0005縁その五 見えざる守護者


0005縁その五 見えざる守護者

今日も相も変わらない学生生活。

 学校に登校してホームルームの後休み時間を取り一限目の授業が始まりホームルームを除きそれを四回繰り返して今は昼休み。

 縁屋の件で勉強の必要はそれほどになくなってしまったが、何かあったときのために真面目に受ける。

 それには理由が二つあるまず一つ急に成績が上がれば悪目立ちするし、それを受けての教師の期待とかめんどくさい、

 最後の一つはへんな恨みを買わないことだ妖怪封印師妖魔使いそんな存在が存在する以上その関係者に恨みを買えば何をされるかわかったもんじゃない。

 一目でその関係者とわからない以上用心に越したことはない。

 力を手に入れて現実をおろそかにしても大丈夫なのは創作のの世界だけだ。

 世の中ただ力があればすべて叶うほど簡単ではないからな。


 「ツナグ聞いたか剣道部の高花の話」


 「どんな話なんだ木堂」


 こいつは俺の友人の一人木堂隆きどうたかし顔はそこそこ背もそこそこゲームなら背景かモブをやらせてもしっかり存在のないやつだ。

 別に馬鹿にはしていないこいつみたいに普通の学生の友人は奇を照らさずむ普通に一緒にいて面白い。

 いわゆるごく普通の友人の一人だ。


 

 「それがよう剣道部に高花って野郎がいるんだがこの前髪

を青く染めた超絶美人とデートしていたらしい!」


 ああ青花の奴か高花っていうのか詮索は野暮だは聞きはしなかったが。


 「そんなのそいつの勝手だろ」


 「そうなんだがまだ先があってよ! その場いた先輩以外見えねえとか言うんだよ! 先輩の友人もいわあせたらしいが見てねえって!」


 「そりゃ見間違いだろ完全に」


 まあ相手は妖怪だしな。


 「でもさ俺ちらっと見ちまったんだよ……この前校門前にいたその超絶美人の青い髪の子……先輩にきいた通りの姿で高花と合流したかと思ったらその青い子の姿が消えたんだよ……俺の目大丈夫かな……」


 「別にほんとでも嘘でもいいと思――」


 「エニシヤドノ! エニシヤ! ワタシノアルジ! オハナシアル!」


 と小鳥が窓から飛び込んできて声を張り上げ……ちょっと待てこの糞ほど目立つファンタジーな絵面考えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお! と俺の心の中で絶叫がこだました。


 ◇

 「全くおぬしの主は何を考えておるのだ! 人子が鳥はしゃべらんとおもっいているのだぞ! おかげて周りの人子の記憶を消す面倒ごとを!」


 「まあまあ妖神様、で何の用事た?」


 「ワタシノアルジ! ネガイアル! キイテホシイ!」


 「わかった放課後な」


 「ムリ! ジカンナイ! イマスグ!」


 「そういわれてもな……どうしたらいい妖神様?」


 「ところでその主とやらはどんな存在だ?」


 「ワタシノアルジ! ワラシ! ナガイキ! ズットヒトノタメガンバッタ!」


 「やはり神の眷属か……仕方ない小僧のれさっさと解決するぞ」


 「でも学校は?」


 「さっき幻術をかけておいたから問題ない。丁度ここは屋上とかいう屋根の上で人目もない。さっさといくぞ小僧」


 そうせかし膨らんで雲に乗った妖神様の上に乗り小鳥に道案内を頼んだ。


 「でどこにいるのだそのわらしとかいうやつは」


 「コッチ! ソコノサキノ! ナガイイエ!」


 「ここって普通の……」


 「何を驚いておる。この国の人子ならだれもが知っている神の眷属の童だぞ。ならばいうまでもあるまい」


 「それってどういう……」


 「まだわからんか鈍い奴め! さっさと会いに行くぞ! 神の眷属としての最後の役目を見届けるのも神の一柱としてのワシの仕事だからな!」


 「コノヘヤ! アルジカナニイル!」


 「ここ普通のアパートだよな……」


 こんところに神の眷属ないかいるのか?

