刺殺公爵④

そんなこんなで1ヶ月経った


刺殺公爵に開けられた手足の穴も砕け散った顎もすっかり治った(ウーパールーパーの遺伝子に感謝だ)


店の方も見違えるくらいにキレイに発明品を陳列出来たあまりにも汚すぎてこっちの方が時間がかかった…隙間の時間が出来たら刺殺公爵殺しの作戦を練っているがこっちはさっぱりどうしたらいいもんか…


発明家のジイサン「お~い!マンダぁ!酒屋のバアサンに配達だぁ!」


マンダ「これまたデケェ発明品だな」


そこには人が入れそうなカプセル型の機械があった


発明家のジイサン「おう!全自動頭の先から爪先まですっぽりマッサージ機だ」


マンダ「これに入ったら全身の骨がボキボキに折れちまいそうだな…」


マッサージ機をどうにか台車に積み込んで配達に向向かうか、台車がミシミシギシギシと音を立てている俺の体力よりも台車の方が先に限界が来そうだなこりゃ…


汗だくになりながら台車を引いてると町の噴水広場で子供達がチャンバラごっこをしてる…俺もあんな感じでまともに刺殺公爵と戦える段階までこぎ着けられないもんか…いやまともじゃあ敵わないな


ちょっと一回情報整理してみるか刺殺公爵はとんでもなく強い、そして名前の通り相手を刺し殺す、身体が異様に細い、身長2mほど、嗜虐的な性格であっさり殺すのはあまりない、マリハジ村でも50人に対して30分も掛けて楽しみながら刺し殺していた、あんなに強ければものの数分で殺しきるはず俺の事だってわざと見逃すくらいだから、自分は死なない傷つかないって余裕綽々で舐めきってるんだろうな


たしか刺殺公爵は「成長が楽しみだ」とか「美味しくなりそう」とか言ってたはず…あれはきっと俺のヒューマナタイトの事だろうな、そもそも美味しくなるもんなのか?ヒューマナタイトってのは。


そんな風に頭の中で考えてたら台車の重さも忘れていつの間にか酒屋の前に来てた


マンダ「バアサ~ン!持ってきたぜ~!」


酒屋のバアサン「やっと来たかい、暖炉の前に置いといておくれよ」


一人じゃ運ぶもんじゃないな…このマッサージ機はデカ過ぎる…ジイサンめこんな重たいもん運ばせやがって…ボーナス要求してやる……


マンダ「ゼェゼェ…バアサン…運び終わったぜ…」


酒屋のバアサン「ほぉご苦労さんこれでも飲みな!」


マンダ「おいバアサン俺はまだ未成年だぞ」


酒屋のバアサン「それは間違って仕入れたジュースさ、酒屋にジュース置いてても売れやしないんだよ持っていってくれ」


マンダ「なんだじゃあありがたく貰っていくぜ!まいどありー」


あんまりにも疲れちまったな噴水広場でちょっとサボるか、ジュースもあるし30分くらい休もう


噴水広場ではさっきの子供達がまだチャンバラごっこをしている、赤い服の子供の枝が白い服の子供の頭にクリーンヒットした…あれは痛そうだ…白い服の子供の顔はみるみる泣き顔になって大声で泣き出した、慌てた赤い服の子供はあわあわしながら近づいていったその瞬間白い服の子供がピタッと泣き止んだと思ったら赤い服の子供の頭にスパーンと一撃不意打ちを食らわせた、なんと策士な子供なんだと感心したもんだ。


俺も不意打ちでいかないと刺殺公爵に傷すらつけられないだろうな、俺があの時の美味しそうな人類だって事を伝える前口上でも言わないと目が合った瞬間に死んじまうな、それにまともに戦っても駄目だ何か油断でもさせないと、美味しそうって言うのもちょっとジイサンに聞いてみるか、まだまだこの世界の事も公爵達の事ももっと知らないと。


さぁてそろそろ帰んないとジイサンにどやされそうだ、ちなみに俺はジイサンの店の2階に住み込んでいる、ジイサンの家は別の場所だから一緒に住んじゃいない、初めての一人暮らしだ!ちょっとワクワクしてる自分がいる、暇になる夜は1階にあるジイサンの発明品を弄って遊んでいるやっぱりこの店はロマンまみれだこの中に刺殺公爵を殺せるヒントも転がっているかもしれないしな!


