第3話一人目の攻略対象

アイラは帰宅すると購入してきた物をきれいに振り分けて片付けた。



自室にハンドメイドをする為の簡単なスペースも作ったのだった。



「よし!これでハンドメイドを思い切り出来るスペースはばっちりね。そういえばこの世界ってミシンは簡単に手に入るのかしら。前世ではアクセサリーなんかは手縫いだけれど洋服や鞄などはミシンを使っていたからミシンがあるといいんだけどな」



アイラは作ったスペースを見ながら一人そんな事を呟いていた。



「プリラブMをしてる時はプリラブMの世界にミシンがあるかどうかなんて考えてゲーム進めないもんね。ん〜街でミシンが手に入らないか探してみるのも良さそうね。もしかしたら業務用以外に家庭用もあるかもしれないしね」



アイラは考える様な表情を浮かべたがら呟いた。



「一先ず夕食まで時間があるから何か作ろうかな」



アイラは購入した物を見ながら笑顔で言った。



「ん〜何を作ろうかな。せっかくなら家族や使用人の皆にプレゼント出来るの物がいいよね。ん〜何がいいかな。ん〜ん〜無難に刺繍入りのハンカチにしようかな。ハンカチだと普段使い出来るしね。うん!そうしよう!」



アイラは材料を見つめながら何を作ろうか考えていたがハンカチを作る事に決めて言った。



そして…


アイラは早速購入したシルクの生地を作る分だけ手際よく裁断していった。


そして裁断した生地を一枚づつ丁寧に縫いハンカチにしていった。



「あ〜やっぱりハンドメイドって楽しいわね。転生しても感覚は覚えていて良かったわ」



アイラはハンカチを縫いながら嬉しそうに言った。



(そう言えばハンカチといえば私の兄であるカイルはプリラブMのヒロイン・ローズの一人目の攻略対象者だったわよね。ローズはカイルと同い年で高等部の十八歳で学園でクラスは違ったけど確か廊下でローズがカイルのハンカチを拾ってあげた事でカイルがローズと仲良くなるきっかけになったんだよね)



アイラは縫い物をしながら前世でやっていた乙ゲーの事を思い出していた。



(カイルはローズと仲良くなり時間を過ごす事でカイルがローズに惹かれていくのよね。でも、カイルがどんなに優しくてもローズはカイルを友達以上に見れなかったのよね。カイルは攻略対象者の中でも一番優しくてローズの事をただ真っ直ぐ愛していたけどローズにはその想いは届かなかったのよね。ゲームを進める私ですらもカイルの恋が実らないのは切なかったもんね。今はそんなカイルの妹なんだからどれ程優しい人間か知ってる分余計にそれを目の当たりにするのは辛いかもしれないわね)



アイラは思い出して考えながらも手は動いていた。



(今のうちからお兄様がローズに想いが伝わらないと知った時の慰める言葉を考えておいた方がいいかな〜)



アイラは今から先の事を思って考えていた。



(ローズがお兄様のハンカチを拾うのっていつだったかなぁ。今が丁度お兄様が十八歳の春。あっ!という事はローズがお兄様のハンカチを拾うのってそろそろじゃなかったっけ?お兄様が廊下でハンカチを落としたのは確か月に一度ある全校集会の日だったはずよ。そうよ!そうだわ!ローズと一人目の攻略者の出会いを楽しみに待っていたから覚えてるわ。間違いない。全校集会の日だわ。という事は、、ん?!全校集会って明日じゃなかった?今日カミラが帰り際に明日は全校集会だよって言ってたわよね)



アイラはプリラブMのヒロイン・ローズが一人目の攻略者であるカイルにいつ遭遇するのだったかを思い出していた。


そして、前世での記憶を遡り考えた末に二人が遭遇する日を思い出したのだった。



(明日か。何だかゲームを攻略して進めていくとは違う状況だもんね。その状況をこの目で目の当たりにするんだもんね。何だかドキドキしてきたわ。でも、モブキャラとしてしっかりとローズの行く末を見届けたいもんね。さぁ、明日から本格的にプリラブMの世界を間近で見れるんだわ)



