第32話

なんともやりきれない感じはあるが、そんな感じで試合は終わってしまった。


試合が終わって自室にいた私は、お父さんとお母さんに道場に呼び出されていた。


お母さんに真剣な表情で、「ふーちゃん、魔法使って見せてもらえる?」


とお願いされたので、よく分かってはいないものの魔法を使うことにする。


この道場は魔法で強化してあるようで、簡単に壊れたりはしないようになっている。考えてみれば当たり前なのかもしれないが、この世界には魔法によって建物を強化する技術があるようだ。


魔法を見せて欲しいと言われたがどのような魔法が良いのだろうか?特に指定もされていないので、いつものように魔法を使うことにする。


そういえば、最近はずっと詩織さんたちにダンジョンに連れて行ってもらっていることもあり、魔法を両親の前では使っていないことを思い出す。


折角なので、私は格好付けて、指を鳴らし、それを合図として魔法を発動させる。


実際には、指はならなかったものの、道場の一面を薄い氷がおおう、両親の足も一部凍りついているようであった。


そう、私が使った魔法は氷の魔法使いがアニメでよく使う、自身を中心として一定範囲にあるものを全て凍らせるというものである。


指が鳴らさなかったのを、私が恥ずかしそうにしていると、両親から驚きの声が聞こえてくる。


どうやら、いくら精霊と契約しているとはいえ、私がここまで魔法を使えるとは思っていなかったようである。


精霊と契約している人の魔法は、威力が高いことで有名ではあるものの、それは経験やレベルの積み重ねによって得られるものだと思っていたようである。


魔法の威力、略して魔法力と呼ぶことにするが、私の魔法力は年齢を考えれば明らかに見合ってないものであるようだ。


確かに私は前世の記憶を持ち、多くの時間を魔法の鍛錬に使っている。その努力が実ったようで、私の魔法力は子供にしてはかなり強いものになっているようであった。


そこにはもちろん、雪ちゃんという私の魔法力をブーストする要素があることは否めないが…。


しばらくして、両親から魔法を解除するように言われたので、解除して魔法の練習のためにも、部屋に戻ることにした。


それから、両親は二人で何かを話しているようであった。私がどうとか、中学がどうとか言っていたような気がしたが、別に何でも良いかと思い気にしないことにした。


そういえば、せっかくスマホを買ってもらったので、様々なダンジョン配信者の動画を見ていたりしたのだが、皆一様に眉目秀麗な人が多い気がする。


思い出してみると、学校や通り道ですれ違うひとも、容姿が整っている人が多く、この世界ではそれが一般的なようであった。


ダンジョン配信を見ていると、なんだか喋りながら戦ったりしているため危ないなと思ったり、カメラのことを気にしているからか罠に引っかかっている人もいた。


もちろん、熟練のダンジョン配信者はそのようなこともないのかも知れないが、真剣なダンジョン攻略の配信だと無言になったり、必要な話しのみPT内で行うという形になっている配信も多い。


そんなこともあって、私は本当に配信は必要なのか?と思ったりもしている。まあ、人気な配信者となれば、かなり稼げるという噂があるのでそのためでないかと考えている。


因みに、私は、私が後で自分のロールプレイを見直したりするために撮影機能を使うことはあっても自ら配信するつもりはない。


そういえば、配信している者の中には学生もそれなりにいるようで、動画に学生服が写っていたりする。


友達と一緒にわいわいとダンジョン配信をしている姿に後ろ髪が引かれる思いは、あるものの私の本来の目的を思い出すようにしている。


そういえば、姉弟子や兄弟子にダンジョンに連れて行ってもらっていると話たが、特になんら特別なことなどはなかった。


そして、スマホで論文検索をしていると興味深い論文が多く出てくる。今日の魔法の基礎となっている考え方の提唱であったり、精霊に関する考察などその内容は多岐に渡った。


中でも私が気になったのは、人と精霊の融合実験に関する考察であった。ダンジョンが生まれたからというもの、人類は魔物に対抗するためにありとあらゆる可能性を検討してきた。


その中の一つとして、人間と精霊の融合実験というものが挙げられる。これは、精霊の細胞を人間に移植することで人間をより上位の存在にすることができないか試された研究であった。


他にも、酷いものであれば人間と魔物の融合実験などが行われてきたらしい。今日そのようなことは禁止されているものの、その目的を考えれば、倫理的にダメだから、といって簡単に捨てられるものではないと思う。


例えば、魔物の中でも上位の存在と呼ばれるドラゴンなんかは強力な力を持ち、その外皮は堅牢な鱗で覆われている。ドラゴンの力を、その一端でも人間に宿すことができたら、強力な戦力となりうるのである。


また、精霊と人間の融合が成り立てば、人間の体が作り替えられ、魔法を使うのに最適な肉体へと再構成されることになるだろう。


精霊は、その肉体を構成する要素から人間とは異ならるようで、魔力によって構成されている。そのため、人間より魔法を使うことに長けている。


そのようなこともあり、上記2つの実験などは行われていたようである。私は、雪ちゃんと契約していることもあるし、未だ成長期であることを踏まえるならば、精霊になることすら可能だと思っている。


私は、私の肉体を精霊と同じものに作り直してもらいたいのである。そうなれば魔法を今以上に上手く使えるようになるはずだし、私の目的にぐっと近づくような気がしたのである。


仮に精霊の肉体に作り変えるとは言っても、論文を読んでもその方向性や一定の成果を出した、方法を試すことにする。


幸い私には、雪ちゃんがいるので全く手がかりがないわけではない。例えば、私の瞳の色や髪の色が変わったのは精霊に、雪ちゃんに近づいたからだと考えられる。


論文によると、精霊と融合するにつれて瞳の色や髪の色など、目に見える部分も変化するようである。


このまま、私が精霊に近づいていけばどのようなことが、私の体に起きるのかはわからないものの、それが私の目的を叶えるためにも一番の近道のような気がした。

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