使命感がゼロ


目が覚めると、亮は異世界の草原の中に立っていた。目の前には広がる壮大な景色と、見知らぬ生き物たち。夢か現実かもわからぬまま、亮は自分が異世界に転生していることに気づく。


「俺が…この世界を救うのか?」


亮はそう口にしながらも、心の中では釈然としない気持ちが渦巻いていた。目の前の壮大な風景や、異世界の雰囲気に圧倒されている一方で、自分が何か大きな使命を負う存在だなんて、どうにもピンとこない。日々をのんびり過ごしていた自分に、急に「世界を救う」なんていう責任が降りかかることへの違和感があった。


「…いや、俺ってそんなに使命感がある方じゃないし、どちらかというと面倒ごとは避けてきたタイプだよな…」


亮は苦笑いを浮かべる。確かに異世界の危機とか、壮大な冒険とかには少し憧れていた。けれど実際にその役割を果たせと言われると、どこか他人事のように感じてしまう自分がいることも否定できなかった。しかも、この世界の状況もまだよく分かっていない。自分が一体どこまで力になれるのか、想像がつかないのだ。


「…まあ、とりあえず流れに任せてみるか」


亮は深く考え込むことをやめ、目の前の道を歩き始める。自分がこの異世界で何をすべきかは、きっとこれから見つかるはずだ。それに、使命感なんてものは後からついてくるものだろうと、亮はどこか気楽に構えていた。

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