる人達に緊張が走り、固唾を飲んで見守ります。


「でああああぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」


アサちゃんが紫龍刀を振りながら鎧鉄人の中に突入しました。

パキンパキンと、氷が割れるような冷たい音がします。

アサちゃんは百体の鉄人の間をあっという間に走り抜けました。


アサちゃんは鞘に紫龍刀を収めると、鞘に納めた紫龍刀で鎧鉄人を押しました。

押された鎧鉄人はゆっくり倒れていきます。そして、後ろの鉄人を巻き込みながら次々将棋倒しのように倒れていきます。

イオちゃんの鎧鉄人以外の鎧鉄人は全て倒れました。倒れた鎧鉄人はすべて胸で一刀両断され、魔石を落として真っ二つに分かれました。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」

「すげーーーー!!!!」

「アーサーさまーーーーーーーー!!!!!」


再び歓声が上がりました。

アサちゃんは、声援に応えて手を振ります。

アーサー騎士団長完全復活のアピールは出来たみたいですね。

再び私は鎧鉄人に魔法をかけて、こっちも完全復活させました。

その手にこっそり魔石を握らせました。


「アサちゃん、この鎧鉄人は、アサちゃんの家に置いていきます。日々鍛錬して下さい。ハルちゃんも置いて行きますので、すぐに鎧鉄人は復活できます」


「はい。ありがとうございます」


赤いゴーレムのハルちゃんはゴーレム魔法を使えるようにしました。

これで、ゴーレムは何度倒しても復活させられます。


「ゾングさん、これを」


私は、アサちゃんと同じレンカ紫龍刀をゾングさんに渡そうとしました。


「う、うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


ゾングさんは大喜びでしたが、そのまま受け取らずに手に手袋をはめてから、うやうやしく受け取りました。

そして、後ろを振り返ると、お爺さんの執事さんが立派な箱を持って近寄って来ました。


「ゾング家の家宝といたします」


ゾングさんがきりりと、真面目な顔をしていいました。

私は、思わず吹き出しそうになり、それを我慢しながら言いました。


「あの、ゾングさん。執事の服と、メイド服をこの子達全員分用意して下さいますか。ヤマト商会で働いてもらう予定です」


人型の鉄人は、このままヤマト商会の店員として働いてもらいましょう。


「お安い御用です。最高級品をご用意いたします」


「ちゃんとお金は稼いで払いますよ。だから、あの、普通のにして下さい」


「は、はははーーっ」


今日の出来事はサイシュトアリ国中にすぐに広まりました。

特にレンカがチビだと知らない人がいなくなりました。――なんでやねん。

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