第26話 プール日和!
「プールだって聞いてたのに……掃除なんて聞いてないよーーー!!!」
早乙女さんの叫びが周囲に響き渡る
私も、ブラシを置いて軽くため息をついた
今日は二先生に放課後プールに来い、水着も忘れずに
と言われたので、少し楽しみにして来てみたらこの始末だ
隣にいる九十九さんもブツブツ何か言っているかと思ったら
「だー!もう!」とブラシを投げる
「やってられっか!」
「おーおー待て待て、ただでさえ成績悪いんだから帰るの禁止だぞ〜」
水着姿で出てきた先生に宥められて
九十九さんは強めな舌打ちをして掃除に戻る
「先生……なんであなたまで水着に」
「ん〜?意外といけるだろ?」
「そうじゃない……というか、私は成績いいはずなんですけど」
「どうせ暇だろ〜?ついでだよ、ついで」
この人1回殴っても許されるんじゃないかな
先生も数学担当なのにこんなの押し付けられて可愛そうだけど……
嫌々ながら頑張って掃除をしていると
「無口ちゃん無口ちゃん!」と呼びかけられ振り返ると
「見てみて、カエル〜!」と目の前にカエルの顔がドアップで見える
「何してんの……」
「あれ?驚くと思ったのに」
「というか、早乙女さん虫とかこういうの苦手だと思ってた」
「まさか!夏は虫取り行くぐらい好きだよ!」
「九十九さんにも見せてみれば?」
私の提案にいつも以上に輝いた笑顔で頷くと
「一色ちゃ〜〜ん!」と走る
見ててすっごく危なっかしいけど
流石の体幹能力でころばない
「あぁ?んだよ」
「カエル〜!」
「うわぁ!!こっち来んな!」
予想通りの反応で嬉しいのか
早乙女さんは九十九さんを追いかけ回す
そのぐらいに……と言いかけて
カエルが九十九さんの服の中に入ったのが見えた
「ひゃあ〜!気持ち悪い!愛華ちゃん取って取って!!!」
「ちょ、落ち着いて九十九さん」
「おーお前ら〜あんまサボんなよ〜」
結局この後先生が無理やりカエルを取り
九十九さんからゲンコツが早乙女さんに飛んだ
そしてようやく私達はプール掃除が終わって水を貯めだした
「疲れたね〜〜〜〜」
「くっそ……誰のせいだと思ってんだよ……」
「んもう、そんな怒んないでよ一色ちゃん〜」
「おつかれぃ3人」
いい汗かいた……と私もくたくたになってると
「おぉ、もう済んだのか」と麗奈先輩と忍先輩が来た
「あー!先輩遅いですよ〜!」
「すまない、買い出しに時間かかってな」
「ほら、皆にアイス買ってきたよ」
「やったー!」「マジかよ!」
2人がアイスに食いついてる間
麗奈先輩が先生におつりとレシートを渡しているのが見える
これ先生の奢りなのか…
と思ってると、忍先輩が私にアイスを手渡ししてくれる
「大変だったでしょ?ごめんね手伝えなくて」
「いえ、大丈夫です」
「先生がね、2人でやらせたことにしないと成績上がんないから、お前らは買い出しとか言って誤魔化せって言われてさ」
かなり気が効いた話に
私は思わず感銘を受ける
だらしないけど、やっぱり生徒のことになると優しいみたいだ
……私は巻き添えをくらってるだけだけど
「お前ら〜水溜まったから入っていいぞ〜」
先生の言葉に振り向くと
いつの間にかプールの水が満タンになった
え、入っていいって、本当に入れるの?
と戸惑ってると「やったー!」と開口一番に早乙女さんが飛び込む
その水しぶきが少し麗奈先輩にかかる
「うわ、早乙女さん、あまりはしゃがないでくれ」
「先輩も入りましょーよ!」
「え?私はまだ制服「ほらほら!早く!」ひゃあぁぁ〜!!」
麗奈先輩も早乙女さんに引っ張られて
落ちるようにプールの中に入る
その後に九十九さんも無言でダイブする
「あれ、忍先輩はいいんですか?」
「え?う、うん!水着忘れちゃってね、あはは」
「制服のまま入ってる人いるし、気にしなくていいと思いますけど」
「あ、そ、そうなんだけど……えっと…」
「水着持ってきてるだろ〜〜?カナヅチなのバレるのそんな嫌か?」
「先生!!!バレたくなかったのにぃ…」
忍先輩がカナヅチ?なんだか意外だ
前のバスケを見た時、かなり運動神経良く見えたのにな
「私が教えてみましょうか?」
「うーん、麗奈に教わっても無理だったし、いけるかなぁ?」
「なんとか手を掴んでバタ足させればいずれは出来ると思いますけど……」
そこまで言ったら忍先輩は何故か笑ってしまう
「どうしたんですか?」
「ご、ごめん、想像しちゃったら麗奈が嫉妬してる顔が浮かんじゃって、やめとくよ。気使ってくれてありがとう」
なんで麗奈先輩が嫉妬するのかは分からなかったけど
何に嫉妬してるのか聞いても「なんだろうねぇ」としか返ってこず
結局その日は早乙女さんがはしゃぎにはしゃいで
私はろくにプールに浸からないまま
帰宅のチャイムが鳴ったのだった
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