第37話 入団審査

「レイカ姉ーー!!」


 ようやくのんびり出来ると思っていたら、散歩に出ていたうちの体の大きな子供達三人が、お店に飛び込んできました。

 その目がキラキラ輝き、なにか珍しいものを見つけて来たみたいです。


「そんなに慌てて、どうしたのですか?」


「広場に人が一杯います。なんだか楽しそうです」


 シノちゃんが広場を指さして、それをバタバタ上下させています。

 チマちゃんとヒジリちゃんがそれを見てうなずきます。

 どうやら、行ってあげないと収まらないみたいです。


「じゃあ、ちょっと行ってみましょうか」


「はーーい!!」


「うふふ」


 三人の反応が可愛すぎて思わず声が出ました。

 私は用心棒の鎧の鉄人を連れて、戸締まりをして外に出ました。


「こっちーー!!」


 三人に案内されると、王都の中央の石畳の巨大な広場に、大勢の人が集りにぎやかです。


「おっ!? レイカ様このような場所へ何用ですかな?」


 アーサー騎士団の三番隊の隊長ギリザさんです。

 私を見つけて来てくれたようです。

 顔の周りに硬い髭が自由にピンピン生えているまるで、三国志の張飛のような感じの隊長さんです。


「うふふ、この子達が見たいと言うものですから。いったい何が行なわれているのですか?」


「騎士団の入団審査です。各地の田舎からやって来た腕自慢の者達です」


「入団審査!!!!」


 うちの子達が目を輝かせています。

 ――まさか!


「や、やりたいのですか?」


 三人が高速で何度もうなずきます。

 そうとうやりたいみたいです。


「隊長さん、この子達を参加させたいのですが駄目ですよね」


「な、何をおっしゃいますか。大歓迎です。よろしければ、レイカ様もどうぞ」


「ええっ!? でも合格しても入団はしませんよ」


「ふふふ、かまいませんとも」


「あの、この子達も全員入団しませんよ」


「もちろんですとも」


「みんな、隊長さんのお許しがでたわ」


「おおおおーーーーー!!!!!」


 三人が喜んでいます。

 まあ、たまにはこういう息抜きがあってもいいのかしら。

 私は軽い気持ちでいました。




「では、試験の内容を説明します」


 試験の説明をする女性の前に案内されました。

 ギリザ隊長は暇なのでしょうか、ニヤニヤしながら同行しています。


「はい、お願いします」


 一緒のグループの人達と、うちの三人が返事をしました。

 全員で十人が、一緒に試験を受ける一つのグループのようです。


「試験は四種類です。一つ目が知識の試験、二つ目が体力の試験、三つ目が武術の試験、四つ目が魔法の試験です。どれか一つでも100点を取るか、四つの試験の合計が240点以上なら合格です。よろしいですか?」


「わかりました」


 全員で返事をしました。


「では、こちらへどうぞ」


 第二の門の中まで案内されて、アーサー騎士団の建物の中に通されました。

 そこに部屋が用意されていて、一人ずつ別々の部屋に案内されました。


「ではそのイスに座って、これから質問する内容に答えて下さい。御供の方は後ろにいてください。くれぐれも不正の無いようにしてください」


 大丈夫です。私の御供は話す事は出来ません。不正のしようがありません。

 狭い部屋の中には試験官が二人いて、どうやら面接形式で質問に答えて学力を調べるようです。


「わかりました」


「では、最初の質問から。サイシュトアリ国の隣接する国の名前を全て答えて下さい」


 ――えーーっ!! そんなの知らないよーー!!


 私はサイシュトアリ国の事なんか全く知りませんよ。

 あっ! フト国とは戦争中だから、フト国は隣の国ですよね。


「フ……フト国」


「はい。他には?」


「わかりません」


 この後、いくつも質問されましたが、王女イオ様に関する質問と、アーサー騎士団長に関する問題以外は答えることが出来ませんでした。


「はい、レイカさん。22点です。次の試験は体力試験です」


 ――ぎゃーー!! 22点ってやばくない!!


 部屋の外には、うちの子達が既に終わっていて私を待っていました。


「あなた達は、試験どうでした?」


「うふふ、100点でーーす!!」


 三人が笑顔で同時に言いました。


「な、なんですとーーっ!!」


 既に、この子達は入団審査に合格してしまいました。


「なんだか、体が温かくなったときに、次々入って来た知識で全部知っている内容でした。レイカ姉は何点ですか?」


 そうかー。この子達はレベルアップして、知力が上がってこの世界の知識が勝手に頭に入ったんだー。うらやましい。

 まさか、私の点数が一番悪いだなんてーー!!

 チマちゃんめー、私の点数を聞くんじゃ無いよーー。


「うわあ、なんだこの点数、22点だってよーー!! 最低点だーー!!」

「ぎゃぁはっはっは、誰だよーー!!!! この馬鹿!!!!」

「レイカだってよ!! 頭悪すぎだろう、はぁーはっはっはっ」

「おい、こっちは100点が三人もいるぜ!!」


 よりにもよって、点数が壁に張り出されました。

 もう、三人にはバレましたよね。

 くぅ、かっこわるーい!!


「次は、体力テストだ。王都を一周走ってもらう。先導の兵士から、500メートル以上遅れたら失格だ。先導の兵士を追い越したものは100点、50メートル遅れる毎に10点減点だ。いいな」


「はい!!!!」


 家の子達は、全員合格しているのに、体力試験も受けるようです。


「ぎゃはははははははは、なんだあのチビーー!! 走りだしてすぐに500メートル以上離されたぞーー!!!!」


 ――くぅーーっ!! かっこ悪い、私に大人の兵士についていける体力なんかありませんよーー!!


「レイカさん、0点です」


「は、はぃ……」


 いちいち言わなくても分かっています。

 当然のように、うちの子達は三人とも100点です。

 そして、武術試験は木製の武器を使って、試験官との試合形式の試験です。

 当然勝てば100点で、弱すぎれば0点です。


「レイカさん、0点です」


「はぃ……」


 くうううぅ! 言わなくてもいいっちゅうのーー!!!!


「すげーーっ、なんだあの三人!! 試験官に勝っちまったぞ!! 何者なんだーー??」

「それに引きかえ、あのチビはなんだ。何しに来たんだー??」

「ひゃははははーーーー!!!!」


 くぅーーっ!! くやしい!! 皆に馬鹿にされています!!

 ですが、次は魔法の試験ですよ!!

 ここで、100点を出して、皆をびびらせてやるんだからーー!!

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