明治十年十二月末、東京・太政官における政府軍高官会議

寒風吹き荒ぶ東京城内、新政府軍の高官らは、京都を捨て防衛の拠点を東国に移した現状を踏まえ、次なる戦略を議論していた。会議は夜を徹し、各々の意見が鋭く交錯せり。



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軍務卿・山縣有朋、厳然たる面持ちで言葉を切り出す。

「諸君、此度の京都放棄は苦渋の選択なりき。されど、我が軍の兵力分散を防ぎ、東京に防衛を集約せしは、敵を京へと誘い込み、その戦力を疲弊させんとの計略に基づき候。然る後、決定的なる反攻を行う準備が整いつつあり、今こそ次の一手を定むる時なり。」


これに応じて、大蔵卿・大隈重信、鋭く語りぬ。

「東京の防衛は盤石なれど、敵の進撃は未だ勢いを衰えず、加えて列藩・台湾・朝鮮の連携は予想以上に堅固に候。この戦を持久戦とせんとすれば、民心の離反を恐れねばならぬ。一挙に敵の士気を挫き、戦局を転じる作戦が必要に候。」


その言葉に力を得たかの如く、西郷を知る旧友・板垣退助が席より立ち上がり、声を張る。

「西郷殿の知略は容易ならざるものなり。故に、敵を迎撃するのみならず、彼の狙いを逆手に取り、京以外の要衝に奇襲を仕掛けるべきなり。中山道や東海道を抑え、敵の補給路を断つ策を講じることが肝要と存じ候。」


参謀本部の川村純義もまた、これに賛同しながら提案を重ねぬ。

「現状、敵は京に集中し、次なる攻勢を計画中と推測され候。これを利用し、敵の背後を衝くべし。陸軍を再編し、江戸湾から相模湾にかけて新たなる戦線を構築しつつ、海軍により敵の物資補給を断絶する策を取りたし。」


一同がその提案に耳を傾ける中、太政大臣・三条実美が静かに口を開きぬ。

「諸君の策、確かに妙策なり。然れども、民を巻き込みての戦は断じて避けねばならず、此度の戦局を迅速に終結せしめる方策もまた、模索する必要ありと存じ候。」


最後に、板垣が結びの言葉を述べる。

「然り、我らが最終的な勝利を収めるためには、決戦にて敵を撃破し、同時に内外に明治新政府の正当性を示さねばならぬ。士気を高めつつ、速やかに次なる行動を定め、即時行動に移るべし。」



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かくして会議は結論を見、政府軍は次なる作戦に備え、以下の方針を確認せり。


1. 東京防衛をさらに強固にし、時間を稼ぐ。



2. 中山道・東海道の要衝を抑え、敵の補給線を断つ。



3. 海軍を活用し、敵の背後を奇襲する。




政府軍の高官らは、京都の放棄を囮とし、連合軍を罠に誘い込む次なる戦略に向けて動き出し、戦局の主導権を奪わんと決意を固めたり。


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