第11話 驚き

 この日の私の口癖は、「さみしいね」になりました。

 でも、それを言うと残ってくれた子達が、悲しそうな顔になっていたようです。

 それを午後になってから気が付きました。私は愚か者のようです。

 こんな事では、この子達まで私の元を巣立ってしまいそうです。


「馬鹿な私……」


 私は独りごとを言いながら、ぼーっと木人を倒す子供達を見ていました。

 いつもは、お洗濯をしたり、お掃除をしたり、畑の作業をしたりして、皆の事をあまり見ていなかったのですが、今日は何も手につかなかったので皆を見ています。


「えーーっ!!!!」


 私は驚きました。

 森の主すら一撃で倒す木人を、一瞬で十体以上倒します。


「こんなに強いの!?」


 これでレベルが上がらないのなら、出て行くはずです。

 残ってくれた子供達に、何とか新しい方法を見つけてあげないと、この子達もここで成長が出来ないとわかって、出て行ってしまうかもしれません。

 ……何とかしないと。


 ――そうだ!!


 私は、青と赤の重い金属の事が急に頭に浮かびました。

 家に戻って川で取ってきた二種類の重い金属をテーブルの上に置きました。

 私は、この重い金属に魔力を加えます。


「なっ、なにこれ……?」


 この重い金属は、ゴーレムにするのに魔力が大量にいります。

 同量の鉄に使う魔力量の百倍はいります。驚きました。

 ゴーレム化すると、小さな粒だった金属片が液体状になり一つにまとまります。


 赤と、青の金属を別々では少なすぎて、使い物に成りませんので二つの金属を合流させました。

 紫色の金属になり、短刀ぐらいの量になりました。

 これに超強度をイメージしながら、さらに短刀をイメージします。

 ピキッピキッと壊れそうな音がします。


「うわあーー!! すごーーい!! 綺麗な短刀です!」


 子供達が、私が家に入るのを見て、心配してついて来たようです。


「丁度よかったわ。この短刀で、鉄人と戦ってみてほしいの」


 私は短刀から魔力を抜くと、イサミちゃんに手渡しました。

 使った魔力量で、この金属が鉄より上位の金属のように感じます。


「はい」


 イサミちゃんが短刀を持って、返事をしてから外に出ました。

 外に出ると一体の鉄人を呼んで、イサミちゃんと対面させました。

 イサミちゃんが私を見ます。

 私は真剣な顔をしてうなずきました。

 どうなるのでしょうか?


「せーーい」


 可愛い掛け声です。

 イサミちゃんが短刀を構え、鉄人に向かって走ります。


 キンッ、高く短い音が聞こえました。


 イサミちゃんと鉄人が動きを止めてじっとしています。

 ……何事もおきません。


「……!?」


 いいえ、時間をおいて鉄人の胸が、斜めに切られ少しずつズレていきます。

 そして鉄人は、五体がバラバラになり崩れ落ちました。

 鉄人は木人の数百倍の魔力を必要とします。

 ゴーレムを倒されると、私にダメージが有りはしないかと、心配していましたが大丈夫そうです。

 私とゴーレムはダメージという点では切り離されているようです


「すごーーーい!!!!」


 皆が喜びます。


「レイカ姉!! これ!?」


 鉄人の崩れ落ちた下に、赤い宝石の様な物が落ちています。

 どうやら、これは、モンスターを倒したときに出てくる御褒美の宝石じゃないでしょうか。

 私の親指の爪くらいの大きさで、キラキラ赤く光りとても美しい宝石です。


 でもレベルは上がらなかったようです。

 まあ、一体では上がらないだけでしょう。

 次々倒せば上がるはずです。


「じゃあ、次はチマちゃん。やってみて」


「やーー!!」


 はーーっ、チマちゃんも可愛い。

 でも、攻撃はイサミちゃんと同じ位の威力があったようです。

 やはり、宝石も出ます。

 チマちゃんは、うれしそうに宝石を拾って、天にかざしてキラキラ光るその様を、うれしそうに見ています。

 この後、シノブちゃん、ヒジリちゃんが続き、その後イサミちゃん、チマちゃんが続き、何度も交替しながら周回します。


 何度も繰り返し倒したら、とうとうこの時が来ました。

 次々子供達のレベルが上がったのです。

 いいなあ。私も小バエを沢山つぶしましたが、自分で出したゴーレムではどれだけ倒してもレベルアップはしないようです。

 この先、ゴーレム魔法が使える人に会ったら、こっそりレベルアップしたいと思います。


 これは、忙しくなりそうです。

 だって全員分の短刀を作らないといけませんからね。

 出来れば、最終的には全員の刀を作りたいですよね。

 川で自然に取れるのを待つのではなく、山を崩してでも採取しないといけませんね。


 皆が楽しそうに、戦っていますので、私だけで村に流れる川に向いました。

 川は山の横を流れていますので、山を崩せば岩を川に落とす事が出来そうです。

 山に向って、ゴーレム魔法を使います。

 ここは魔力消費を惜しんではいられません。


 巨大な岩石ゴーレムを山の岩肌から切り出します。

 ふふふ、日本の昔話のダイダラボッチのようです。

 さすがに大きなゴーレムなので魔力が大量に要ります。


 ――おかしい……


 このゴーレムに魔力量が大量に要ると思っていましたが、よく考えるとあの紫の短刀に必要だった魔力と同じ位です。

 あの金属は、どれだけ大量に魔力が要るというのでしょうか。

 効率が悪すぎます。


 いいえ、もしかすると、あの金属で出来たゴーレムならば、とてつもなく巨大な魔力を込めたゴーレムが出来ると言う事ではないでしょうか。

 ゴーレムの力や素早さは、私が込める魔力量によって決まるようです。

 それは、木人ゴーレムと鉄人ゴーレムの違いで既にわかっています。


 同じ大きさの木人と鉄人には力の差が数百倍もあるのです。

 これは材質の違いと大きさで、魔力の上限が決まっているからできる違いで、木に鉄ほどの魔力を入れられないからなのです。


 ――そうか!!


 木人ゴーレムから、なぜ宝石が出ていなかったのだろうかと思っていましたが、きっと出ていたのです。

 極小さい砂粒のような宝石が。

 それに気が付かなかっただけなのでしょう。


 ――あっ!!


 そうだ。森の動物や川の魚、畑の作物が巨大化したのは、この極小さな宝石が雨などで流れ出し、何らかの影響を与えたのでは無いでしょうか。

 なんだか、そう考えればつじつまが合いそうです。


「わあぁーー!!!!」

「な、なんですかーー!!!! これはー!!!!」

「すごい!! 本当にレイカ姉はすごいです!!」


 子供達が、私が川に向うのを見つけて心配でついて来たようです。

 私のつくったダイダラボッチを見上げて、歓声をあげています。

 私はこのダイダラボッチをよつんばいにして、少し体をねじらせ無理な体勢にします。

 そして、魔力を抜きました。

 ガラガラ、おおきな音を出して、川に崩れ落ちます。

 魔力を抜けば壊れても、宝石は出来ないようです。

 魔力が入っているゴーレムを、倒した時しかでないのでしょう。


「みんな、丁度良かった。この岩を小さく砕いて下さい」


「はーーい!」


 いい返事です。


「えぇぇーーーーっ!!!!」


 私は、その光景を見て驚きのあまり声が出ました。

 目玉も飛び出していたかもしれません。

 それほど驚いたのです。

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