第13話
ダンジョンに行くことができなかったので、今日は魔法や剣の鍛錬に時間をあてることにする。
普段通りの稽古を行なっていると、お父さんが声をかけてくる。
「ふーちゃんと同じ学校に通っている子がうちの道場に剣を習いに来るんだが、一緒に来ないか?」
と誘いを受けたのだが、私は理想を叶えるために忙しいので「お父さんごめんなさいです。私はやることがあるのです」と断りを入れることにした。
そもそも私の精神的年齢から、今の私と同世代の子と一緒に何かをするということが考えられないのである。
それは、わかってもらえるのではないだろうか?
面倒臭いだろうなと思うだけで、全然楽しみに思えないし、そんな時間があるなら一人で鍛錬を積む方が効率が良い。
一対一で見てもらえるなら、稽古に出るのも良いかもしれないが、同じぐらいの実力の子でないと同じことを教えるわけにいかないだろうから、私にはいつでも稽古をつけられるので、基本放置されるだろうことは容易に推測できる。
私に対する稽古はいつでもできるので無理にお弟子さんが沢山いる時にする必要がないからである。
そういえば、うちの道場は毎日開かれており、お父さんは毎日お弟子さんに剣を教えている。
なので、一緒にダンジョンに行く暇はないし、どこかに旅行というのも記憶が戻ってからというもの経験したことがない。
多くの弟子がいることも要因のひとつではあるのだが、冒険者として活躍している人、将来冒険者になりたい人たちも剣を習いに来ているからである。
とにかく、お弟子さんが多いので、毎日でも道場を開かなければならないのである。
こうなってしまったのは、お父さんが来るもの拒まずというスタンスを取っているからで、希望すれば大体誰でも弟子としてとるので人が沢山増えてしまったのだ。
そうであっても人気がなければ人は来ないだろう。
ではなぜかと言うと、うちが剣術の名家であることも理由の一つなのだろうが、お父さんが懇切丁寧に一人一人を見るし、各人にあった練習プランなどを立てるから口コミが広がっていき、いつのまにかこうなってしまったらしい。
勿論、毎日稽古は大変ではないか?という話にはなるのだが、お父さんは剣の稽古が大好きで時間があれば鍛錬に励んでいるので、苦ではないようである。
むしろ、いつも楽しそうにしているし、今の生活にやりがいを感じているように見えるので良いと思う。
因みに、お父さんとの稽古は怪我をさせられてからしていない。
今では私の回復魔法も強くなっており、傷が残ることはないのだが、お母さんがしばらくお父さんとの稽古を禁止しているのである。
そもそも、怪我をしたくないのにダンジョンに行くのはなんだか矛盾しているかもしれないが、理想の私になるためにはダンジョンに行って経験値を稼がないといけないから仕方がないだろう。
私の一番の目的が理想の姿になることだと再認識するとともに、昨日トラップを踏みに行ったのはあまり良い行動ではなかったのでは?とも少し反省した。あの時はわくわくが抑えきれなかったのだ。
そうやって鍛錬を積んでいるとその日は、すぐに終わってしまった。もう今日は学校が始まる日である。
正直今更初等教育など必要性を感じないし、行ったところで苦痛でしかないと思うが、義務教育であるので両親は教育を受けさせる義務があるから、私を学校に行かせなければならない。
まあ、私としては教育の受けるを権利があるだけなので実際には受けなくて良いのだが…。
そんな理屈をこねたところで、行かないわけにはいかないだろう。
月曜日は憂鬱だと感じる人は多いと思う。私もその中の一人である。
重い足取りで、準備を進めていく。制服に着替えて準備をしてランドセルに詰めていく。準備ができたので今日は早めに学校に向かうことにする。
折角買ってもらったこともあり、可愛い日傘をさしながら学校に向かうことにする。
両親に、行ってきますと言って刀を持って学校に向かうことにする。
登下校の練習はそれなりにしていたと思っていたが、一昨日のダンジョン探索で頭から抜け落ちてしまった。
あれ?学校まではどう行くのだろう?と一瞬困ってしまったが、学校に行く他の子達を見かけてついていくことにした。
同じ制服だったし間違えはないだろうと思ったからだ。それにしても、ダンジョンでのことは今でも鮮明に思い出せる。
その記憶の印象が強すぎて、登下校の道を忘れてしまった。
他の子についていくと無事学校に着いたので安心した。
それにしても、通りすがり人からの目線をいつも以上に感じたのはなぜだろうか?私が可愛いのは認めるし、それでこっちを見てくる人は今までもいたのだが、ここまで見られることはなかった。
違いと言えば日傘をさしていたことだろうか?確かに、他の子で、日傘をさしている子はいなかったので目立ったのかもしれないと思った。
意識を向けると、他の生徒も私の方を見ているようなのでそうなのだろうと思った。
それから、上履きに履き替えてクラスに向かう。するとクラスはわいわいと賑わっていた。
うるさいし、耳障りだとすら思う。
ああ、やっぱり早く帰りたいと思ってしまうが仕方がないだろう。
そんな憂鬱な気分で黒板に張り出されている指定された席に座る。
幸い、壁側の座席であったので、誰かに絡まれないようにカーテンの中に隠れて魔法の練習をしていた。
すると、いつのまにか上田先生がやってきて「みなさん席についてください」と一言発するとクラスが急に静かになる。
この朝のHRが始まるまでの時間で分かったことがある。それは、私はこのクラスには絶対馴染めないということだ。
授業が始まるが、とりあえず自己紹介から始めるらしい。出席番号の早い人から自己紹介を始める。
落ち着いて考えてみたら、ここには私と同世代の子たちがいるのだ。将来のPTメンバーがいるかも知れないと思って一人一人の自己紹介を真剣に聞いていく。
私の順番が来たので、「上泉楓花といいます。好きなものは魔法で、好きな食べ物はお魚さんです。
皆様よろしくお願いいたします」と一礼をしてから座る。特に誰の印象にも残らない地味な自己紹介であったと思う。
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