クエストの報告

「オロチ討伐ご苦労だった。まさか本当に6人で討伐してしまうとは」

「信じて無かったんですか?」

「信じてたさ。だけど、伝説にもなってるSランクの魔物が相手だとどうしてもな」


 オロチ討伐から数日が経過してグレンたちは冒険者協会へと出向いていた。ゲインへ依頼完了の報告をし、黒い竜のことについても話した。

 そして、一つ気掛かりなこともついでに報告する。


「騎士団が黒い竜のことを黒竜と呼んでいたことか・・・」

「はい。伝説上の魔物であり、歴史上で一度だけ存在が確認されたのが黒竜です。その時は大国が一瞬のうちに焼け野原になったとされていて、名前を出すのも憚られる魔物。その黒竜と特徴などが違うにも関わらず黒い竜を黒竜と呼んでいたことに違和感を感じました」

「なるほどな。黒竜の名をクエストや任務中に出せば失敗に導かれるとされるほど縁起が悪い名前だ。それを冒険者も騎士たちも知っていながら騎士が名前を出していたのか」

「はい。あと、自分たちがいるのにどうして、とも言ってました。オロチの動向をいち早く情報を仕入れてた点も気になります。

 注意しておいてもいいかと。まぁ、冒険者である自分たちに出来ることは限られますが」

「確かにな。事前に動いて下手に騎士団を刺激するのも良くないからな。しばらくは様子見しかないだろう。動きがあれば連絡を入れる」

「ありがとうございます。あ、そういえば、黒い竜の卵を僕たちのギルドで育てることにしました」

「は? 黒い竜の卵の育成? 何を言って―――」

「それでは、失礼します」

「ちょっと待て! おい!」


 グレンたちは会話を切り上げて冒険者協会長室を出る。ギルドハウスが建つ場所に6人で見学しに行く。建設工事は着々と進んでおり、基礎の部分が出来上がってきていた。


「予定通りだとあと1年ほどで出来るらしいぞ」

「やっぱりそれだけ長く掛かるか。それまでどうしようかな。特にやることもないし」

「それだったら各自でやりたいことをやるってのでどうだ? 俺はグレンに差を付けられてたから修業がてらダンジョンとか行きたいからな」

「あ、僕もそれに行きたいな。未知の魔物に遭遇して攻撃を受けてみたい」

「ペインくんは相変わらずだね。だったら、私とミリアは実家に1回帰ろうかな。両親が1回ぐらい顔を見せろって言ってきてたんだよね」

「お姉ちゃんが帰るなら一緒に帰るよ~」

「ふわぁ~みんなやることがあるんだ。だったら私はどうしようかな。しばらく魔法での仕事が入ってないから、ゆっくりしてても暇だし。あ、グレンって何かクエスト受けるの?」

「まぁ、みんながそれぞれやることあって暇になるからそうしようかなと思ってるよ」

「だったら私もそれに付いて行っていい? グレンに魔法を教えたかったし」

「オーレリアから魔法を教われるのはありがたい。ぜひお願いするよ」

「了解~。レイアとミリア、睨まれると怖い」

「「ズルい!!」」


 こうして、6人は解散してそれぞれの目的のために各自行動を始める。


「ブラッディハウンドの元メンバーの人たちに挨拶だけして行ってもいいかな?」

「いいよ~。私も少し用事があったし」


 ブラッディハウンドの元メンバーの人たちは、冒険者協会でクエストを受注して仕事をこなしていた。現在はギルドハウスも無く、ギルドとは言えない状況のため、ギルドへの上納金は無しにしている。正式に活動を始めてから再開するようには伝えてはおり、了承は得ている。


「あ、グレンさんたちじゃないですか。今日はどうしたんですか?」

「実は、ギルドハウスが建つまでしばらく掛かるのもあって、僕たちはそれぞれ各自で自由行動をすることにしたんだ。だから、誰かに連絡が必要な時に困るといけないかと思って伝えに来たんだ」