マンダ「ジイサンただいま!」


発明家のジイサン「おうマンダ新しい発明品が出来たぞ!その名も細芯ガス式パイルバンカーじゃ!!これの特徴は芯である杭に返しが付いてるんじゃ!しかも2個もな!返しと逆向きの返しが付いていて細い杭を撃ち込むんじゃ相手に撃ち込んだら返しで抜けないし逆向きの返しで強いノックバックを起こして相手を壁に貼り付けられるんじゃ!口で伝えるのは難しいから早く見てみぃ」


      ΞΞΞΞΞΞ

―<―>――ΞΞΞΞΞΞ腕肘腕肩


発明家のジイサン「まぁこんな感じじゃ!」


マンダ「こうやって見てもあんまりわかんねぇな」


発明家のジイサン「しかも杭は細く作ってあるから何発も携行出来る!マガジンに10発も詰め込んだ、両腕に装備出来るから合わせて20発の杭をぶちこめるんじゃ!つまりスゲェって事じゃよ!」


マンダ「なんとなく分かったような分かんないような…取り敢えず相手を昆虫標本みたいに打ち付けて動けなくさせるみたいな感じって事は分かった」


発明家のジイサン「それだけ分かりゃ十分じゃ!これは小僧が刺殺公爵に穴だらけにされたので閃いた傑作じゃ!」


このジイサン…人が死にかけたエピソードで発明品を閃くとかマジかよ…結構イっちゃってるな…


マンダ「このほっそいパイルバンカーが対刺殺公爵兵器ってわけか?」


発明家のジイサン「いんや、こんなん身に付けたって杭を当てる前に刺殺公爵に穴だらけにされて死ぬだけじゃ」


マンダ「じゃあ何で作ったんだよ!あんなにテンション高く説明してきやがったのに」


発明家のジイサン「この発明品の肝は背中に背負うガスボンベを入れてる箱にあるんじゃよ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~

     かくかくしかじか

~~~~~~~~~~~~~~~~~




マンダ「へぇ!そりゃ良いな!俺にしか扱えない様な隠し球だ!けどそれをしたからって刺殺公爵は倒せそうに無いけどな」


発明家のジイサン「それは案外心配せんでも良いかも知れんぞ、刺殺公爵の身体は見たんじゃろ?あの異様に細い身体を、刺殺公爵はその細さを活かした速さで無傷で圧倒的に相手をいたぶってたはずじゃ」


マンダ「つまり打たれ弱いって?あの刺殺公爵がぁ?力もとんでもなく強いんだぜ?細くてもめちゃめちゃ硬いかも知れないぜ?」


発明家のジイサン「まぁそん時は死ぬだけじゃ」


マンダ「まぁ死ぬだけか……いや死にたくねぇけど、でも1ヶ月掛けてもろくな作戦が出なかったからなぁ…これが駄目って言っても別の案があるわけじゃないし、もし駄目だったらもっと美味しくなるから待てって言って命乞いでもしてみるさ、ところで刺殺公爵が言ってきた美味しそうってどういう意味だと思う?」


発明家のジイサン「それはヒューマナタイトの保有量の事じゃろ、強くて健康でエネルギッシュな人類ほど保有量が多くて公爵どもにはご馳走になるんじゃと」


マンダ「つまり死に際でも啖呵切った俺がエネルギッシュで美味しくなりそうだったから見逃したってことか、じゃあ今度刺殺公爵に殺されそうになっても威勢良く啖呵切り続けてみっかぁ」


これ以上手をこまねいても時間だけが過ぎていくだけだし復讐の熱意も熱いうちに刺殺公爵に挑みに行くかぁ…全部が上手くいきゃ殺せるかもしんねぇしな…


マンダ「じゃあいっちょこのパイルバンカー背負って刺殺公爵を刺し違えてでも殺してくるか!」


発明家のジイサン「ガッハッハッ刺殺公爵相手に刺し違えるなんて洒落の効いた覚悟じゃな!」

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