“第5波”若い世代の死者増加 東京 8月は最も高い割合に…20210907
第37話
9月7日は再び感染確認が1000人を超えた東京都。今の第5波では若い世代で感染が広がり、50代以下の人の死亡が増加しています。特に8月はその割合が全体の3割にのぼり、これまでで最も高くなりました。
一時よりは減少傾向にあるとされる東京の感染状況ですが、現在の水準の分析や注意点、今後の見通し、さらに期限が迫る緊急事態宣言の扱いなどについて最新の情報をまとめました。
東京都 新規感染は1629人
東京都内では7日、新たに1629人が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、16日連続で前の週の同じ曜日を下回りました。
東京都 感染者“減少傾向”も…
一方、9月6日に東京都内で発表された新型コロナウイルスの新規感染者数は968人で、7月19日以来、およそ50日ぶりに1000人を下回りました。感染者数は一時よりは減少傾向にありますが、感染症対策に詳しい専門家は「医療提供体制を改善させるためには十分な減少ではなく、学校の再開などで今後、増加に転じるおそれもある」として、引き続き感染対策を徹底するよう呼びかけています。
●国際医療福祉大学 松本哲哉教授
▽感染者数が一時より減少傾向にあることについて
「感染者数が減ること自体は本当にいいことで1000人を切ったのはよい材料なのかなと思うが、実態を反映した数字なのか気になるところもある」
▽感染者数が減少した理由について
「極端に人流が減ったわけではなく明確な理由は見当たらない」としたうえで「かなり感染者数が増え医療現場もひっ迫していることが明らかになった。こうした中『今、感染するのを避けなければならない』と感じ、リスクが高い行動を避け、慎重な行動をとる人が増えた可能性がある」
▽現在の感染者数の水準について
「ピーク時の5000人などという高い数字を基準にすると減っているが、医療提供体制の改善にはまだ十分ではない。入院し適切な治療を受ければ助かる命が助けられないと言う事態が今も実際に起こっている。この規模の感染が続けば、重症者や死者数も増えていくおそれがある」
▽今後の見通しについて
「学校の再開などで感染者数が増える要因が出てきているので、このまま減っていくとは考えにくい。場合によっては9月の後半くらいに増加に転ずるおそれもある」
“第5波” 50代以下の死者が増加
今の第5波、東京都内では50代以下の人の死亡が増加していて、8月はその割合が3割にのぼりこれまでで最も高くなりました。基礎疾患がない人や自宅療養中に容体が急激に悪化した人が亡くなるケースも相次いでいます。
50代以下“現役世代” 死者は全体の3割 月別で最も高い
都は8月、都内で新型コロナウイルスの感染が確認された200人が死亡したと発表しました。
年代別は
▽20代が1人
▽30代が8人
▽40代が10人
▽50代が39人
▽60代が22人
▽70代が35人
▽80代が59人
▽90代が24人
▽100歳以上が2人です。
50代以下は58人で全体の29%となり、月別で見るとこれまでで最も高くなりました。
亡くなった人の発表が最も多かった2021年2月は50代以下が8人と全体の1.6%で、第5波では高齢でなくても亡くなる人が増えているのが特徴です。8月は50代以下の58人のうち自宅療養中だった人が14人にのぼり、容体が急激に悪化して亡くなるケースも相次いでいます。
50代以下“現役世代” 基礎疾患なく死亡も13人
また、50代以下で基礎疾患がない人は、2月は1人も確認されなかったのに対して8月は少なくとも13人にのぼりました。
都の担当者は「高齢者ほど接種が進んでいない世代では『デルタ株』の影響もあり重症化するリスクが高まっているのではないか。あらゆる世代でリスクがあることを意識してほしい」として、感染防止対策の徹底を呼びかけています。
専門家「ワクチン行き届かず 重症化し亡くなる人も増えている」
なぜ、50代以下の現役世代で死者が増加しているのか。新型コロナウイルス対策に当たる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は「デルタ株は感染性が高く、50代以下にはワクチンが行き届いていない中で感染者が増えてしまう。デルタ株で50代以下が特に重症化しやすくなったというデータは無いが、感染者数が爆発的に増えると比較的、若い世代でも重症化する人が出てきて亡くなる人も増えるという状況が起きている」と話しています。
そのうえで舘田教授は「感染者数が減っているように見えるかもしれないが東京では1日当たり1000人ほどが報告され、全国的にも高い水準が続いている。引き続き感染者数や重症者の数の推移に注意しなければいけない状況だ」と話していました。
コロナ後遺症調査 半数近く“ある”<東京 世田谷>
一方、東京 世田谷区では新型コロナウイルスの後遺症について調査しました。その結果、感染した人のおよそ半数にけん怠感などの症状があることがわかりました。
世田谷区は、2021年4月の時点で、新型コロナウイルスで区内の病院に入院した患者や自宅療養した区民などを対象に、新型コロナウイルスの後遺症に関するアンケート調査を行い3710件の回答を得ました。
それによりますと、後遺症が「ある」と回答した人は全体の半数近いおよそ1800人にのぼりました。年代別で見ると、30代から50代で高く、半数以上が後遺症が「ある」と答えました。
症状 最多は“嗅覚障害” “けん怠感”…