 俺は小首をかしげながら202号室の戸をたたいた。


 「カギはあけておいた入ってくれ今日は住人は戻ってこない」


 俺は戸をひらいた。


 「あがってくれ僕は座敷童の鈴この部屋にとりついている」


 そこにいたのは大人に成長したらさも美人だろうと伺える.おかっぱの可愛らしい着物姿の少女だがわずかに発光していて神々しくもある。


 「でっ! 何の要件だ座敷童が」


 「僕の腕を見てくれ」


 鈴着物の袖をめくった。


 「腕が透けている」


 「ああ僕は座敷童として寿命なんだあとひとつ福を授けたらこの世から消えるだろう」


 「その手伝いをしろと? ところで妖神様これは縁屋の仕事でいいのか?」


 「ああ含まれる妖怪の多くは徳を積めば神の眷属になれるこ奴も元は妖霊族という妖怪だからな」


 「わかった手伝ってやるけど何をしたらいい」


 「私を秋のもとに連れて行ってくれ! 僕は基本部屋以外に憑りつけない。唯一の例外は君の鏡だ縁屋!」

 

 「妖神様どうしたらいい?」


 「縁の鏡の鏡部分をこ奴にあてよ。本人の了解があれば鏡にとりかせることができる」


 俺は鈴に縁の鏡を当てた。

 すると


 「ほんとに入った」


 『マモルのいるところまで僕をつけていってくれ僕が誘導する』


 しばらく歩いて。


 「そのマモルってこはどんな子なんだ?」


 『あの子はとってもいいこで優しくて何故かあの子のことを考えると胸の鼓動が早くなって顔が熱くなるんだ。いつもマモルの子とを考えてしまうし、寝顔を見ているだけでとてもやさしい気持ちになる何度マモルに触れられたらいいなと思ったてことは百や二百ではない。何故かマモルから目が離せなくてずっと目で追ってしまうし、マモルがいるだけ胸が暖かいもので満たされるんだ』


 「それって――」


 「ふん! 神の眷属が人子に恋慕するなど馬鹿馬鹿しい!」


 『恋慕? そんなわけないじゃないか。僕は座敷童僕が幸せになるんじゃなくて人を幸せにするのが仕事だよ』


 「まだ気づかんかそいつに福を与えたいならあう必要すらあるまい」


 『それは――』


 「妖神様本人が気づくのが大事だと俺は思うよ」


 「そんなまどろっこしてことをしたらしこりが残こるだけだ」


 『……ここだよこの建物の中にマモルはいる』


 そこは大きな病院で俺たちはマモルのいる病室に向かった。


 「妖神様これでいいのかな」


 「何がだ小僧」


 「これでマモルに幸福を授けたら鈴は消えてしまうのだろ?」


 「結果は変わらん今日福を授けなけれこ奴は消えるだけよ遅いか早いかの話にすぎん」


 「そんな」


 『いいんだ縁屋僕は最後の福をマモルにあげたいこの部屋だ出してくれ』

 

