第38話 新たな文明の選択②


 リオトが【パックを購入する(連続10パック)】のボタンをタップすると、次々と引き当てたカードが表示される――。


 ピコンッ!


 画面が軽快な音を立てると同時に、次々とカードが表示された。

 リオトは食い入るようにそれらを見つめる。カードのリストが画面に現れるたびに、胸が高鳴るのを感じていた。


 ――――――――――


 焔の狩人 (自然・ノーマル・ユニット)×5

 雷の裁き (渾沌・レア・スペル)×2

 鉄の鎧砕き (鐵鋼・ノーマル・スペル)×4

 聖域の守護 (神聖・ノーマル・スペル)×3

 竜の咆哮 (古龍・レア・ユニット)×4

 天空の神弓士 (天空・レア・ユニット)×1

 悪魔の爪 (悪鬼・ノーマル・スペル)×6

 生命の復活 (汎用・レア・スペル)×2

 古代の英知 (蒼輝・ノーマル・スペル)×5

 機械の戦術師 (機械・ハイレア・ユニット)×2

 漆黒の炎 (深淵・レア・スペル)×3

 黄金の剣士 (帝国・ノーマル・ユニット)×6

 ★光の導師 ライラ (蒼輝・レジェンド・ユニット)×1

 古代の大樹 エルドラリオン (自然・レア・ユニット)×3

 闇の捕縛 (深淵・ノーマル・スペル)×4

 鋼の精霊 ゴルバーク (鐵鋼・ノーマル・ユニット)×5

 鉄壁の守護者 オルデ (鐵鋼・ハイレア・ユニット)×2

 星の魔導師 ラティア (蒼輝・レア・ユニット)×2

 血の刃 ヴァルディス (血冥・レア・ユニット)×1

 神の加護 (神聖・ノーマル・スペル)×3

 古龍の呪縛 (古龍・ハイレア・スペル)×3

 深淵の影 (深淵・レア・ユニット)×2

 機鋼の防壁 (機械・ハイレア・スペル)×1

 悪鬼の戦士 オークブリン (悪鬼・ノーマル・ユニット)×5

 光の壁 (蒼輝・レア・スペル)×2

 大地の息吹 (自然・ノーマル・スペル)×4

 ★創造の古龍 アルヴァリオン (古龍・レジェンド・ユニット)×1

 血の契約 (血冥・レア・スペル)×2

 天空の結界 (天空・レア・スペル)×2

 フォージの聖戦士 (鐵鋼・ノーマル・ユニット)×5


 ―――――――――――


 リオトの目はレジェンドユニットの2枚に釘付けになった。


「ライラとアルヴァリオン……!」

 思わず名前を口に出してしまうほどの衝撃だった。ライラは蒼輝文明の光の導師、そしてアルヴァリオンは古龍文明の創造の古龍――どちらも強力なカードで、彼の今後の戦略に大きな影響を与える存在だ。


 実は、蒼輝はリオトが次のデッキに選ぼうとしていた文明であり、古龍は、ドラゴンコインのことから、この世界を支配しているのがドラゴンである可能性を考えた場合、悩みどころである。


「レジェンドが2枚も……これは本当にラッキーだ……!」


 リオトは思わず興奮を抑えきれず、ベッドの上で体を軽く揺らした。EDD時代の記憶が鮮明に蘇り、これほどの幸運は滅多に訪れない。


 ――――――――――


 蒼輝の導師 ライラ

 文明: 蒼輝

 種類: ユニット(レジェンド)

 攻撃力: 5

 体力: 7

 説明: 古代の知識を極めたハイエルフの導師。召喚時、味方全体に「光の導き」を付与し、一定時間、体力+2のバフを与える。

 役割: 敵の攻撃を抑える防御型ユニット。光の力と知識を操り、戦場で味方に力を貸す賢者である。

 イラスト:白いローブをまとった美しいハイエルフの女性。金の刺繍が入ったフードを軽くかぶり、長い銀髪が背中まで流れている。青い目が知性と優しさを感じさせる。背景には、夜明けの光が差し込む天空の塔が遠くに見える。


 ――――――――――


 創造の古龍 アルヴァリオン

 文明: 古龍

 種類: ユニット(レジェンド)

 攻撃力: 8

 体力: 9

 説明: 大地を司る創造の古龍。召喚時、味方全体の「古龍文明」ユニットに体力+2のバフを付与する。

 役割: 味方全体を強化し、耐久力を持たせる支援型ユニット。

 イラスト:金と緑の鱗に覆われた巨大な古龍。大地の力を象徴するような重厚な体躯で、雄大な翼を広げて立つ。鋭い緑色の目で周囲を見渡し、背景には広がる山脈と森が描かれている。