症状別で見ると
▽最も多かったのが嗅覚障害で54%
次いで
▽けん怠感が50%
▽味覚障害が45%
▽せきが34%となっています。
“若い世代・嗅覚障害” “40代以上・けん怠感”
症状を年代別に見ると
▽10代から30代まででは嗅覚障害が最も多い一方
▽40代より上はけん怠感が最も多いと回答していて
年齢によって後遺症の症状に違いがある結果となりました。
中には、記憶障害や脱毛など半年以上にわたり症状が続いている人もいるということで、区は後遺症の影響などを分析するとともに対策を検討することにしています。
世田谷区の保坂展人区長は「症状が治まったあとも後遺症を引きずり、働いたり日常生活を送ったりするのに支障を来す人が多い一方で、受け皿は十分でない。今回のデータを出すことで臨床の現場でも後遺症治療が新型コロナの治療と連続線上に行われていく体制を国にも求めたい」と話しています。
“宣言”9月12日が期限 各地から延長求める声
新型コロナウイルス対策で、政府は緊急事態宣言を21都道府県に出しているほか、まん延防止等重点措置を12県に適用しており、いずれも期限が9月12日となっています。
今週後半に対応を決定することにしていますが、宣言の対象地域の知事からは、解除は難しく延長を求める声が出ています。
大阪府 吉村知事“宣言解除は困難”
大阪府の吉村知事は7日、記者団に対し「府内の感染状況はピークアウトの可能性はあるが油断はできず、徹底した感染対策をお願いしたい。病床はひっ迫しているので対策を緩めるべきではない」と述べ、宣言の解除は困難だという認識を重ねて示しました。
そのうえで吉村知事は、政府が宣言の扱いを決定しだいすみやかに対策本部会議を開いて、政府の「基本的対処方針」を踏まえ今後の府の対応を決める方針を示しました。
静岡県 川勝知事“宣言解除できる状況にない”
静岡県の川勝知事は記者会見で、県内の新規感染者数は減少傾向だとしたうえで「外出自粛や飲食店の休業などご協力のおかげであり、感謝する」と述べました。
その一方で川勝知事は、新規感染者数や病床使用率などは依然、国の指標で最も深刻な「ステージ4」を大きく超えているとして「大変厳しい状況で現時点で緊急事態宣言が解除となる状況にはない。ステージ3の水準にならないかぎり、宣言の形を変えるわけにはいかない」と述べ、現時点で9月12日を期限とする緊急事態宣言を解除できる状況にないという認識を示しました。
静岡県は今後、感染症専門医の意見を聞くなどしたうえで政府に宣言の延長を要請する方針です。
滋賀県 三日月知事“今後の対応 慎重に判断”
滋賀県の三日月知事は記者会見で、緊急事態宣言について「人の流れの抑制に一定程度、効果が出ているのではないか」と述べました。
そのうえで「感染者は減少傾向にあるが、一方で病床はひっ迫し自宅療養も多い。宣言の延長を要請するのか、まん延防止等重点措置など別の段階へ入っていくべきなのかよく検討したい」と述べ、国に宣言の延長を要請するかどうかを含め、今後の対応は慎重に判断したいという考えを示しました。
三日月知事は感染状況や専門家の意見などを踏まえ、今週中に県の方針を決めたいとしています。
広島県 湯崎知事“宣言延長を要請”
広島県の湯崎知事は政府に緊急事態宣言の延長を要請したことを明らかにしました。
広島県では9月6日までの直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数が50人を超えるなど、ピークを超えつつあるものの厳しい感染状況が続いていて、県は9月12日が期限の緊急事態宣言を延長するよう政府に要請しました。
これについて湯崎知事は記者会見で「緊急事態宣言が発出されて夜の人出が減少した。この状態を維持して感染の再拡大に至らせないことが大事だ」と述べました。
そのうえで湯崎知事は、人出を抑制し感染を確実に抑え込むためデパートやショッピングセンターといった1万平方メートルを超える大規模な商業施設や遊戯施設などに、9月11日の土曜日と12日の日曜日に生活に必要な物資を販売する店舗を除いて休業するよう要請する方針を示しました。
福岡県“宣言解除は難しい” 政府に伝達
福岡県は9月7日、政府に緊急事態宣言を解除するのは難しいと伝えました。
県内の新規感染者数は13日連続で前の週の同じ曜日を下回って減少傾向にありますが、依然として高い水準となっています。また、病床の使用率は5日の時点で62.5%となっていて最も深刻なステージ4の50%を超えています。
このため福岡県は9月7日、政府に対し現在の感染状況を考えると9月12日の期限で宣言を解除するのは難しいと伝えました。政府側は「県の考えも踏まえ検討していく」と答えたということです。
記者会見した福岡県保健医療介護部の白石博昭部長は「9月に入ってから学校の再開など感染再拡大の懸念もあるので、宣言を解除できる状況にあるとは言い難い」と述べました。
菅首相 関係閣僚と対応協議 都市部は延長か
菅総理大臣は9月7日夕方、総理大臣官邸で西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣ら関係閣僚と会談し、宣言の対象地域の感染状況などを分析しました。会談のあと、西村大臣は記者団に対し「状況の報告だ」と述べました。
政府は今週後半に宣言の扱いを決定することにしていますが、首都圏などの都市部では延長せざるをえないといった見方が出ています。
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