「わざわざありがとうございます。確かギルドハウス完成まで1年ですよね。それまで連絡がしっかり出来るかどうか分からないとなると困るかもですね」

「そう言うと思ってたよ。それじゃ、これを渡しておくよ」

「こ、これは、意思伝心機じゃないですか。高価なのにいいんですか?」

「君たちはもう僕たちギルドの一員だからいいよ。とりあえず、現在のリーダーであるウルスに渡しておくから、何かあった時は使ってね」


 意思伝心機とは、魔力を事前に登録しておくことで、その登録された魔力の持ち主の人と離れていても会話をすることが出来る機械である。

 魔術式を機械に織り込むことで作られたこの装置は、グレンの横にいるオーレリアの傑作の一つなのだ。


「そういえば、オーレリアも用事があるって言ってたけど何だったの?」

「実は、私たちのクエストに同行させたいメンバーがいるんだよね」

「え? 初耳だな。オーレリアが僕たち以外で興味を示す相手がいることにも驚いたけど」

「失礼だぞ~。私だって他人に興味・・・ないかもだけど、私が魔法の才能があるって感じた人がいたんだよね」

「オーレリアほどの魔法使いが才能を感じる人がいたのか」

「そうそう。えっと・・・この娘!」

「きゃっ! な、何なんですか!」


 ブラッディハウンドの元メンバーの女性にオーレリアが抱きつく。急に抱き着かれた女性は驚いてオーレリアを引き剥がそうとするが、オーレリアは離れようとしない。


「えっと・・・ごめん。君の名前は?」

「彼女はネルです。副リーダーを任せています」

「ウルスさんから紹介されましたが、ネルと言います。職業としては、魔法剣士をやらせて貰っています。オーレリアさん! もういい加減に離れて下さい!」

「嫌だよ~。君、抱き心地いいし。何より魅力的な魔力をしてる」

「み、魅力的な魔力?」

「そう! 魔力ってのは人それぞれ違うんだけど、あなた・・・ネルの魔力はとても魅力的なんだ~。魔力の色も質も実にいい!」

「は、はぁ・・・あの、グレンさん、どうにかならないのでしょうか。この後もクエストが入ってて」

「うーん・・・こうなったオーレリアは止められないからなー。悪いけどネルの変わりに誰か入れたりってする?」

「大丈夫ですよ。ネルさんの代わりに魔法使いと剣士を入れれば問題無いです。ただ、その分だけ報酬金が下がってしまうので、パーティのメンバーが納得するのかどうか」

「分かった。ギルドから報酬は上乗せさせて貰うよ」

「い、いや、そこまでのことはさすがに・・・」

「オーレリアの我儘に付き合ってもらうからそれぐらいはね。それじゃ、クエストを受けに行こうか」

「ふふふ・・・いつもはやる気起きないけど楽しみだな~」

「私これからどうなっちゃうの・・・」

「あの! 俺も一緒に行きたいです!」

「君は?」

「おいおいレイド。さすがにグレンさんたちに付いて行くのはマズイって」

「雑用でもなんでもいいのでお願いします! 俺・・・もっと強くなって稼ぎたいんです!」

「何のために稼ぎたいの?」

「家族のために」


 信念を持った目にグレンはため息をついて了承する。あれほどの目をした人間を断ることは出来ないし、何よりもギルドにいる冒険者の家族はギルドにとっても大切な家族だ。そのために強くなりたいという理由なら断れない。

 強くなるために一人で突っ走って死なれるより、グレンの目の届く範囲にいて貰った方が守れるというのもある。


「ネルにレイドもいいなー・・・。今度俺たちも頼み込んでみようかな。Sランク冒険者であるグレンさんたちのパーティに入れるなんて最高過ぎるだろ」

「はぁー・・・あんまりこういうことが増えないように釘を刺しておくけど、僕も他のメンバーもあんまり誰かとパーティを組むことは無いよ。

 そもそも適性のクエストじゃないところに行くことになっちゃうからね。僕たちが下のランクのクエストに行くことになれば荒らすことになるし、上のランクのクエストに下のランクの冒険者を連れて行けば命の危険がある。

 みんなそのことは分かっていると思う。だからこそ一歩ずつ丁寧に進んで欲しい。全ての脅威オールメナスは君たちの歩みをしっかりとサポートするから」


 その言葉を聞いたブラッディハウンドの元メンバーたちは大きく頷いてそれぞれのクエストへと向かう。そして、残ったグレン、オーレリア、ネル、レイドはクエストを受注して街を出発する。

 受注したクエストは大量発生したサイクロプスの討伐。先日討伐したワイバーンよりも格下の魔物であり、ランクとしてはBランクの魔物である。

 数が多いためAランクのクエストとなっているのだ。


「あの、どうして俺をパーティに入れてくれたんですか?」

「え? パーティに入ってクエストに行きたかったんじゃないの?」

「いえ、さっき他のメンバーに言っていたことがあるのにどうしてかなと思って」

「あぁ、そのことか。まぁ、君が危険だったからかな」

「き、危険ですか?」

「うん。強くなるためにソロで適正以上のクエストを受けて命の危険がありそうだと感じたから。何かに焦ってるように見えたのが大きい」

「・・・そうかもしれません。どうしても家族を早く養いたいので」

「なるほどね。まぁ、今回のクエストで強くなる切っ掛けになってくれると嬉しいよ」

「ありがとうございます!」


 目的地に向かいつつ休憩を挟んで歩みを進める。飛空石を使おうにも以前使ってからマナの回復をしていなかったため、今回は徒歩での移動となっている。

 移動中にオーレリアは魔法の講義をしていた。


「魔法の講義といこうか~。どうせ移動中は暇だからね」

「よ、よろしくお願いします」

「ネル、あんまり緊張しなくていいよ。オーレリアは教えるの厳しくないから」

「そうそう。私は分かる範囲でしか教えないから大丈夫。まずは魔法とは何なのかから教えましょう!」


 オーレリアがウキウキで魔法の講義を始めた。

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