1877年(明治十年)十一月 欧米列強代表会議:極東情勢と露土戦争の影響

露土戦争が激化し、クリミアにおける緊張が頂点に達したこの時、極東においても日本国の不安定化が進んでいた。特に、ロシア帝国が日本国内の反乱軍に支援を行い、日本の新政府と対峙しているとの情報が欧米各国の首都に伝わると、列強諸国の外交官らはこの問題の対策を急ぐ必要に迫られた。会議はロンドンにて、英国の主導により開催され、英・仏・独・伊・露・米・西の代表が参集せり。会場は荘厳なる大広間にて、列強代表たちは各々の立場より意見を表明せんとする熱気に満ち溢れたり。


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英国代表 ランスロット・ハンブルトン卿

「諸君、かのロシア帝国の野心が東洋に及びしは危惧に堪えぬ。クリミアにおける露土戦争の最中にあって、極東日本の反乱勢力に援助を差し伸べるは、到底容認し得ざる所業なり。このままロシアの勢力が日本に及べば、我が東洋の権益も脅かされる。何としてもロシアの野望を抑え、極東における均衡を保たねばならぬ。」


仏国代表 ジャック・デュヴェル伯爵

「確かに、仏国もまた同様の危惧を抱く。露土戦争は欧州の均衡を損ね、極東においてもロシアの動きが影響を及ぼしつつある。我が国としても、極東における不安定要素の増大は憂慮すべき問題なり。日本の新政府が露国の圧力に屈することなく、この反乱を抑え得るよう、何らかの支援を検討せねばならぬであろう。」


独逸代表 ハインリヒ・クラウゼン大使

「露西亜が我ら欧州における情勢に関与するならば未だしも、遠く極東にまでその手を伸ばすは、我が独逸の利益をも脅かす動きなり。我々としては、日本の政権が自立し得るように支援するか、少なくとも露西亜の不穏なる動きを阻止する手立てを講じるべきかと考える。」


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露国代表 アレクセイ・ドミトリエフ公爵

「諸君、そもそも我が露国が日本の反乱勢力に些少の支援を提供せるは、単に両国の友好と東洋の平和を確保せんがためなり。我が帝国は日本国を併呑せんとする野望を抱くに非ず。むしろ、日本政府の専横と西洋的価値観の押しつけに抗する民衆の義挙を尊重せんとす。諸国もまた、この視点を理解すべきなり。」


伊代表 フランチェスコ・カルディーニ侯爵

「ドミトリエフ公爵の弁は理に適わぬ。我が国にとり、極東は新たなる交易の場としての価値を持つゆえ、安定は必須なり。もし露国が日本における反乱を支持するならば、その波及は他の東洋諸国にも及ぶであろう。諸君、我らは一致して露国の行動を監視し、日本新政府の支援を検討すべき時が来たと信ずる。」


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米国代表 ウィリアム・ウィルソン総領事

「我がアメリカ合衆国もまた、日本国の動向に注目せざるを得ぬ。極東における貿易と友好関係の確保は我が国益に直結するゆえ、新政府が安定を取り戻し、反乱を平定せんことを望む。無論、我々は他国の内政干渉には慎重を期すが、ロシアの影響力が増大する現状、見過ごすわけにはいかぬ。」


西代表 ラモン・カサーレス

「我がスペインも東洋への進出を視野に入れつつあり、日本の安定は重要な命題と考う。諸君、欧州にて列強が拮抗し合う今、我らは極東においては一致し、日本の新政府に支援を講じ、露国の拡大を抑えるべきではなかろうか。」


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**英国代表 ハンブルトン卿の締め**


「諸君、ここに結論を得たり。我ら欧米列強は、この緊迫せる極東情勢に際し、ロシアの介入を厳重に監視しつつ、日本新政府の安定を促進するため、各国の協力体制を強化すべし。日本国内の反乱がこれ以上拡大すれば、我らの東洋における利益も脅かされん。従って、適時、軍需支援ならびに外交的圧力を加え、反乱軍の勢力を削ぐ策を講じるに賛同を求む。」


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斯くして、列強は一致してロシアの動向を警戒し、日本新政府への間接的な支援を行うことで、極東の安定を保たんと決定せり。各国代表はそれぞれの本国に報告をなし、必要あらば日本に対し協力の手を差し伸べるべき旨、取り計らう所存となりぬ。こうして極東情勢は列強の干渉の兆しを見せ、反乱と新政府の対立は、さらに国際的な局面へと向かいつつありたり。

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