悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!

☆乙女図☆

第1話モブキャラでした


"拝啓、前世の私へ、、


前世の私はどうやら前世でハマっていた乙ゲー【プリラブM】の世界へ転生してしまった様です"






ガルバドール侯爵令嬢のアイラは心の中で自分自身に言い聞かせていたのだ。




そう…


アイラはほんの数時間前に自分が転生した事に気がついたのだった。









カカオール王国のガルバドール侯爵家の令嬢であるアイラは父、母、兄、アイラの四人家族だった。




アイラはカカオール学園へと通う十五歳。


幼い頃より誰にでも優しくいつもにこにこしている愛想の良い子だった。


そんなアイラを両親と兄は可愛がっていたのだった。


アイラもまたそんな両親と兄の事が大好きだった。




アイラは毎日を平凡に楽しく過ごしていた。




そんなアイラに予想もつかない事態が起きたのだった。




それは…


アイラが学園のテラスで友達のカミラと話をしている時だった。


近くで男子生徒がボール投げをしていた。


一人の男子生徒が投げたボールがテラスにいたアイラに思い切り当たってしまったのだ。




バタッ…






ボールが思い切り当たったアイラはその場に倒れ込み気を失ってしまったのだった。




「アイラ!アイラ!アイラしっかりして!アイラ!」




カミラが倒れたアイラに必死に声をかけたがその声はアイラには届いてはいなかったのだ。








気を失ったアイラは不思議な白い光がさす空間に一人立っていた。




(あれ?ここはどこ?もしかして私さっきボールが当たって打ちどころが悪くて死んでしまったの?ここは、、あの世じゃないの?)




