デノン製フルサイズ

第2話

今“あえて”フルサイズコンポを選ぶ魅力とは? デノン現行エントリーモデルが持つ“望外な実力”



2021年09月29日

デノンのフルサイズコンポーネント、プリメインアンプ“PMA-390シリーズ”やCDプレーヤー“DCD-755シリーズ”は、本格オーディオの入門モデルとして、長きにわたって人気を保ち続けてきた。


そんな製品達が、2019年、全くの新しい存在としてリニューアルされ、更なる好評を持って多くの人に受け入れられていることを皆さんはご承知だろうか。ここではデノンの現行エントリークラス製品であるプリメインアンプ「PMA-600NE」、CDプレーヤー「DCD-600NE」について、改めて振り返ってみたいと思う。

PMA-600NE(希望小売価格:税込64,900円)

DCD-600NE(希望小売価格:税込58,300円)


■フルサイズ“だからこそ”の強みとデノンならではの音質技術が活きた「PMA-600NE」


この2製品は、デノンが新世代Hi-Fiコンポーネントとしてラインナップの刷新を押し進めた“NE(NEW ERA)シリーズ”の末弟に位置する存在で、冒頭で述べたようにPMA-390シリーズやDCD-755シリーズの後継に位置づけされる製品。実は、社内では最初、定番シリーズとしての名前を受け継ぐことも考えたようだが、デザイン、機能性の両面で全く新しいモデルに生まれ変わっていることから、NEシリーズの名前を付けることになったという。


微妙なカーブを描いているフロントパネルなど、確かにNEシリーズの一員としての統一感が随所にある。また、様々な外装パーツの質感が見直されていて、2012年発売の「PMA-390RE」や「DCD-755RE」など先代モデルと比べてみると、ワングレードどころかツーグレード以上クオリティアップしたかのような上質さとなった。


それらの先代と比べると価格も少々上がってはいるものの、金属も半導体も価格上昇が続いている中にあって、6万円前後というエントリークラスにふさわしい価格帯をキープしてくれているのは素晴らしいし、嬉しいかぎりだ。


とはいえ、これら両機の最大の魅力は、最新モデルならではの機能性と音質のさらなる追求だろう。


たとえばPMA-600NEは、Phono(MM対応)を含む5系統のアナログ入力に加えて、2系統の光デジタル、1系統の同軸デジタル入力を装備して最大192kHz/24bitまでのデジタル音源に対応。さらにBluetooth機能も搭載しており、スマートフォンなどから手軽に楽曲が再生できるようにもなっている。エントリークラスながらも、現代のライフスタイルにマッチした機能性が与えられているのだ。

NEシリーズとしての統一感を感じさせる外観だが、その中身はエントリーモデルとは思えないほど音質追求がなされている


音質については、更なるこだわりが随所に垣間みられる。プリメインアンプの心臓部といえるパワーアンプ部は、一般的なトランジスタの3倍のピーク電流供給能力を持つHC(High Current)トランジスターを、シングルプッシュプルで用いる回路を採用。これは、多数の素子を並列駆動した際に生じる素子の性能のバラツキによる音の濁りを解消するため、あえてシンプルな回路構成を採用したのだという。


ボリュームにはアナログ式ボリュームをチョイス。アナログボリュームは、マニアからも絶対的な支持を受けているアイテムのひとつだが、現在、一般的に利用されている電子ボリュームに比べて入力バッファ回路が不要となるため、その分回路構成がシンプルとなり、音の鮮度の低下や色づけを避けられるメリットがあるという。


また、アナログオーディオ回路には上位モデルの「PMA-2500NE」や「PMA-1600NE」などに使用されている高品位パーツを投入。さらに、電源回路には大型のEIコアトランスや、PMA-800NEにも使用されている独自カスタム仕様の8,200μFブロック電解コンデンサーなども採用されている。


このようにPMA-600NEは、こと音質に関しては高品位パーツがふんだんに投入された、エントリーモデルとは思えない内容を持ち合わせている。これは、開発のタイミングがたまたま上位モデルと並行していたための恩恵だというが、それによって魅力が大きく向上してくれているのは間違いない。これらのパーツ選定や音質チューニングには、デノンのサウンドマスター山内慎一氏が携わっているというのも大きなポイントだ。


また、シンプルに“フルサイズコンポーネント”であることも、本機の大きなアドバンテージとなっている。デノンからも「PMA-30」のような製品がラインナップされているように、この頃はデスクトップユースに最適なハーフサイズ以下の小型製品が注目を集めている。実際、同じアンプを購入するのであれば、コンパクトなモデルの方が場所を取らなくて便利だと思う方もいらっしゃるだろう。

