第2話 近代兵器と防御魔法

真夜中。時間は3時を少し回った、だけだと言うのに訪ね人とはな。

どうせロクな要件じゃないだろうよ。

良くても暗黒魔族が近代兵器のユーザー承認を無効にしてくれとかの厄介レベルが下がるだけだ。


*暗黒魔族・・・一年の7割が闇に包まれた彼らの母星でも決して日の当たらない暗黒世界に住む魔族のこと。勿論、耐光性は持たず人類との融合もしていない純魔族。


さっさと終わらせようと、ドアを開ける。寝たふりでいいだろうに、なぜドアを開けるかって?

決まっている。ドアを開けなければ余計、厄介な事になるからだがドアを開けると最上級の厄介事が立っていた。


対惑星制圧局長 シド・ゼビ・ルーハイル。


義経「悪いが、夜が明けてから出直してくれ。そこで待っていてもいいが近所に迷惑掛けるなよ。」


真夜中なのに満面の笑みを浮かべて立っていたジドに悪態をついてドアを閉めると、すぐに左耳の端末がコールし、網膜に相手が表示される。もちろん相手はシドだ。

しかも特権回線を使っているって事は・・・国家がらみだな。

端末に意思表示。通話許可つなげ。直ぐにジドが話し出す。


「考えなおしてもらえると嬉しんだがな義経。

 少しだけドアを開けて外を見てくれないか?そうすれば気分も変わるだろう。

 アランも一緒だ。手荒な事はしたくない。」

あきらかな脅しだな。アランまで連れくるなんて何事だ?

と思いながら仕方なくドアを開けると

さっきとは違った光景に外は変わっていた。


ギミックソルジャー(体高3m重量600㎏の自爆装置付き人型無人決戦兵器)がざっと100体。その後ろに市街地戦闘服に身を包んだ戦士が同数。ありゃあ最低AA(ダブルA)クラスだな。

ご丁寧に小型対地戦用低速レールガンも、1、2・・4台持って来たのか。

全部光学迷彩でかくしてやがった。


義経「俺も随分と警戒されるようになったな。」

シド「初めに中に入れてくれれば披露することも無かったが、準備してよかったよ。」


呆れたよ。わざわざ威嚇の為だけに此れだけ揃えるとはなあ。浮かない顔で父親の後ろに控えているアランも戦闘服か・・・コイツはSASクラスだったかな。

                     *****

ダブルA、SASなどは戦闘能力を示す。クラスE~Aまでの5段階にAクラスのスッペクを超えたS級があり、始めの文字は戦闘能力、次に魔力。ついで使途の能力値を示している。普通はCCやAEなどのダブルスペックだが、極まれに使途を従える事ができるオバースペック者がいる。

                     ******

義経「フン!アランを連れて来たのはさしずめヘイト対策だな。しかし本気で戦闘

   を始めるつもりか?」


シド「アランは交渉役だが、必要と判断された場合、殺し合いに参加する事になる。

   この戦力で私達は勝てない事も承知の上での殺し合いになるがな。

   ここは、寒いので中に入れてくれると助かるのだがな。」

用件を聞き入れなければ、ヤルダケやって死んでやると言ってるのか。


義経「中に入れ。解っているだろうが、お前ら2人だけだぞ。」


シドに続いて浮かない顔のアランが入ってきた。

うぎゃ~あ!。警告を無視して入ろうとしたアホが、ヘイトの防御魔法に引っ掛かりやがった。2人だけと言っただろうが・・・。シドもアランも呆れ、手だけで帰れと命じている。


義経「言っておくが防御陣が作動したから、次は結界・・」ドン!爆発音が響く。


アホが侵入しようとしたな、戦士から兵士に格下げだな。

アホな兵士を持ったシドが少しだけ気の毒に思えた俺は、咳払いをしながら続けた。


義経「んんっん。今のように結界に触ったら爆発するから気負付けろよ。

   次に触ったら・・」

ぎゃあ~。撃て!撃て!ひるむな!20秒ほど銃声と爆発音が続いた後、急におとなしくなった。


シド「んんっん。遅いのかも知れないが、万が一次に触ったらどうなるのか?

   一応、説明してくれるか。」


義経「ヘイトの使途に・・・おもちゃにされる。」


シド「あのデカいネコにか?それともゾウか?」


義経「猫の方だ。ダブルAぐらいだったら、硬直魔法でも掛けられ

   半分地面に埋められサンドバック代わりにされているだろうよ。

   びよよ~んと跳ね返るから、ネコパンチの練習用だな。」


シド「え~と。アラン。すまないが騒ぎが大きくなる前に止めて来てくれ。

   あっ。お前はサンドバックにされるなよ。」

頷くだけでアランは出て行った。


シド「これだけの騒ぎなのにヘイトは起きてこないのか?」


義経「猫に遊ばれてる兵士ぐらいで起こすなよ。機嫌が悪くなる。

   そんな事より、こんな夜中に低速レールガン持って何の用だよ。」


シド「低速・・・ああ、あれか。あれは低速じゃない。

   対惑星制圧用の亜光速レールガンだよ。」


義経「マジか?」


シド「マジ!」


義経「お前・・・アホだろ!この辺一帯にある物は全部蒸発するぞ。」


惑星制圧用レールガンなんか地上でぶっ放した日には衝撃波だけでも、近所に核弾頭3発撃ち込むようなもんだぞ。何を考えている。要求を飲まなければ、自分の命どころか、ご近所まで蒸発させる覚悟か。訳がわからない。殺し合いどころか言う事を聴いてくれなければ周りを巻き添えにして死ぬつもりだ。もう、完全な駄々っ子だな。


義経「何を考えている?」

シド「なに、大した事じゃない。

   君とヘイト君が我々の要求を呑んでくれなければ

  人類は死滅するんだから今、死んでもいいじゃないか。」


物事に決して動じないシド。

隣で爆弾がはじけても弾丸がかすめようが、にこやかにお茶を飲んでいるようなヤツ。それが今、亜光速レールガン4台を持って脅しに来ている。

違うな自己崩壊だな。自己崩壊を起こしたシドが語るにはこうだ。


粗悪宇宙コピー機が創り出した無かったはずの7つの地球。

この半径4キロにも及ぶ巨大建設物並みのタイムマシーンを創ったつもりだった

第一世代は何の疑いも無く作動させたが、欠陥装置だと気付く前にマシーンから

色んなものが、あふれ出した為に、あちら側に行くことが出来ず詳細は解らんが

その内一つの地球は、ジェラ期に恐竜が絶滅しなかったらく、恐竜がそのまま進化を続け、2足歩行するようになり食物連鎖のトップに立っている。

丈夫な皮膚を持ち生命力も強い彼らは、現在でも原始人程度の知能しか持ち合わせる事がなく、人間では到底及ばない戦闘能力を持っていいた。


同種族でさえ日常的に殺し合う程の危険種だった彼らは次々に

人を襲い食らい支配範囲を大きくしていった。


彼らの進行を止める為に粗悪タイムマシーン外苑から半径2キロの円状に高さ30メートルの防護壁が作られた。防護壁の内側では小規模ながら恐竜種を追い返す為の戦闘が現在でも続いているが最近になり、恐竜種は一種類ではない事が確認された。


確認されている恐竜種を纏めて薙ぎ払う身長5メートルの大型恐竜種。

30メートルの壁を一気に飛び越え地上に重大な被害をもたらした翼竜種ドラゴン。

依存戦力を総動員して駆除に乗り出したが無駄だった。ドラゴンは、その勢力圏を伸ばし始めている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る