アイラはいざプリラブMの世界観を間近で見ると思うとドキドキとちょっとした興奮が湧き起こる様な感覚になりながら考えたいた。



「あっ!!考え事してたらこんなにハンカチ作ってしまってたわ。本当私って何か考え事しながらハンドメイドすると考えている間に手だけは動かしてて気づけば品物を沢山作りすぎてしまうのよね」



アイラは縫っているハンカチがいつの間にか沢山出来ているのを見て困った表情を浮かべながら呟いた。



「まぁいいか。せっかく沢山作ったんだから一人一枚と言わず二枚ずつ渡そっと。明日カミラにも渡してあげよっと。さぁ!仕上げの刺繍しましょ!」



アイラはいい案が思いついたいわんばかりにすぐに笑顔になり言うとハンカチへと刺繍を始めたのだった。



アイラは刺繍も手際よく進めて夕食の時間までの数時間でハンカチの刺繍を全て終えたのだった。



アイラは完成したハンカチをカミラの分は包み、使用人達には夕食を食べる前に手渡したのだった。


使用人達は皆嬉しそうに受け取ってくれたのだった。



そして家族には夕食時にハンカチを手渡した。



「これはアイラが作ったのか?」



「そうよ。私が生地から作って刺繍したの。お母様がいいお店を教えてくれたお陰で沢山可愛いものが買えたわ」



「ほぅ〜これはまたとても上手に仕上がっているな。ありがとうアイラ。大切に使うよ」



ハンカチを受け取った父のスミスがハンカチを見て驚いた表情を浮かべながらアイラへと言うとアイラは笑顔で応えた。


そんなアイラにスミスは嬉しそうな笑みを浮かべて言った。



「気に入るものが沢山買えて良かったわね。お店を教えた甲斐があったわね。それにしても…本当に上手に出来ているわね。アイラはお裁縫は得意だったのね」



「えぇ。本当にお母様が教えてくれたお陰よ。ありがとう。ふふ、これからもあのお店にはお世話になりそうよ。お裁縫はそうね、、思ったより得意な方みたい」



(お母様達は私がお裁縫がここまで得意だんて思ってなかっただろうから驚くのも無理ないわね。でもこれで私がお裁縫が得意と分かったはずだからこれからはもっと色々作っても怪しまれたりはしないわね)



「そうなのね。自分が好きな事を見つけられるのはとてもいい事ね。アイラが作ってくれたと思うと余計にこのハンカチは大切に思えるわね。ありがとう」



母のマリは優しく笑みを浮かべながらアイラへと言った。


アイラも笑顔でマリに言うとマリと話しながらも内心ではそんな事を思っていた。


そんなアイラにマリは笑顔を浮かべたまま嬉しそうにして言ったのだった。




「ありがとう。アイラ。明日早速このハンカチを学校へ持っていくのに使うよ」



「ええ。お兄様。是非使ってくださいね」



「あぁ。私も可愛い妹から貰ったこのハンカチを大切にするよ」



「ありがとうお兄様」



兄のカイルも笑顔を浮かべてアイラに言うとアイラも笑顔で応えた。


そして、カイルは嬉しそうな表情でアイラに伝えるとアイラもにこりと微笑み嬉しそうな表情を浮かべたのだった。



その後も、皆で楽しく話をしながら夕食の時間を楽しんだのだった。







翌日…


この日は全校集会の為、アイラもカイルもいつもより気持ち早めに家を出発したのだった。



学園へ着くなりアイラとカイルは別れそれぞれの校舎へと向かった。



(あぁいよいよね。いよいよローズとお兄様が出会うのね。その現場を見たかったけれど中等部と高等部では校舎が違うから難しそうね、、残念だわ。でも、二人が出会うっていう事がプリラブMファンとしてはそれだけで気分が上がるわね)