 ――――――――――


 リオトはそれぞれのユニットの役割を素早く確認し、戦略を練り始めた。


 しかし、彼の喜びの余韻が冷めると同時に、現実的な悩みが再び浮上してきた。


「でも、今の戦力と森の異変を考えると、どの文明を選んでも簡単にはいかないか……」


 彼は画面の他のカードも一通り見直したが、どのカードも非常に魅力的だった。特に、新しい自然文明カードは、ガルディウスと組み合わせることで強力なコンボが期待できるかもしれない。一方で、渾沌や深淵文明の新しい攻撃スペルは、戦闘時において決定的な力となるだろう。


「うむむむむ……一つに決めるのが難しいな……」


 蒼輝文明を選べば、防御と支援を中心にした堅実な戦略が構築できる。アルヴァリオスを持つ古龍文明を選べば、圧倒的な攻撃力で敵を打ち破る力を得られる可能性がある。これで、支援型というのだから、古龍文明ジョークには苦笑である。


 どちらも魅力的だが、それぞれの選択にはリスクも伴う。


「選ばなきゃならない……いずれかを……」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ということで、皆に相談したいんだ」


 リオトは自分の執務室に膝を置き、顔の前で手を組んだ。いつものメンバーが集まっている。正面にはベルノス、セリフィアム、そしてウィリアム。さらに、窓の外からは巨大なネクロドレイクが一つ目だけを覗かせている。皆、リオトの召集を受けて待っていた。


 ――文明デッキどうするか会議・第2回の開催である。


 執務机に座るリオトを中心に、ベルノスとセリフィアムは長机の両側に腰かけ、ウィリアムは控えめに壁際に立っている。ネクロドレイクは、館の外に体を横たえ、顔を窓に押し付けて様子を伺っていた。


 静けさの中、ウィリアムが用意したティーを皆が口にして(もちろんネクロドレイクを除き)一息つく。すると、まずベルノスが口を開いた。


「相談というのは、以前に話していた次のデッキ、つまり次の文明の選択について、ということですよね?」


 リオトは頷き、落ち着いた口調で答える。


「そうだ」


 ベルノスはさらに深く問いかけた。


「以前、我々が直面していた問題の一つは人材不足ですが、これはリオト様が召喚した専門家たちによって徐々に改善されてきていますよね?」


 リオトはまた頷いた。彼の視線がウィリアムに向かうと、彼がその内容を補足するように続けた。


「リオト様が建造された第一層の行政庁や徴税所といった建物が整備され、それに伴って召喚された専門家が働いております。彼らは非常に優秀で、各分野での指導も順調に進んでおります。現在、領地の人口は約300名ほどですが、目標としている500名、そして最終的には1000名という段階に向けて、道筋は見えてきております。」


 ウィリアムの言葉にリオトは頷いた。


「そうだね。人材の部分は、今のところ心配いらないだろう。けど、次に取り組まないといけないのは戦力だ。民を訓練して武具を提供すれば、戦える力はつけられるだろうが、それでもまだ不足しているな?」


 リオトの指摘に、セリフィアムも頷きながら言葉を続けた。


「私も訓練の様子を見てきましたが、やはり民たちの間には不安が残っているようです。特に、森で狩猟を行う者たちは、森の異変に気づき始めています。その不安が広がる前に、対策を講じる必要があるでしょう。」


 セリフィアムの言葉にベルノスも同意し、重い口調で付け加えた。


「森の問題はやはり無視できません。やはり、手の入っていない太古の森。ここは戦力を整えるほうが良いのではないかと思いますね」


 リオトは考えながら答える。


「つまり、みんなは古龍文明を選んだ方がいいって考えているのか?」


 リオトの問いかけに対して、ベルノスは少し考え込んだ様子で答えた。


「いえ、他に強力な戦力を提供できる文明があるなら、それも一つの選択肢ですが……。古龍文明を選ぶというのは、非常に強力な力を手に入れる反面、危険も伴うのではないでしょうか。特に、この世界がドラゴンたちに支配されている可能性があることを考えると、古龍をむやみに召喚することは非常にリスクが高いのでないかと。古龍たちはその強大な力ゆえに、他の存在から敵視されることも考えられますし、こちらの領地が目立ちすぎてしまうかもしれません」


 リオトは真剣な表情でベルノスの話に耳を傾ける。すると、ネクロドレイクが低い声で話に割り込んだ。


『リオトよ、古龍文明には我のような古龍やその系譜の者が多いのか?』


 リオトは振り返り、ネクロドレイクを見ながら頷く。


「ああ、そうだね。古龍やドラゴンたちがメインになっている文明だ」


 リオトは再びパネルを操作し、古龍文明の初期デッキを見せながら説明する。


「えーと……竜王ザハー……」


 ガダンッ!