アイラは周りが何も見えない空間にいる事で自分は死んでしまったのではないかと混乱していた。




すると…


次の瞬間…


アイラの脳裏に突然何かの光景が浮かんだのだった。










「ねぇねぇ。さつき!次のイベントの商品は完成したの?」




「うん!もちろんだよ!今回は色々と自信作が沢山あるんだ。お客さんの手に取って貰えるの楽しみだな〜」




「そうなの?それじゃぁ次のイベントは一段と楽しくなりそうだね」




「うん!」




さつきという少女とその友達であろう少女が楽しそうに話をしていた。




「あっ、プリラブMの方の進行状況はどうなの?」




「うん!結構進めてるよ!今ちょうどヒロインが三人目の攻略対象を攻略しているところよ」




「そうなの?結構進んでるね。私はまだ悪役令嬢に邪魔されてるところだから一人目の攻略対象をようやく攻略したって感じだよ〜」




「悪役令嬢のジェシカってヒロインのローズに対しての当たりのキツさが凄いもんね。私もあそこで結構苦戦したんだよね」




「だよね〜。ジェシカがえらく当たってくるもんだからなかなか攻略対象を攻略できなくてさ〜」




「分かるわ〜。ジェシカはローズがプリンセスになるまでずっと当たりキツそうだし今後の展開も大変そうだね」




「そうだよね〜。でも、そこもこのゲームのミソだし結局何だかんだ言いながらも楽しい乙ゲーは止められないんだけどね」




「ハハハ。そうなんだよね!結局攻略が難しかろうと何だろうと乙ゲーが楽しくて止められないんだよね」




「ハハハ、本当に。これからもプリラブMに翻弄されまくりだよね」




「間違いないよ〜。今まで色んな乙ゲーやってきたけどプリラブMは特に面白いんだもんね!」




「そうだよね!」




さつきと友達のよしみが楽しそうに笑い合い話をしていたのは二人がハマっていた乙ゲー【プリンセスラブMISSION】通称・プリラブMの内容だった。


さつきはハンドメイド作家としてよしみとイベントやネット販売などで活動していたのだった。


二人はハンドメイドだけではなく乙ゲー好きという共通点もあり仲が良かったのだ。




そんな笑い合って話をしている場面から急にシリアスな場面へと変わった。






「キャーーーー!」


「助けてーー!」


「キャーー!いやよー!」


「逃げてー早く逃げてー!」




街中にある噴水広場に沢山の悲鳴が飛び交っていた。




噴水広場でハンドメイドイベントをしていたところに包丁を持って男が暴れていたのだ。


数人の人が包丁で切りつけられていた。


その場はパニック状態になっていた。




「さつき!どうしよう。怖いよ」




「早くこの場所から逃げないと!」




「うん。男が暴れてるからどうやって逃げたらいいんだろう」




「私がタイミングを伺うからタイミングを見計らって逃げよう」




「分かった」




ハンドメイドイベントに参加していたさつきとよしみはパニック状態となっている場所でテントの陰に隠れて恐怖に襲われながら話していた。




「よし!今よ!あそこまで全力で走ろう!」




「OK。分かった!」




「じゃぁ!行くよ!1.2.3!走って!」




さつきが暴れている男の動きを見ながら今だというタイミングをみつけてよしみへと言った。


そして、さつきがGOと言うと二人はテントの陰から出てさつきが指さしていた店まで全力で走り出した。




ドサッ…




「きゃっ」




「よしみ!」




全力で走っているとよしみが転げてしまった。


そんなよしみに気がついたさつきはよしみの名を呼んだ。




そんな転げているよしみに暴れている男が気づき包丁を持ったままよしみの方へと走ってきた。




「よしみーー!」




さつきがその光景を見てよしみの名前を叫びながらよしみの方へと走り駆け寄った。




そして、次の瞬間…




グサッ…




走ってきた男の包丁がよしみを庇ったさつきの脇腹へと刺さった。




「さ、さつきーー!」




「よしみ…逃げて…早く…お願い…逃げて……」




「さつきー!」




「逃げて…」




刺されたさつきを見てよしみが叫んだ。


そんなよしみへさつきは苦しい表情を浮かべながらも言った。


よしみは涙を溢しながらさつきの名前を呼んだ。


しかし、さつきはまだ自分のすぐ側に男がいたので最後の力を振り絞りよしみを押して言った。




男はさつきがよしみを逃がそうとしていたのを見てさつきから包丁を抜くとよしみを刺そうとした。




パンッ!


パンッ…




その時その場に銃声が鳴り響いた。




銃声がした直後に男がその場に倒れ込んだ。


銃弾は男の足と腕へと当たった様だった。




よしみが刺されそうなところに間一髪で警察が現場へと駆けつけて男に向けて発砲したのだった。




よしみがすぐにさつきの元へと駆け寄った。




「さつき!さつき!しっかりして!お願い!さつき!嫌、私のせいでさつきが死ぬなんて嫌!さつき!さつき!お願いだから!死なないで!」




倒れていたさつきを抱き起こしてよしみが涙を流しながらさつきへと声をかけた。




「よしみ。大丈夫。よしみのせいじゃないから。よしみが無事で良かった、、」




さつきは大量の血を流しながら掠れる声でよしみへと言った。




「さつき。嫌!嫌だよ!死んじゃ嫌だよ。さつき!」




よしみは涙をポロポロと流しながらさつきへと言った。




「よしみ今までありがとう。よしみともっといっぱいハンドメイドも乙ゲーもやりたかった、、」




さつきは意識が遠のく中ニッと笑みを浮かべながらよしみへと言った。






そして、その言葉を最後にさつきは命を落としたのだった。




「さつきーーーー!!」




その場にはよしみの泣き叫ぶ声が響いたのだった。






パチリッ…




アイラが目を覚ました。




(今の光景、、。思い出した。私、あの時よしみを庇って刺されて死んでしまったんだ)




目を覚ましたアイラは気を失っている間に見た光景で自分がさつきという少女だった事を思い出したのだった。




「アイラ!先生アイラが目を覚ましました。」




「え?お兄様?」




「アイラ良かった。目が覚めて。お前がテラスで倒れて意識がないと聞き心臓が止まるかと思ったよ」




「あっ、そうか。私はあの時ボールが当たって」




「そうだよ。どこか痛むところはないか?」




「ううん、ないわ。大丈夫」




「そうか。良かった。カミラも凄く心配していたからアイラが目を覚ましたことをカミラに伝えてくるよ」




「うん。分かった。ありがとう。」




目を覚ましたアイラを見て兄のカイルが声をかけた。


アイラは目の前にカイルがいる事に驚くとカイルがアイラの状況を話してくれた。


アイラはカイルに言われて自分が気を失った事を思い出すとカイルはホッとした表情を浮かべながらカミラにアイラが目を覚ました事を伝えに部屋から出ていったのだった。




(もしかしてと思ったけれどやっぱり間違いないわ)




アイラはカイルが部屋を出ていった瞬間ガバッと起き上がり信じられないという表情を浮かべながら思った。




(私、さつきとして死んだけれどプリラブMの世界に転生したんだわ。間違いないわ。だってお兄様のカイルってプリラブMの攻略対象の一人だもん。何百時間とプリラブMに時間を費やしてきたんだから攻略対象を分からない訳ないもん)




アイラは信じられないという表情を浮かべたまま自分が前世でやっていた乙ゲーの世界に転生したと確信を得て思っていた。




(まさか自分が前世でやっていた乙ゲーの悪役令嬢に転生してしまうなんて…そんなアニメみたいな話が存在するなんて)




アイラは信じられないという表情のまま思っていた。




が、ふと頭の中が「、、。」となった。




(?!ん?んんん?!ちょ、ちょっと待って。悪役令嬢?ん?んん?いや、悪役令嬢って名前ジェシカだったよね?ヒロインはローズ。でも、私の名前はアイラ。ん?んーー?アイラって誰ーーー?!!)




