第23話 閉じられた記憶
ゴールデンウィークのお泊まり会が終わって
私は最近常連になったカフェに放課後足を運んだ
ここのアイスラテとホットケーキは格別なんだ
「いらっしゃいませ〜」
店員の声がしてパッと見ると
そこには、九十九さんの姿があった
ツインテールにしてた金髪を団子にまとめて
かなり可愛いフリフリな服を身にまとっている
「げっ!!!!!!?」
「つ、九十九さん…?バイト先だったの…?」
「あ、いや!?ひ、人違いじゃないっすかねぇ〜」
「……麗奈先輩呼ぼうかな」
「それだけは勘弁してくれ!……あっ」
やっぱり……という顔をしてると
「悪かったな……」とそっぽを向く九十九さん
バイト先…というか、うちの学校はバイト禁止なはずだ
ここは学校とはかなり遠いから、バレる心配はないけど……
私が席について考え事をしてると九十九さんが真正面に座る
私の頼んだアイスラテとホットケーキも持ってきてくれた
「なあ、これ奢るからよ、内緒にしててくれねぇか?」
「別に奢られなくても内緒にするよ。大丈夫」
「ほんとか?悪いな…」
「もしあれだったら、バイトしてる理由聞いてもいい?」
「あー……金が足りねえんだよ。色々な」
金が足りない……私は改めて九十九さんをまじまじと見る
メイクもネイルもしてないし、店の制服も可愛いから
まるで別人のようにも思える
化粧品とかを買うお金が無いのかな……
なら尚更奢らなくていいのに
「まあ内緒にしてくれるならいいや、うちそろそろ戻るな」
そう言って九十九さんは仕事に戻った
随分手馴れてる、私はここの常連だけど
今回初めて見たってことは
もしかして他にもバイトしてるとか……?
敬語で接待してる九十九さんもなんだか新鮮だ
「……お前さ、ウチ見すぎ」
通りかかった時に、私に言ってきて
咄嗟に「あ、ごめん」と謝る
ガン見してたのバレちゃった
なんか恥ずかしい……
「化粧してないんだからあんま見られると困るんだよ」
「化粧してない方も変わらないくらい可愛いと思うけど」
「はあ!?お、おまっ、またそういうことを…!」
急に怒るのやめて欲しい、心臓に悪い
九十九さんは顔を赤らめながら
「あと1時間だから」とだけ言って仕事に戻る
バイトが終わる時間のことだろうか?
帰ろうかとも思ったけど、課題でもやって待つことにした
1時間後、九十九さんと店を出て
少しだけ沈黙して、それから
「ちょっとだけ家来いよ。お前になら理由教えてやる」
と言われ、ついていくことにした
別にいいのに、とは言ったけど「いいんだよ」とだけ答えた
九十九さん家に着くと、母らしき人が出迎えてくれた
「あらぁ〜お友達〜〜〜?」
「ちょっ、ママ、安静にしてって言ったじゃん!」
かなり元気そうではあるが、松葉杖をついているのを見る限り
足に怪我をしているようだ
…………ていうかママ……???
「悪いな、見ての通り、足骨折しててよ。パート行けなくて金がないんだ」
「一色〜?カレーにしましょうか〜?」
「だから安静にしてって言ってるじゃん!!!ウチがやるから!」
な、なんか本当に元気なお母さんだ
少しだけ安心した
「だから本当はお泊まり会行きたくなかったんだけどよ。ママが行けってうるさくてさ」
「そうだったんだ……まあ元気そうだから良かったよ。困ったことあったらなんでも言ってよ」
「……悪いな」
「あら?もしかしてあなた……昔よく遊びに来てた愛華ちゃんじゃない?」
「え、覚えてらっしゃるんですか?」
「それはそうよ〜!昔っから一色がお嫁さんにするっていってたもの〜!」
「ママ!!!!!!!」
「おほほほごめんなさいね〜お邪魔よね〜」
「……やっぱ連れてこなきゃ良かった」
「う、うん、心中お察しします……」
九十九家に来てもそんな記憶が思い出せない辺
私の記憶力どうなってるんだ……と問い詰めたい
ちらっと見た棚に、トロフィーが飾ってあって
その横に、綺麗な絵が飾られてあった
……あれ?あの絵……
「ん?あぁあれか、去年くらいに賞とった絵だよ」
「あれ……見たことある……」
でもなんでか思い出せない……なんでだろう
というか、絵上手いな…
「絵とか描くんだね」と言うと
「んまぁ趣味でなぁ」とだけ返ってくる
「今度この場所連れてってやるよ。思い出の地だし、行ったら思い出すって」
「……うん、そうする」
今日は九十九さんの意外な一面見れちゃったな
……子供の頃のことか
思い出せるといいけど
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます