のほほん異世界暮らし
みなと劉
はじまりは穏やかに
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
「ふぅ…とりあえず、どこにいるのか確かめようか」
その地図には、穏やかな村の名前や平和そうな町が描かれていて、戦いや魔物の危険性は感じられなかった。おまけに、近くには「花咲き村」という聞くだけで和むような村がある。目指す場所はそこに決まった。
村に向かう途中、道端には色とりどりの花が咲いている。どうやら、この世界では花が道しるべのような役割を果たしているらしい。なんとも平和で美しい世界だ。
村に到着すると、村人たちは皆親しげに挨拶をしてくれる。特に目を引いたのは、地元の酒場で働く女性、ミナだ。彼女はこの村の案内役らしく、私の顔を見るなりにこやかに近寄ってきた。
「いらっしゃいませ、新しいお客さん?それとも…この村に定住するつもり?」
「まだわからないけど、しばらく滞在してみたいな。何か面白いものが見つかるかもしれないし」
「そうね、この村は刺激は少ないけど、のんびりするにはもってこいよ。もし手伝いが必要なら声かけてね」
こうして私は、花咲き村でののんびりした生活を始めることになった。ここでは、時間がゆっくりと流れているように感じる。何もせずに日が暮れるまで木陰で昼寝するのも、花畑で蝶を追いかけるのも、どれもが贅沢な楽しみに思えてきた。
この世界では特別な能力もなく、争う必要もない。ただ、穏やかに、自然の中で生きていく。それがこの異世界での生活の魅力なのだろう。
今日も一日、村の人々と語り合い、ゆっくりと過ごした。
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