第28話

ある日、目が覚めると今まで見てきていた景色が全く異なるように見える。


魔力が今まで以上に鮮明に見えるし、様々な植物や大気中に漂う精霊たちが魔法を使っていることがわかる。


脳に伝わってくる情報量の多さに痛みを感じ、顔を顰めてしまう。


そういえば、精霊ちゃんが昨日「眠たいからしばらくおやすみするね」と伝えたいようなジェスチャーをしていたが関係があるのだろうか?


とにかく、顔を洗えば頭の痛みも多少良くなるかもしれないと思い、洗面所向かう。


顔を洗い鏡を見ながら髪を整えようとすると、私の瞳の色と髪の色が変わりつつあった。


瞳は紺青色と黒色のオッドアイ、髪は白銀色と黒のバイカラーと表現するのが正しいと思える。


属性に対する相性などで髪の色が変わったり、瞳の色が変わることは知識としては知っていたが、何もしていないはずなのにいつもと異なる私が鏡に映ることに驚かずにはいられなかった。


変化した瞳の色を見ていると、吸い込まれそうになるほどの美しさを放っている。


例えるならば、まるで宝石のような、創造物ではないかというどこか幻想的な美しさだ。


心を落ち着けるためにも、とりあえずシャワーを浴びながらどうするか考えることにする。


一応、お父さんもお母さんも二人とも私が精霊と契約しているのは知らないのだが、何か隠していることはバレている。


だけど、今更わざわざ伝えるまでもないことのようにも思われる。


とりあえず、これかも学校に行く必要があるしこの色のままだと目立ち過ぎてしまうので、光魔法で私の瞳と髪が黒く見えるように常時魔法を維持したいと思う。


最近では、一日中魔法を維持できることはもちろん就寝中も魔法の効果を持続させることが出来るようになっていた。


それは、精霊ちゃんにより効率的な魔法を教わったこと、魔法を体の一部の様に扱えるようになりつつあること、精霊ちゃんが私の魔法を維持するのを手伝ってくれていることが理由にあげられる。


これで林間学校などの宿泊行事があったとしても、私の本当の髪と瞳色がバレることはないだろう。


まあ、本気で隠したいわけではないのでバレたとしても何ら問題はないのだが、みんなに隠し事があるという点が良いと心が喜んでいるのを感じる。


特に意味があるわけではないのだが、ミステリアス要素が足されてより魅力的になるように感じるからである。


因みに、この世界の人の髪色や瞳の色は前世とは比べものにならないほど色のバリュエーションに富んでいると言える。


なので、私の髪の色や瞳の色が変わったところで特に目立つわけではなく、繰り返すことになるが、この事実を隠すことで私に足される隠し事という要素が良いスパイスになるんじゃない?と思うから隠そうと思う。


それに何となく見られたくないという、そんな思いがどこかにあったのだと思う。


私の魔法技術は相当に向上していて今ではお母さんであっても、魔法を行使しているのは気付けてもどんな魔法を行使しているかはわからないと思う。


なので、私が意図的に魔法を解除するか魔法を維持することを忘れてしまうほどの何かがなければ大丈夫だと思う。


部屋に戻り、そんなことを考えながら、ごろごろしていると、ふと精霊ちゃんの魔力を感じると、目の前が光で包まれ、突然のこともあり私は目を瞑る。


次に目を開くと目の前に、妖精がいた。これが私が契約した精霊ちゃんであることを魔力の繋がりから直感する。


その容貌は私にそっくりであり、違いと言えばその綺麗な白銀の髪と透き通る空色の瞳ぐらいだろう。


私はいつも鏡で自分のことを見ているのでその容姿が私そっくりなことに気がつき驚きを隠させない。


どうやら、私が私のことを好きなことが精霊ちゃんにもわかったようで、この姿を取ってくれたらしい。


私に対するお礼なのか?それとも単に精霊が契約者に似た姿をとるのか?私がその姿を望んだからなのか?などはわかりようはない。


とは思っていたものの、精霊ちゃんからはっきりと理由が伝わってくる。


精霊ちゃんを構成する魔力の全てが私の魔力と同質のものになっているからのようである。


それから、精霊ちゃんはゆきというらしい。


それは、雪から生まれた精霊であることが理由のようで、精霊にとって何から生まれたかが大切のようである。


私もこれから、雪ちゃんと呼ぶようにする。


そして雪ちゃんの身長は人形と比べて遜色ないものであり、私が昔おままごとで使用していたサイズの人形と変わりはない。


雪ちゃんは、私の周りをくるくると回って嬉しそうにしている。


ここまで成長したならば他の人に感知されるかもしれないので外に出る時は私の中に隠れてもらうことにする。


なお、雪ちゃんが私の中に隠れて魔法を行使することもできるし、私の背後を索敵することもできるようなので、これ以上なく信頼できる仲間を見つけられたと言えるだろう。


それから、成長すれば人間の子供サイズぐらいには成れるようなので、こちらも期待したい。


いつものように、「お父さん、お母さん、おはようございます。今日の朝ごはんはなんなのですか?」と食卓で聞いてみると、いつもと変わりない様子でお母さんが「今朝はパンとヨーグルトよ」と返事をくれる。


どうやら、私の魔法はバレていないようで、高まった心臓の鼓動が段々と緩やかになって行くのを感じる。


とにかく緊張していたのだが、いつも通り表に出てみたら変わり映えのない対応だったので私と両親との温度差で冷静になってくる。


それからいつも通り、日傘をさして学校に向かう。


今日はいつもと違い、憂鬱な学校が雪ちゃんのおかげで楽しいものに思える。


それ以降も、授業で雪ちゃんが私の中から飛び出したりする事件もあったのだが、誰も気が付いていなかったようなので堂々と机の上で雪ちゃんと魔法を使って遊んでいた。


因みに、私の精霊は雪の精霊だが、世間一般に言うところの氷属性の精霊のようだ。


私たち人間にとっては雪の精霊という定義は存在せず、氷属性の精霊とされているようである。


勿論、専門で研究している人などは区別しているのかもしれないが…。


それから数日たったある日、お風呂から上がった私はいつものようにリビングでアニメを見ていたのだが、ふと振り返るとお母さんがとても驚いた顔をしている。


雪ちゃんが成長したことでお母さんにも姿が見えるようになっていたようである。


この世界では、精霊は何処にでもいることは知られてはいるものの、人に見えるほど魔力を持った精霊が人の目の前に現れることは少ない。


勿論、精霊が好む環境であれば一定の強さを持った精霊がきてくれることもあるし、ダンジョン内や魔力が溜まっている場所に行けばその姿をみることはできる。


だが、普段生活している家に現れるとは全く予見できなかったのだろう。


お母さんはゆきちゃんをみて年甲斐もなくはしゃいでいる。


そしてしばらくの間、写真を撮ったりしていたのだが、その姿が私にそっくりなことに気がついたようだ…。

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