第28話 環境テロリスト迎撃作戦(4)

 狙撃銃の銃口を特殊戦闘服の補助AIとリンクする。

 バイザーの裏面、おれの目の前に敵との距離、相対速度、弾道修正等の各種データが表示された。


 戦闘服が自然に動き、照準補正が完了。

 反動抑制姿勢完了。


 正面から丘の上に突っ込んでくる強襲揚陸艇の正面より少し向かって右側を狙い――おれは、引き金を引いた。

 腹に響く衝撃音と共に、すさまじい反動が襲ってくるが、戦闘服の姿勢制御機構と協力して必死に踏ん張る。


 銃口から発射された弾丸は白い軌跡を残して飛翔し、強襲揚陸艇が展開するバリアに接触、激しい爆発を起こした。

 あいにくとバリアは突破できなかったものの、衝撃で船体が揺れ、バランスを崩す。


 そのまま、丘の左手にそれていく。

 おそらく操縦者は懸命に制御を取り戻そうとしたのだろうが、それもむなしく船はおれたちの頭上を通過し、背後の森の中に不時着した。


 激しい衝撃波が丘を襲う。



        ※



 着陸した揚陸艇から、ばらばらと人影が出てきた。

 全部で三十人と少しだ。


 全長五十メートルの船だからもう少し乗っているかと思ったが、テロリストも人手不足なのだろうか。

 まあ、頭がおかしい奴らの考えていることなんて知らん。


 全員ぶっ殺せば問題ないのだ。

 生活のために密漁をしていた双海人とは違う。


 こいつらには生かしておく理由も、価値もない。


「教授はそこで待っていてください。敵がきたらリターニアを連れて屋敷の中へ!」

「わかった。彼女のことは任せろ。存分に暴れてきたまえ」


 重い狙撃銃を捨てて、おれは揚陸艇の方へ丘を駆け下りる。

 腰に差した細長い棒を抜いた。


 軽く手を振る。

 棒は長く伸張し、実体剣となる。


 テロリストたちが、接近してくるおれに気づいて、何か叫んでいる。

 無視して距離を詰めたところ、無数の銃弾で歓迎された。


 おれは自分に直撃する銃弾だけを剣で払う。


「当たっているのにひるみもしないぞ! 化け物か!」

「違う、剣で弾いているんだ! 古式正式剣技エンシェントアーツ!? ありえん、十剣聖か!?」


 違うよ、あいつらと一緒にしないでくれ。

 あいつらなら、おまえたちが乗ってきた船ごと切り伏せているだろうし。


「くそっ、こんなの聞いていないぞ。ジミコ教授のまわりに警護なんていないって話じゃなかったのか!」

「それは事実だぜ。おれはただの一般人だ」

「銃弾を弾く一般人がいるか!」


 いるんだよ、これが。

 まあ、ついこの間まで軍にいたんだけど。


 すれ違いざま、テロリストたちを切り伏せていく。

 銃弾をものともせず十人くらい殺したところで、敵の士気が崩壊した。


 残るテロリストたちの半分くらいが、情けない悲鳴をあげて逃げ惑う。

 はあ、仕方がないな……。


 こんな奴ら、生かしていてもこの星や人類にとって何の得にもならないんだが……。


「降伏する者は銃を捨てて地面に伏せろ! そうでない者は斬る!」

「わ、わかった! このとおり、降参だ! 攻撃しないでくれ!」


 地面に這いつくばる者たちを一瞥し、おれは彼らが乗ってきた揚陸艇の方を眺めた。

 着陸に失敗したのか、木々をなぎ倒した後、少し傾いて着地している。


 奥の方から黒い煙があがっていた。

 これ、爆発したりしないよな……?


「船の中にはまだ誰か残っているのか?」

「いや、中には死体だけだ」


 這いつくばっているうちのひとりに訊ねる。

 その男は、震えながら返事をした。


「死体?」

「着陸のとき、打ち所が悪くてな……」

「シートベルトもしてなかったのかよ」

「マニュアルにはなかった」


 たぶん惑星警備隊のマニュアルにはあるよ?

 きみたち、マニュアル読まなかっただけでしょ?


 ああもう、とにかくこれで終わり、ということか。

 見上げれば、宙を舞っていた小型機の生き残り五機ほどが、見切りをつけて彼方に逃げていくところだった。


 あいつらの始末とここにいる奴らのことは、遠からず駆けつけてくるだろう警備隊に任せますかね……。

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