天河と綺羅螺・迷宮はいつもそこにある。

猫野 尻尾

第1話:薄紅 綺羅螺(うすべに きらら)

一応カクヨムコン短編応募用に書いてみたんですけど・・・。


完結とはじまりです。


いつから存在するのか新庄町しんじょうまち御手洗町みたらいちょうに架かっている木造の古い橋がある。

その橋の名前を「高天橋こうてんばし」と言う。

一見普通の橋に見えるが、その橋は高天原と人間界を繋ぐ結界になっている。

そのことは一般の人には預かり知らぬことだった。


そして高天橋を渡った先の道沿いに古いお屋敷があって、その屋敷の当主の

名前を「薄紅 将右衛門うすべに しょうえもん」と言い奥方の名前を「薄紅 羽羅螺うすべに うらら」と言った。

薄紅家の女性は名前がふたつあってひとつは「羽羅螺うらら

もうひとつが「綺羅螺きらら」それを親子代々交互に名乗っている。


そして薄紅家の長女「薄紅 綺羅螺うすべに きらら」は僕が入学した「東城東桃源学園とうじょうひがしとうげんがくえん」に

同時に入学して来た。


僕の名前は「一ノ瀬 天河いちのせ てんが」この春めでたく高校に入学した。


綺羅螺きららは背が高く美しい・・・たしかに誰にも引けを取らないくらい美しい。

僕は一目彼女を見てその不思議な魅力に魅入られた。

だから彼女に密かな想いを募らせていた。


でも僕は富裕層の薄紅家とは対照的に貧困層だから蚊帳かやの外の男子。

綺羅螺きららと接触することはない位置にいるから彼女とゆっくり話をする

機会すらないと思っていた。


そしたらいきなり綺羅螺きららの席が俺の左隣になった。

今から思えばそれも綺羅羅の秘めたる力だったのかもしれない。


綺羅螺《きららは椅子に座ると俺に向かって言った。


薄紅 綺羅螺うすべに きららです・・・よろしくお願いします」

「これからお隣どうしです、お隣どうしのよしみと申しましょうか、あなた様の

お名前をご所望いただけますでしょうか・・・」


「ごしょ、ご所望?」


「お嫌ならけっこうですが・・・」


「あ〜いえいえ、お嫌じゃないです」

「俺の名前は「一ノ瀬 天河いちのせ てんが」です・・・天の河って書きます」


「御衣・・・」

「天河様ですね?男性用のオモチャと同じお名前でらっしゃるんですね」


「なに言ってるんですか・・・って言うかそんなことよく知ってますね」


「知りたくなくてもネットなど徘徊しておりましたら何かの折に目に触れる

こともございますゆえ・・・」


(ネットでなに検索してんだ?)


「では満を持して天河様・・・今日からそう呼ばせていただきます」

「ああもこうもございません、この件であなたに拒否権はございませんので」

「ご覧のとおりわたくし、このような個性的なキャラクターですので、お友達が

少ないんですの」

「お隣り同士、本日よりお友達としてよしなにお願いします」

「この件につきましてもあなたに拒否権はございませんので・・・」


薄紅 綺羅螺うすべに きらら」はまじおかしい、美人なのに。

第一言葉遣いが女子高生じゃないし・・・君はお公家さんか?


そしてある日、吉方よしかたって女子が僕のところにやって来て綺羅螺きららが一ノ瀬君に

話があるから「高天橋」こうてんばしでお待ちしてますって言ってるって伝えに来た。

今週末「高天橋」のたもとで待ってるから来てくれって?。


え?いったい僕になんの用?

話があるなら学校でもいいだろ?

そりゃ、僕は綺羅螺きららに想いを寄せてるけど、まだ彼女でもなんでもない

ただの学友だろ?

だから綺羅螺きららが改まって僕に話があるって聞いて首を傾げた。


このまま綺羅螺きららを無視して高天橋に行かないって手もある。

だけど無視したら、それはレディーに対してとても失礼なことだろう。


だから僕は土曜日学校が休みの日、綺羅螺きららが待つ「高天橋」へ行った。

その日は幸いにもいい天気で雨が降らなくてよかったと思った。

橋の近くまで行くと橋のたもとでモデルみたいな綺羅螺きららが待っていた。


シュッとしたスレンダーなスタイルにモスグリーンの制服がよく似合っている。

綺羅螺きららが誰にも負けないくらい綺麗だって言うのはクラスの誰もが認めていることだった。

ただ、綺羅螺は変わった性格だからクラスの連中はあまり彼女に近ずかない。


「あの、綺羅螺きららちゃん・・・お待たせ?」

「さっそくだけど僕に用ってなに?学校じゃだめなの?」


「天河様・・・わたくしのわがままにお付き合いくださってありがとうございます」


「はあ・・・・」


「実はわたくし天河様にお願いがありますの」


「僕にお願い?・・・僕だよ?・・・僕になんかに何をお願いしようっての?


「あの・・・よかったら、正式にわたくしとお付き合い願えないかと思いまして」


「あの・・・ごめん・・・もう一回言ってくれる?」


「だから、よかったら、わたくしとお付き合いを・・・」


「・・・・・」

「まじで言ってる?・・・このシュチュエーションって本来逆だと思うんだけど」

「たとえば僕は綺羅螺きららちゃんに想いを告白するのなら分かるけど」


「え?・・・天河様、わたくしに告白なさるおつもりだったんですか?」


「あ〜いや、たとえばね・・・たとえば」


(でも、この逆告白って、これって僕にとちゃ棚ぼたじゃん)


「あのさ・・・念のため聞くけど付き合ってって・・・僕なんかのどこがいいの?」

「だいいち君んちと僕んちじゃ貧富の差がありすぎて釣り合いが取れないでしょ」


「わたくしではご不満でしょうか?・・・」


「いやいや不満だなんて思ってない、思ってないよ、絶対思わないし・・・」


「でしたら、わたくしのお願い叶えていただけます?天河様」


つづく。


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