アイラは中等部の自分の教室へ向かいながらそんな事を考えていたのだった。



「アイラ!おはよう!」



「あっ!カミラおはよう。昨日は本当に心配かけてごめんね」



「いいわよ!アイラが無事だったんだから」



「うん!あっ、そうだ。これカミラにあげるわ。良かったら使ってね」



「え?私にありがとう!何だろう」



「刺繍入りのハンカチよ。昨日私が作ったの」



「わぁ本当だ。可愛い。私の名前が刺繍してあるわ」



「そうなの!」



「ありがとう。大切に使わせて貰うわね」



「うん」



「アイラってお裁縫得意だったの?」



「う、うん。そうなの。実はお裁縫は好きなのよ。今までタイミングがなくてあまりやらなかったのだけど」



「そうなのね。私はお裁縫は大の苦手だから羨ましいわ」



「機会があったら私が教えてあげるわね」



「本当?!ありがとう是非」



「うん!」



アイラが教室まで着くとカミラが声をかけてきた。


アイラはカミラに挨拶すると昨日の事を申し訳なさそうに謝った。


そんなアイラにカミラは笑顔で応えるとアイラも笑顔になった。


そして、アイラはカミラに持ってきたハンカチを手渡した。


カミラはハンカチを見て驚いた表情を浮かべながらも嬉しそうに笑みを浮かべながらアイラへとお礼を言った。


アイラもカミラを見て嬉しそうに笑ったのだった。




その後、月に一度の全校集会が行われ二十分程で集会は終了したのだった。




全校集会が終わり教室へ戻ったカイルは友達へアイラから貰ったハンカチをとても嬉しそうな表情を浮かべながら自慢していた。


あまりにも嬉しそうにハンカチを皆に見せたのでそんなカイルの嬉しそうな表情を見て友達は微笑ましい眼差しで聞いていた。



その後カイルはトイレへ行った。


トイレを済まして教室へ帰ろうとした時だった…



「あの、すみません。ハンカチ落としましたよ?」



カイルが教室へ向かって歩いてあると後ろから女子生徒が声をかけてきた。



「え?あっ、本当だ。すみません。ありがとうございます。このハンカチはとても大切なハンカチなので拾って貰えて助かりました」



カイルは声をかけられ振り返り自分のポッケを確認した。


そしてポッケにハンカチがない事に気づくと女子生徒へ拾ってくれた事にお礼を言った。



「とても大切なハンカチならなくさなくて良かったですね。また落とさない様に気をつけてくださいね」



女子生徒はカイルの話を聞くとにこりと微笑みながらカイルへと言った。



「え、あ、はい。そうですね。気をつけます」



カイルはにこりと微笑む目の前の女子生徒を見て急に慌て気味に言葉を返した。



「では私はこれで」



「あっ、はい。本当にありがとうございました」



「いえ、どう致しまして」



女子生徒は礼をすると教室へと戻ろうとした。


そんな女子生徒にカイルは慌てて言うと女子生徒は笑顔で言った。



「あっ、あの!私はカイルと言います。あの君の名前は?」



「私はローズと言います」



「ローズさん。改めてローズさんありがとうございました」



「いえ。ではカイル様失礼しますね」



「はい」



カイルはその場を去っていく女子生徒を引き止めて自分が名乗ると相手にも名前を尋ねた。


すると、少し驚いた顔をした女子生徒はにこりと微笑み名前を言った。


カイルは女子生徒の名前を呟いた。


そして、女子生徒はにこりと微笑んだままカイルへ言うと教室へと戻っていたのだった。




これが…


ヒロイン・ローズと一人目の攻略者カイルの出会いだった。



カイルはローズを一目見て雷が落ちた様な衝撃を受けて恋に落ちたのだった。




その日の放課後…


アイラはカミラと別れて一緒に帰るカイルを待っていた。



(お兄様遅いわね。今日遅くなるなんて言ってたかしら。今日はローズと出会ったはずだからローズと何かあったとか?!う〜ん、でも出会ってすぐローズとカイルが何かあったなんてゲーム上ではなかったか)



アイラもカイルを待っている間にそんな事を考えていた。



「すみません。君がアイラで間違いないかな?」



アイラが考え込んでいると急に声をかけられた。



「はい。そうですけど」



アイラは声をかけられてふと声のする方へ振り向きながら応えた。



だが、振り向いた瞬間アイラは声をかけてきた相手の顔を見て驚いた表情を浮かべて固まったのだった……



声をかけてきたその相手は…


プリラブMのローズの二人目の攻略者だったのだ…



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