第19話 リナ

  朝起きると、テントのベッドの上でルチアがこちらを見ていた。



「サトウ様、昨日のお風呂は今までの人生の中で最高のひと時でした。本当にありがとうございました。」


「また、連れて行ってやる。」


「ありがとうございます。楽しみにしておきます。」



 テントから出てレダから渡された朝食を食べてから、森の中を進んでいると黒い鬼が現れた。


 ラケーレがすぐに懐に潜り込み、正拳突きを放つと鬼の胸辺りに風穴が空いた。



「オーガでもこの程度か。」



 その後、オーガが次々と現れたがあまり大したことはない。

 俺とリナも遠隔で倒していった。



「ルチア、気をつけろ。強いのがいる。」


「はい、ありがとうございます。」



 俺の魔力網に、一際強い魔力反応が引っ掛かった。


 リナとラケーレも気付いたようだ。 



「あの黒くでかい奴がそうだな。」



 3mほどの体躯で、2本角の黒い鬼がそこにいた。


 黒い鬼は両手剣を持っていたが、体が大きすぎて片手剣のように見える。



「あいつがボスか。しょうがねぇから俺がやるか。」



 オスカルは長い間魔力を練り始めたが、隙だらけになり、ラケーレが仕方なく剣をナックルで受け止めた。

 これまで余裕だったラケーレだったが、鬼の進化種には手こずっているようだ。



「聖剣召喚!」



 地面に光る魔法陣が現れ、光り輝く剣が生えてきた。

 光る聖剣の柄を持ち、黒鬼に走っていった。



「遅いな……。」



 黒鬼はデカい図体に似合わず、素早い。

 ラケーレはそのスピードについていっているが、オスカルは明らかにスピード不足だ。



「なかなかやるじゃないか。それならこれでどうだ。」



 オスカルは再び時間をかけて魔力を練る。



「光装束!」



 オスカルに光る鎧が纏い、黒鬼の距離を縮める。

 先程よりは早くなったがまだ追いつけていない。



「おい!お前たちも手伝えよ!」


「俺がやろう。」



 俺は収納から魔法弓を取り出して、黒鬼の魔力に合わせて力を流し込む。当然オスカルのように時間をかけない。



「ラケーレ離れろ。」


「ちっ」



 弦を放つと黒鬼に真っ直ぐな光る軌跡を描いて矢が飛び、黒鬼の胴体を消し飛ばした。



「や、やるじゃねぇか。」



 オスカルはそう言うと負けを認めたくないのかそそくさと森に入っていった。

 残された黒鬼の残骸と両手剣を収納してオスカルに続く。



「サトウ様、すごいんですね。一発で倒しちゃうなんて、ひょっとして勇者様よりも……」


「そんなこと他の奴の前で言うんじゃないぞ。」


「はい、すみません。」


「これくらいで調子に乗るなよ。人間風情が。」



 その後、ラケーレが捨て台詞を吐いて、速足で距離を置いていった。



「ここから西にムールと言う街がありますのでここから向かいます。」



 キリっとした顔のリダはオスカルにお尻を撫でられながら先導する。


 その後もオーガを倒しながら来た道とは違った道を進む。

 ラケーレがやけになって片っ端から倒していくので俺の出番はない。


 夕方くらいに森を抜けることができ、煙が立ち上る町にたどり着いた。

 ムールの門をくぐり、中に入ると家屋のほとんどが工房で、その煙突から煙が出ているのがわかった。

 日が落ち、もう暗くなっているが、建物の明かりで街道沿いはうっすらと明るい。


 しばらく歩くと大き目の宿にたどり着いた。レダに鍵を一人ずつ渡される。



「明日は休息にして、明後日、朝から魔物討伐に出かけます。」



 レダはそういうとオスカルと部屋に入っていった。


 宿は2階が客室にになっていた。

 部屋に入り、着替えているとドアを誰かがノックした。

 

 ドアを開けると魔法使いのリナが部屋の前に立っていた。



「少し話がしたいの。」



 そう言うと、俺の部屋の中にズカズカと入ってきた。



「あなた、何者なの?人の形をしているけど魔族?」


「人間だが。」


「ありえないわ。魔法弓でもあれほどの威力を人間が出せるわけない。」



 リナは太ももまでスリットの入った黒の装束を指でなじっている。



「私と契約してほしいの。その魔力を私に分けて。」


「その見返りは何だ。」


「私の体。」



 リナはそう言うと恥ずかしがりながら黒い装束を脱ぎ始めた。


 なんだろうこの違和感。


 ベッドに座る俺の前に、何も纏っていないリナが、体を手で隠して立っている。

 試してみるか。


 俺は手に高濃度の魔力を貯めてリナを抱き寄せた。



「ああああ!」


 電気が流れたかのように体を痙攣させるリナ。



「こ……こんなこと……」


「おい、化けの皮が剥がれているぞ。」


「えっ!何で!」



 リナは自分の顔に手を当てる。

 リナは30歳程の顔立ちになっていて、耳が尖っている。エルフだ。


 エルフは年を取るのが遅いと言われていて、20歳ごろの容姿のまま長い年月を過ごすと言われている。

 それで30歳の見た目ということはかなり長い年月を生きているということだ



「驚いたわ。私の幻覚魔法を破る奴が居るなんて。」



 リナは体を隠すのをやめて堂々とその胸をタプンと揺らし、口角を上げている。

 こちらが本性か。


 背が低いのは元からのようで、身長は150cmほどだった。



「こんなおばさんじゃ嫌かしら。」


「報酬は体と言ったが、俺の奴隷となれ。そうしたらお前に毎日魔力を流してやる。奴隷になるのは1年間でいい。」


「それでいいわよ。ちゃんと毎日魔力頂戴よね。それじゃ、契約者に名前書いて。」



 しっかりと契約書を読み、名前を書く。

 この魔女侮れないからな。


 リナは契約書を持って魔力を流すと、俺とリナの体が光った。



「これで、契約はなされたわ。」



 契約魔法が使えるのは便利だな。


 帰ろうとするリナの手を掴み、裸の体を抱き寄せる。



「何よ……んっ……」



 唇から魔力を流しながら、長いキスをする。



「この魔力……頭がチカチカする……」



 目をトロンとさせるリナの全身を撫でながら魔力を流す。


 痙攣するリナをベッドに押し倒して上下に揺らした。


 何度もリナの体内に魔力を注入したので、途中で泡を吹いて気絶してしまった。


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