スポーツ一家
トンプソンの家は世界的にも有名なスポーツ一家だった。
父親はかつてMLBで野球殿堂入りを果たし、母親はバレーの金メダリスト、兄はラグビーワールドカップでMVP選手、妹は体操の世代別チャンピオンに輝いた。
かく言うトンプソンも先日のドラフトでMBA入りが確定したスター候補である。
そんなトンプソンの家に遊びに来たジョーはとても気まずい空気に押しつぶされそうだった。
今まさに目の前でトンプソンの両親と兄が家族会議を始めているからだ。
「俺の選択が1番に決まっているだろ」
「いいえ、あなたの考えは早計よ」
「そうだよ父さん、そんな簡単に決められる話じゃない」
両親が声を荒立てているのを横目にジョーはトンプソンに尋ねる。
「一体なんの話をしてるんだ?」
「結婚相手の話さ、うちはスポーツ一家だけど、それはより良い相手とスポーツ結婚をしているからなんだ」
「だから君のフィアンセも女子テニスのトップランカーなのか」
トンプソンとの会話をしていると、両親たちの会話はさらに白熱していた。
「だからスピードこそが1番重要だろ?」
「いいえ、スピードより長く走り続けられるスタミナが大切なのよ」
「いや、何よりも重要なのはここぞという時の瞬発力と機動力だよ」
今度はお互いが結婚相手に重視する能力を言い合っているようだ。
その様子を見てジョーはトンプソンに耳打ちした。
「どうやら君の妹は陸上選手と結婚させられるみたいだけど妹は混ざらなくてもいいのかい? 彼女の意見とかあるだろ?」
すると、トンプソンは呆れたように答えた。
「妹だって? いやいや、これは妹の会議じゃないよ」
「じゃあ一体誰の結婚相手の話なんだ?」
ジョーがそう聞くとトンプソンは窓の外を指さした。
「あいつだよ」
窓から見える庭ではトンプソン家が飼っている犬が元気に走り回っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます