第12話 過保護

あの灰色の髪、間違いない、お姉ちゃんだ

な、何してるのあんな所で

隣の人誰……?また女増えたの……??


「どしたん雪乃、そんな殺意剥き出しにして」


「え?あ、ううん。なんでもない」


お姉ちゃんが付いてきてる、なんて言えるわけない

雪乃が心配だからって尾行しなくても……


「よしゃ、怪我の処置終わり」


「お手を煩わせて申し訳ありません……今日のために貯めたお金を全て費やすのでどうか……」


「そこまでせんでええから、頼むから財布を出さんでくれ」


「では何を……」

「普通に友達として今日1日遊んでくれたらそれでええので」

「わ、分かりました、精進します……!」


「そういや、何も予定聞いてないけどこれからどうするん?」


「あ、えとね、女子高校生は、ぼうりんぐ?とかが1番するんだって」


「それどっちかというと男子高校生な気がするけど」


「え、そうなの……?」


「そもそもボウリングをご存知ないのでは?」


「確かに、雪乃病弱だからした事ないかもなぁ、行ってみるか」




【愛華視点】


雪乃がボウリング……!!?

だ、大丈夫かな……倒れたりしないかな……?


「なぁ、もうやめとこうぜ、あれバレてるって」


「雪乃の初ボウリングをみたい……」


「あんたシスコンすぎるだろ」


「今まで雪乃はずっとベットの中で、何も出来なかったんだよ、そうなるに決まってるじゃん」


「……まあ。仕方ねえか」


「待って、雪乃達こっち来る」


私は咄嗟に九十九さんの手を強引に引いて路地裏に隠れる

壁に隠れるようにして九十九さんの口を手で塞いで息を潜め……

よし、通り過ぎた


「ごめん九十九さん……」


九十九さんは顔真っ赤にしてそっぽを向く

やばい、軽率に触れすぎて怒られるか

と思ったけど「さ、さっさと追うぞ」とだけ言って先に行ってしまう

これは後でアイスでも奢らないとな……


(なんなんだよ!なんなんだよ!!!あいつ、かっこよくなりすぎなんだよ……!)


【雪乃視点】


やっとぼうりんぐ場に着いた

重めのボールを投げて、ピンを倒す遊びらしい

確かテレビで見たことある…かな?


「あたいはこのボールで行くけど、雪乃はかなり軽いやつのほうがええんやない?」

「お子様用ではありますが、こんなものもありますよ」

「それは流石に小さすぎるんちゃう?」


2人が親切に私のボールを選んでくれて

私はボールを見よう見まねで構えてみる

チラッと遠くの所を見ると

お姉ちゃん達が覗き見してるのが見える

お姉ちゃん、見ててね!


てい!と投げたボールは弱々しく転がっていき

先頭のピンにコツンと当たってドミノのように3本だけ倒れる

うぅ……全然無理だったし…疲れた


「逆に才能あるんやないこれ」


「はい、力さえあればストライクも夢じゃないと思います」


「慰めありがとう、疲れた」


「もっかい投げれるけど、休む?」


「……うん」「おけおけ」


凪ちゃんが気を利かせてずっと私のして欲しい行動してくれて本当に助かっている

さすが医者の娘……

ちらっとお姉ちゃんを見ると

また泣きそうな顔で小さい拍手をしていた

えへへ、喜んでくれたみたい


「雪乃さんはあんまり投げれてませんが、楽しく出来ているのでしょうか」


「うん、2人とだから、楽しい!」


雪乃が嬉しくてつい笑顔でそう言うと

2人は目を丸くする


「いえ、滅相もありません。私も初めて友達との遊び楽しいですよ。」


「なんやこの子ら、あたいを尊死させる気か……?」


「ね、他にもいっぱいあそぼ」


「よしゃ、今度はあたいのいきたいとこ行こか!」


【愛華視点】


「……帰ろうか」


「え、もう?いいのか?」


「うん、あの子達なら大丈夫かな」


「そ、そう……」


「付き合ってくれた代わりに、なにか奢ろうか?」


「そ、それならよ!ウチらもどっか寄らね?」


「……まあ、代わりだからね」

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