 「妖神様これどうやって出せばいいんだ?」


 「適当にふってでていと念じればよい」


 「こうか……出た」


 「話を聞いてくれてかまわないから二人っきりにしてくれないか」


 「分かった二人きりにしてあげよう妖神様」


 「よかろう」


 俺たちが病室から出ると。


 「縁の鏡が光ってうっ――」


 『「次はどんな人たちが来るのかな」

「きたなんてかわいい子なんだろう」

 「この子マモルっていのかなんだろうこの子を見ていると胸の鼓動が早まって顔が熱くなるや」

 「本当にかわいいなあずっと目で追っちゃうよ」

 「マモルに触れたみたいなどんなかんじなんだろ」

 「むう、マモルが女の人が映っているテレビとかいうの見てるなんだろう少しムカってする」

 「なんだろうこの気持ち僕を僕だけをマモルに見てほしい見えるわけないのに」

 「あわわわわわわわわわマモルが熱出してねこんているマモルの母さん早く帰ってきて今の僕じゃ病は治せないんだ」

 「やっとマモルが落ち着いた僕がずっと手を握っていたおかげだといいな」

 「マモルが病を直すために行ってしまった……僕に残されたこの最後の福を授ればマモルは救えるでもなんだろうこの気持ちは涙があふれて止まらないよ……」

 「マモルとずっとずっと一緒にいたい……でも僕の残された時間はもう……手遅れになる前に縁屋に…………」』


 「縁の鏡から記憶が流れ込んできたのかまさかな早すぎる忘れろ小僧」


 じゃっかん気になる言い方だがそれを深く考える前に縁の鏡から光があふれだした。


 「妖神様縁の鏡から映像が」


 「どうやら小僧にこの縁を見届ける義務があるようだな」


 俺たちは縁のか鏡から投射される二人の映像を見つめた。


 「マモル今楽にしてやる」


 鈴はベットの周りを囲むカーテンを開けた。

 そこには点滴の管にまみれた十歳前くらいの少年がいた。


 「お……姉さん……誰?」


 「僕が見えるのか?」


 「お……姉さん……もしか……して……いつも……僕……苦し……い……とき……一緒に……いてく……れた……お……姉さん……」


 「ああそうだ僕は君に幸せを届けに来た」


 「お……姉さん……泣いて……る……だったら……僕が……幸せ……なって……お……姉さん……を……涙が……出ない……ほど……幸せ……して……あげ……る……」


 鈴の目からボロボロと涙があふれだす。


 「ああそうだな僕から最大級の幸せをプレゼントだ」


 鈴は目から大粒の涙を流し少年に触れると体が輝きだす。


 『マモルと離れたくない――

 マモルともっと一緒にいたい――

 マモルと寺子屋に通いたい――

 マモルとおいしいものを食べたい――

 マモルと友になりたい――

 マモルと祝言を上げたい――

 マモルと夫婦になりたい――

 マモルの子を産みたい――

 はは今気づいた――

 本当に僕はマモルが大好きだったんだな――

 初めて見た時から――

 マモル離れたくないよ――」』


 「マモルさよならだ」


 「うん……またね……お……姉さん……お姉……さん……も……幸せ……なって……ね……お……姉さん……だけ……じゃ……だめ……なら……僕が……幸せ……に……するよ……」


 「ああ……もう幸せだ……大好きな男を幸せにできるのだからなマモル愛して――」


 光に包まれた鈴は涙で顔を濡らしながら消えてしまった――

 これが選択できる本当に幸せな結末なのかわからないけど――

 鈴はきっと最後は満足していただろう――

 大好きな人の幸せを願い――

 最後に大好きな男の子のために命を懸けた最後の選択を使えたのだ――

 その想いは決して踏みにじられてはいけないのだから――

 鈴と俺たちの物語はこれで終わった――


 「信じられない奇跡だ! 全ての腫瘍が消えている! 障害も一つもない! 何があったんだいマモル君!」


 「いつも僕を心配してくれたお姉さんが助けてくれたの! お姉さんと約束したから大きくなったらお姉さんと結婚してお姉さんを幸せにするんだ!」


 「帰るか妖神様」


 「だなまたよくわからん奴だったな」


 「これから鈴はどうなるんだ?」


 「全ての力を使い切り勤めを全うした座敷童は神々に一つだけ功績に応じた願いをかなえてもらえる。まああの小娘の望みくらいなら簡単に叶うだろうな」


 「鈴の願いはやっぱり……」


 「知らん! 考えたくないわ!」


 きっと二人は幸せになるだろうな――

 そう言葉にしようと思ったがまた目頭が一瞬だけ熱くなり飲み込んでしまった――

 それはきっとではないから――

 二人は絶対に――


 裏話005

 使命を終えた鈴は願い事で現世に転生した。

 それから18年の月日がたち二人は再会する。

 学生の鈴との結婚は周りに物議が巻き起こったが出会って一か月で熟練夫婦のようにお互いことを理解するその姿に回りの者もいつしかそれを受けいれ福を持たらす座敷童であったため鈴は幸運の予兆にとても敏感で夫婦生活は万事うまくいった。

 そのため幼いころより鈴は周りの者から幸せを招くアドバイスをしてくれる福の神の生まれ変わりとして扱われ誰しもに愛されて育った。

 良き子宝にも良き友にも良き親にも二人は恵まれたマモルは家族と鈴以外の女性に興味がなく鈴も家族とマモル以外の男性にも興味がなく浮気とは無縁の夫婦生活を送ることになる。

 これは二人の想いを組んで願いをかなえる際の神たちのサービス。

 ただ言えること末永く爆発しろということだ。


次回予告


0006縁その六 不老の絆

隠れ里に住まう人魚の長に人探しを頼まれる縁屋

彼女は数千年に一度の繁殖期に里の恩人である一人の人間の男の子供が欲しいというが転生しておらず何故か想い人は何百年も生きていることが判明する

そして二人の結末はいかに相も変わらずの濃厚なドラマが君たちを待っている

君の君たちの心へ感動を――

ただそれだけだ――

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