その時、よくある流れで自分がゲームの世界の悪役令嬢に転生したのだと思っていたけれど自分が悪役令嬢でもヒロインでもない人物に転生したのだと気づいて混乱したのだった。




(アイラって本当に誰?あんなにプリラブMをやり込んだけどアイラなんてキャラ出てきた?悪役令嬢の取り巻きのキャラ?いや、そんな名前の取り巻きキャラなんていなかったしヒロインの周りにもそんな名前のキャラなんていなかった。となると本当に誰?分からない。本当にアイラなんてキャラが分からない)




アイラは転生した自分が乙ゲーをやっていて聞いたこともない名前な事に頭が更に混乱した。




そして、アイラは頭を悩ませながら必死にアイラというキャラがゲーム内にいなかったかを一生懸命思い出していた。




(んん〜。んんん〜。アイラ、アイラ、アイラ、、。ん?!アイラ?カイルの妹。あぁーーーーー!思い出した。ヒロインがカイルの家に来た際にヒロインが階段でばったり会ったのがアイラだったわ。ブラウンカラーの髪に緑色の瞳。カイルと同じ髪と目の色をしてるキャラいたわ。ただ、ヒロインと挨拶を交わしただけだったけどプリラブMに出てきていたわ。でも最後までプリラブMをクリア出来てないとはいえやり始めてから進めていたところまでの間でアイラが出てきたのはその一瞬だけだったわ)




アイラは考えに考えてようやくアイラというキャラが出てきていた事を思い出して衝撃を受けたのだった。




(という事は私が転生したアイラって悪役令嬢でもヒロインでも悪役令嬢の取り巻きですらもない究極のモブキャラって事よね。さつきとして若くして死んでしまったけど大好きだった乙ゲーの世界に転生したけれどまさかのモブキャラ、、しかも本当に本当のモブキャラ)




アイラは自分がモブキャラに転生した事についてを思っていた。




(モブキャラか。モブキャラって最高じゃない?そりぁせっかく大好きだったプリラブMの世界に転生したのにヒロインでも悪役令嬢でもないキャラに転生してしまったのは少し残念だけど逆にモブキャラなら悪役令嬢のキツイ当たりにも遭わないしヒロインみたいに攻略対象を攻略しなくてもいいんだから好きな様に過ごせるって事だもんね。もちろんプリラブMの世界にいるんだからヒロインの行方は親の様な気持ちで見守れるから自分の好きな事をして過ごしながらプリラブMの話の流れを堪能しよう。うんうん!それがいいわ!)




アイラは自分がモブキャラに転生した事にショックを受けるどころかプラスな方向で考えていたのだった。




(私の好きな事。それはハンドメイド!好きな物を好きに作りながらプリラブMの世界で暮らす。うん!最高ね。今日からは新たなアイラとして生きる事にしましょう。)




アイラは一人笑みを浮かべながらそんな事を思っていたのだった。






「アイラ!」




その時、アイラが目を覚ましたことを聞いたカミラがアイラの元へとやって来たのだった。




「カミラ心配させてごめんね。もう大丈夫だから」




「も〜心配させるんだから。本当に倒れた時はどうしようって焦ったんだから」




「うん、ごめんね」




「うんん。目が覚めて良かった。」




「うん!」




アイラは困った表情を浮かべながら慌てるカミラへと言うとカミラはホッとした表情を浮かべながら言った。


そんなカミラにアイラは申し訳なさそうな表情を浮かべながら言うとカミラは笑みを浮かべながら言った。


そんなカミラにアイラも笑みを浮かべながら言った。




(あぁ、よしみはあれからちゃんと保護してもらえただろうか。自分のせいで私が死んでしまったと思い詰めていないだろうか。よしみ、元気にしてるかな)




アイラはカミラとのやり取りをするとふとそんな事を考えたのだった。






"拝啓、前世の私へ


前世の私はどうやら前世でハマっていた乙ゲー【プリラブM】の世界へ転生してしまった様です。


モブキャラの様ですが楽しくハンドメイドをしながらプリラブMの世界を過ごしたいと思っています。




P.S よしみ、よしみ悲しませてごめんね、、でも、私は生まれ変わって元気にしているよ。だから心配しないでよしみはよしみの人生を楽しく過ごしてね。




アイラは窓の外を見つめながら自分自身と前世の友達よしみに向けて言い聞かせていたのだった。




この日からアイラの新たな生活が始まったのだった……


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