PMA-600NEの内部構造。小サイズな方が取り回しなど便利ではあるが、音質的にはフルサイズの方が有利だ


しかし、フルサイズコンポーネントはサイズに余裕があるため、アンプやデジタル回路、電源といった各パートを無理なく配置でき、それぞれが及ぼしあう影響を最小限に留めることができるため、音質面で大きなアドバンテージになるのだ。


また、サイズの小型化にコストが割かれない分、より音質改善に注力できるのもポイントだ。特に予算の厳しいエントリークラス製品では、こういったアドバンテージがクオリティに大きく影響してくるため、コストパフォーマンスの面でも優位といえる。フルサイズコンポーネントという持って生まれた優位性に、更なる音質追求が盛り込まれているのが、このPMA-600NEなのだ。


続いて、CDプレーヤー「DCD-600NE」についてもチェックしていこう。

機能的にはシンプルなCDプレーヤーだが、その分音質面へのこだわりが随所に反映されている


機能的にはCDに加えてデータディスク(CD-RやCD-RW)のMP3、WMA音源の再生に対応、出力はアナログと光デジタル出力を装備と、比較的シンプルな内容となっているが、そのぶん、音質面では強いこだわりが随所に反映されている。


デノン独自のアナログ波形再現技術「AL32 Processing」を搭載し、32bitの拡張処理を行うことで、より自然な音を再現。加えて、基板上の信号経路を可能なかぎり短くするなど回路の最適化を行うことで、回路内での干渉や外来ノイズによる音質劣化を防止しているという。また、独自の3300μFブロックコンデンサーや、アナログオーディオ回路に「DCD-2500NE」など上位モデルで使用されている高品位パーツも数多く投入されている。もちろん本機のパーツ選定やチューニングも、山内氏の手によるものだ。


フルサイズであることの優位性は、改めて言うまでもないだろう。確かに設置するためのスペースは必要となるものの、PMA-600NEなどとセットで置いた時のオーディオ然とした佇まいは、やはり格別。良い意味での存在感が所有欲を満たしてくれる。


■エントリークラスとは思えない鮮度感と情報量、良質なサウンド

D&Mの試聴室にて試聴を行なった


技術情報を見るかぎり、そのサウンドは大いに期待できるが、実際はいかがなものだろうか。ということで、まずはスマートフォン(Xiaomi「Mi 11 Lite 5G」)をAACコーデックでPMA-600NEに接続し、そのサウンドを確認してみた。


ほかの商品に失礼な言い方かもしれないが、はっきりいって、一体型のBluetoothスピーカーとは格別の音。チェックに使ったのがハイレゾ音源だということもあってか、Bluetoothゆえの情報不足やダイナミックレンジの狭さは感じるものの(それでもAACコーデックは比較的良好なほうだと思う)、歪み感のない素直な音色のため、どんなジャンルの音楽を聴いても楽しい。


Jポップは迫力ある印象的なサウンドを聴かせてくれるし、女性ヴォーカルは普段よりも幾分活き活きとした表現の力ある歌声に感じられる。ハードロックも、ノリのいい疾走感溢れる演奏が楽しめる。唯一、Bluetoothならではの弱点である抑揚幅不足からオーケストラはこぢんまりした音になってしまうが、気になったのはそのくらいで、総じて表現力豊かな、かつ鮮度感の高いサウンドだと感じた。


続いて、本命であるDCD-600NEとPMA-600NEの組み合わせを聴いてみよう。DCD-600NEはディスプレイやデジタル出力を停止させた「ピュアダイレクトモード」、PMA-600NEはデジタル入力回路を停止させた「アナログモード」に設定し、RCAケーブルで接続してCD試聴を行った。

Bluetooth接続でも高レベルな音質だが、組み合わせてのCD再生は“望外なサウンド”だ


とてもピュアな、かつダイレクト感の高いサウンド。弦楽器はボーイングの細かなニュアンスまでしっかりと伝わるので、とてもリアルな音に感じるし、ピアノは凜とした響きを持ち併せているうえ空間に広がる様子まで見えるかのよう。エントリークラスとしては望外の高い鮮度感と豊富な情報量を持つ、とても良質なサウンドだ。


特に、クラシックなどアコースティック楽器との相性がよく、チェロもヴァイオリンも魅力的なサウンドを奏でてくれる。さらに、女性ヴォーカルは普段感じないほどの明瞭さを持つ、ヌケのよい溌剌とした歌声を聴かせてくれる。なんともフレッシュで、なんとも心地よいサウンドだ。上位機種との直接比較をしないかぎり、これで充分と思える質のよさだ。


これも、山内氏という確かな指標を持つゆえの、迷いのないサウンドの表れだろう「DCD-600NE」と「PMA-600NE」の組み合わせは、価格以上の価値を持つ、魅力的なサウンドだと断言しよう。価格も含めて、多くの人にオススメしたい製品だ。

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