初めまして
白石優稀。
成績優秀、容姿端麗、才色兼備、文武両道。今浮かんだ白石さんの印象を表す単語だけでもこれだけの肯定的な四字熟語浮かんでくる、そしてこれらの単語は白石さんのために存在している。いや、今あげていない肯定的な単語もすべて彼女を称えるために生まれてきた。
すなわち白石優稀は完ぺき少女である。
ボクは教室の窓際の席で机に腰掛け友達と楽しそうに談笑する白石さんを遠目から眺めていた。ボクに似た他の連中も同じように見惚れていた。
今日も白石さんの黒髪は綺麗だな。
会話は聞こえないけど、どんな事話してるんだろ?
やっぱり生け花とか、茶道とか、いや、あえて英会話?スポーツの線もあるな……ヨガとか、ゴルフあたりの、趣味の話をしているはず。
きっとそう。
白石さんの社長令嬢だっていうもんな。
噂だけだけど……。
五月二十日。ゴールデンウィークが過ぎなんとか五月病にかからずに今日も通学路を自転車で走っている。
まぁボクが五月病にならなかったり、今も通学できているのはボクの頑張りじゃなくて全部白石さんがクラスメイトだったから。全部白石さんのおかげ。
どうです?皆さん?白石教に入ってみませんか?
素晴らしい教えを授かれますよ……?
「……」
ボクは一人で何やってんだ……。
「まだまだ温かくはならないか……」
今日はいつもより早く登校していた。
今日をどれだけ待ち望んでいたか……!
そう!ズバリ!今日から白石さんと一緒に週番をするのだ!のだ!のだ……!
だから早く学校へ来ることも全く苦ではなかった。
むしろ今日は睡眠不足気味。
今週に至るまで週番を交代してくれないかと何度か買収してきそうな気配がしたけど(妄想)、それを何とか死守して白石さんとの夢の週番ライフを送ることができる……。
おぉ、神よ……、白石さんと週番をやらせてくれてありがとう……。
いや、ボクの神は白石さんだから何なら神の意向という事で……。
あぁー、やめ、やめ!
朝っぱらから、何してんだ……。
朝練をしている野球部の大きい声を聞き流し五階にある教室へ最近重くなってきた体を持ち上げる。
「ダイエット……」
はぁ、憂鬱だ……。
いいや、今日から一週間は頑張るって決めたんだ……!
教室のドアを開けると誰もいなかった。
新鮮だ。
軽く箒と塵取りを使って教室のゴミを取り、黒板をきれいにする。
緊張したけどどうにか頑張って担任の先生から学級日誌を預かった。
学級日誌に今日の時間割とそれぞれの担当の先生の名前を書く。
後は放課後に書くことしかない状態にする。
「それにしても白石さん遅いな」
時刻は八時手前に差し掛かったが一向に誰かがくる気配がしない……。
しかし噂をしたからか、
教室の前の扉が開く……。
来たっ!……と思ったがサッカー部の陽キャだった。
なんで白石さんじゃないんだ!?
「あれ?新保なんでこの時間に?早くね?」
なんでこの人ボクの名前を知ってるんだ?陽キャのくせに……。
「い、一応週番だから……」
「え?」
聞こえなかったのかな?
「週番だから」
今度は大きい声出せたぞ。
サッカー部の陽キャはいきなり吹き出すように笑った……。
コ、コイツ……。
「新保って……そういうキャラだっけ?」
笑いながら言った。
「え?え?」
「いやぁ。マジおもれー。別に週番でも早く来る必要ねぇよ?放課後は少し残らねーといけねーけど」
ファッ!?
「で、でも。マンガでは早く着て一緒に……」
「あー白石さん目当て?」
「い、いや。週番として当たり前の事を……」
だんだん声小さくなちゃった……。
「おっけ、おっけ。そういう事にしとくよ。でも、おもれー、真面目かよ……!」
また噴出したように笑う。確かに、担任にも「早いな新保。真面目だな」って言われたけどあれって別に褒められていたわけじゃないのか……。
確かに誰にも早く来いともいわれてなかったしな……。
ボクって勘違い激しいな……。
直したい……。
「ま、応援するよ」
「何を?、ですか……?」
「白石さんとの事」
「別に、そういうのじゃないし、木曜から中間あるから、勉強するために早く来ただけ、週番だったしちょうどいいかなって」
早口になってしまった……。
「そういう事にしといてやるよ」
なれなれしい……。
「勉強、俺もしねーとやべーなー。顧問に怒られちまうよ~、ほら世界史の担当の先生、サッカー部の顧問じゃん?」
「知らない」
「興味なさそー」
実際興味ないから……。
ボクは恥ずかしさを隠すように週末の中間テストの勉強を始めた。それを見たサッカー部の陽キャは話しかけてこなかった。
徐々にクラスの奴らが登校してきた、八時二十分に白石さんも登校してきた。
今日も白石さんはかわいい!
放課後になり、ボクは教室に残り日誌を書いて、掃除当番が見落としているゴミを拾っていた。
すると突然勢いよく教室の扉が開いた。
「あった!」
白石さんだ!
え、ちょ、どうしたんだろ?
綺麗だな……、かわいいな……。
白石さんは教卓の近くに行き僕が置いておいた日誌を手に取り中身を見る。
「あれ?中身書いてるな……?」
不思議そうに日誌を眺める白石さん。ボクが書いたからね。気にしなくていいんだ。
「ねぇ
誰に話しかけてるんだろ?
「なんで無視するの?君だよ!」
ボクは周りを見る、教室にはすでにボクと白石さん以外いなかった。
君とはボクの事だった。
ボクは人差し指で自分を指す。
「ボクですか?」
「そう!無視ってひどくない?」
「すみませんボクに話しかけているとは思わなくて」
「そっか。なら仕方ないか。でさ、これ書いたの誰か知ってる?」
日誌を指さし誰が書いたか聞いてくる。もちろんボクだ。週番なんだから。
「ボクですけど?」
「手伝ってくれたの!?優しね!ありがとう」
「いえ、当たり前の事をやったので……」
「いやいや、わざわざごめんね……、えーっと、何君だっけ?」
……ま、じ、か。
いや、うん。わかってはいたさ。
ボクの事なんか白石さんが眼中にないって。
でもさ、ちょっとぐらいさ、気にしちゃうよね。
だって、皆に優しい白石さんじゃん?
ボクみたいな下等生物でも少しくらい気にしてくれてるんじゃないかって?
でも、でも、あんまりだー!!
あ、でも意外としゃべってみるとフランクというか、もっとお嬢様系なんじゃないかって勝手にだけど思ってたから、ボクみたいな人間でも上ずったりしてしゃべらなかったな。いや、若干きもかったか?でもそんなのもういいよ、ボクは一生の思い出ができたんだから……。
………………………
…………
……
…
ボクの事覚えてもらえるように努力しよう……。
「あ、えっと、同じ週番の新保です……」
「あー、そうだよね。うんうん、知ってた、知ってた。ありがとね新保君……」
気まずそうにしないでくれー!!!!
でもそんなとこもかわいい白石さん。
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