 突然、館全体が揺れ、リオトは驚いて声を上げた。原因は、ネクロドレイクが興奮して体を動かしたせいだった。外で巨大な体を揺らしているネクロドレイクが、さらに興奮した様子で言葉を続ける。


『竜王……と言ったか?』


 ネクロドレイクの大きな目がさらに鋭くなり、リオトを見つめている。


「え? うん……竜王ザハード、古代ドラゴンたちの頂点に君臨する竜王だって」


『ふむ、世代が違うのか、その名は聞いたことがない。だが竜王ともなれば、非常に強大な力を持っており、今のお前たちの手に余るかもしれぬぞ』


 リオトは緊張感を抱えながら、さらに尋ねた。


「竜王って……そんなにやばいのか?」


 ネクロドレイクは深く頷き、その低い声が執務室全体に響いた。


『当たり前だ。古龍は力が強大すぎて、呼び出せば世界そのものに変化を与えるほどだ。もし、この世界がドラゴンたちに支配されているのなら、そこの司祭が言う通り、古龍の召喚はその秩序を乱すことになる。この世界のドラゴンたちが警戒し、敵として見なされる危険がある』


 リオトはその言葉を聞いて、考え込む。


『それだけではない。太古の森にも異変が起こり始めているのは感じているだろう。森には強大な力を持つ者が潜んでおり、奴らも古龍の存在を脅威と見なす可能性が高い』


 ベルノスが不安げな表情でリオトを見つめながら言葉を続ける。


「確かに、最近、森に潜む者たちの動きが変わり始めています。我々が手を入れていない太古の森には、未だ強大な存在が潜んでいることがわかっています。彼らのテリトリーを侵せば、危険は避けられないでしょう」


 リオトは不安を感じながらも、再びネクロドレイクに質問を投げかけた。


「でも、お前も古龍だよな? 今こうして問題なく一緒にいるじゃないか?」


 ネクロドレイクは少し鼻を鳴らしながら答えた。


『それは、我が深淵の力で蘇った存在だからだ。生前の力と比べれば、今の我は力が大きく減衰げんすいしておる。存在そのものも、死んでから蘇った希薄なものゆえ、他の古龍に比べれば目立たぬ。今は問題がないというわけだ』


 リオトは納得したように頷くが、ネクロドレイクはさらに声を低め、注意を促した。


『だが、この森には我と同じくらいの力を持つ存在が複数いる。もし遭遇すれば、今のお前たちでは少々手こずるやもしれぬな?』


 その言葉に、リオトと他のメンバーたちは息を呑んだ。ベルノスとセリフィアムも緊張した表情を浮かべ、ウィリアムも表情を硬くする。


「……まさか、そんな……」


『フン、これまでお前たちが無事だったのは幸運だったということだ。これから先、もしお前たちがそのような存在に遭遇することがあれば、覚悟しておけ』


 ネクロドレイクは最後に鼻を鳴らし、静かに横になった。


「えぇぇぇっ!」

「なんですと!?」


 リオトたちは思わず声を揃えて叫んだ。森の中にそんな強大な存在が複数潜んでいるなど、想像もしなかったからだ。


 ネクロドレイクはその反応を見て、満足そうに口元を上げた。そして再び、静かに森の方を見つめるだけだった。




 ◆ネクロドレイクの反応に対して、リオトは.....◆

 ガダンッ!

 ネクロドレイク:『竜王……と言ったか?』

 リオト:「竜王って……そんなにやばいのか?」

 ネクロドレイク:『当たり前だ……竜王の力は絶大で、どのような世界であれ、世界に影響を与えるほど強力だ……』

 リオト:(これ、新しいパックから創造の古龍アルヴァリオスを引いたって言ったら、どんな反応するんだろう……でも、今はやめておこう。今回は古龍を選ぶわけじゃないし……)


 お読みいただき、ありがとうございます!少しでも楽しんでいただけたら、ぜひ『応援』『フォロー』をお願いします。応援が執筆の励みになりますので、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る