騎士団からの頼み
グレンは一気にブレイブへと近付くと、一瞬のうちに10連撃を決める。ブレイブは何も出来ないまま一気に訓練場の壁まで吹き飛ばされてしまう。
そこに向かってグレンは斬撃を飛ばす。正確には、木刀に通わせた魔力を斬撃のように飛ばしているのだが。その斬撃がいくつもブレイブに向かって飛んで行く。耐久性を強化されている訓練場の壁が見るも無残な姿へとなってしまった。
そこに更に斬撃を飛ばすが、それをアレス達が弾き飛ばしてブレイブに当たるのを防ぐ。
「グレン、それ以上はアイツが死んじまう」
「大丈夫。死なないように加減してる。それよりも君たちをバカにしたアイツにはもっとお仕置きをしないと」
「それは、ダメだな。俺たち全員でお前を止める」
「・・・はぁ、またやっちゃったのか」
「そうだ。お前は頭に血が上ると見境が無くなるのがいけない。精神修行でもしたらどうだ?」
「そうした方が良さそうだね」
スキル発動によって出ていたオーラが消えて通常のグレンへと戻る。アレス達の登場によって冷静さを取り戻した。その光景を見ていた周りのギャラリーは、安心して胸をなでおろす。本気を出したグレンなら、この後どうなっていたのか分からないからだ。
「グレン、部下の非礼を詫びさせてくれ。すまなかった」
「いえ、僕もやり過ぎてしまったので」
「ははは! まぁ、ブレイブにはいい勉強になっただろう。どのような人であっても接し方を変えるなどあってはならない。騎士であるならば尚更だ。市民を守る立場の騎士であるのに冒険者だからと見下したりするのは止めるようにと何度も言っていたのだがな。
もっと厳しく騎士団に叩き込む必要があるようだ。相手を驕り見下して実力を見誤れば負ける。これが力試しという形だから良かったものの、実戦なら死んでいる。そうなってからでは遅い」
「騎士団長は厳しいお方なんですね」
「部下の命を預かる立場だからな。厳し過ぎて恨まれるぐらいがちょうどいい。後から後悔出来ないのが俺たち騎士や冒険者だろ?」
「確かにそうですね。あれもこれもしておけば良かったと思っても死んでは意味がありませんもんね」
「その通りだ。グレンとは話が合いそうだな」
クレイヴは嬉しそうにグレンへと手を出す。それに応えるようにグレンは握手をしてその場を後にする。意識を失っているブレイブは、エレナが回復魔法を使用して叩き起こしていた。
そして、再び協会長の部屋に戻ってきたクレイヴはクエストについて話し始める。
「先ほどの戦いで実力はかなりのものだとハッキリしたので、より依頼を頼みやすくなった。ブレイブも異論は無いな?」
「はい。俺の稚拙な行動で全員に不快な思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」
先ほどまで調子に乗っていたブレイブとは打って変わり、かなり大人しくなっている。バカにしていた冒険者であるグレンに完膚なきまでにボコボコにされたのが余程効いたのだ。
「いや、僕もやり過ぎてしまった。僕からも申し訳ない」
「いやいや、グレンさんは何も悪くありません。あまりにも幼い考えの俺が悪かったんですから」
「クレイヴ、ブレイブの成長のためにグレンを利用したな?」
「はて、何のことかな? さてと、エレナ、映写機を」
エレナは懐から小さな水晶を取り出す。
その映写機から映し出されたのは、1匹の巨大な魔物が王都ミッドランへと向かっている映像である。
「この魔物は?」
「Sランクの魔物であるオロチだ。それが王都へと向かっている」
「Sランクの魔物が王都に!?」
グレン達が倒したワイバーンはAランクの魔物であり、Sランクの魔物は単体で国が壊滅させられる恐れがあるほどの魔物である。それが、王都へ向かっているとあれば悠長に構えている暇はない。
「オロチが向かっているのならどうして冒険者協会へ連絡が一切無かった! 冒険者も騎士団も関係無く協力して倒さないといけない事案だろ」
「連絡が遅れたことは申し訳なかった。俺たち騎士団が気付いたのも別件が立て込んでいて先日だったのだ。しかも、その別件のせいで俺たち騎士団は王都に来るまで大きく動くことが出来ない。
恐らくは足止めに少数を向かわせることぐらいしか無理だろうな」
「別件?」
「このことは口外しないで欲しいのだが、七大貴族が狙われている。そのことで騎士団が調査並びに護衛をしており、人員をそちらに回す余裕が無い現状だ」
七大貴族とは、この国の王に次いで権力を有している7人の貴族である。それぞれが様々な分野で国を古くから支えている貴族であり、1人であっても欠けることがあってはならないほどの存在なのだ。
「なるほど。そういう事情があったのか。いや、すまない。俺たち冒険者協会もオロチの存在に気付かなかったのだから、何も言えないな」
「オロチの存在に騎士団が気付いたのは偶然なのだ。七大貴族を狙う賊の一人を捕まえて尋問をしたのだが、そいつが王国に最大級の危機が訪れると言ったのだ。それ以上の情報は得れなかったが、七大貴族が狙われる以外の危機を調べるとオロチにたどり着いた。
やつはゆっくりながら確実に王都へと向かっている」
「騎士団の方々は七大貴族の護衛、冒険者はSランク魔物の対処ということですかね」
「うむ。冒険者にかなり負担を強いることになるが、七大貴族の護衛は騎士団しか出来ないことになっている。すまないが、王都を守って欲しい」
「「もちろん!」」
クレイヴ達はグレンへと頭を下げる。グレン達はその思いを受け取ってオロチへの対策をしていく。Sランクの魔物はAランクの魔物と違い、伝説上の存在と呼ばれる魔物もおり、情報がかなり少ない。
そのため、準備は万全にしておく必要がある。
「グレン悪いな。他のSランク冒険者を回したいが、高ランク冒険者は自由過ぎて連絡もつかない。オロチ相手に対処するのがグレン達6人になっちまうなんて」
「そんなことなら大丈夫ですよ」
「そんなことって・・・相手はSランクの魔物だぞ。戦力は多い方がいいだろ」
「確かに危険な相手です。けど、不思議と6人なら負ける気がしないんです。それに嬉しいんですよ」
「は? 嬉しい?」
「ええ。SランクになってやっとSランクの魔物と力試しが出来るんですから」
グレンの言葉に5人が頷く。ゲインはその光景を見て、ため息をつく。高ランクの冒険者は自由気ままであり、どこか欠如しているような冒険者が多い。例えば、倫理観が欠如しているマッドサイエンティストのような冒険者、ひたすらに強さを追い求め続けて山に籠って仙人のように生活している冒険者などなど。
「まぁ、高ランク冒険者はこういう感じだったな。にしても、オロチ相手に対策はあるのか? 過去の文献によれば、かなりの魔法耐性と物理耐性を持ってると書いてあるが」
「Sランクの魔物相手では、現在の僕たちの武器では戦えないと思います。言われた通り、魔法と物理の耐性があるとなると武器の方が耐えきれないので」
「だったらどうするんだ? 今からオロチ用の武器を用意するなんて出来ないだろう」
「大丈夫です。神器を引っ張り出すので」
「神器だと!?」
神器とは、
「お前らはBランクのダンジョンにしか行ってないんだろ? どうやって神器なんて引き当てたんだ?」
「それは・・・5年間でどれだけのダンジョンをクリアしたか・・・えぇ・・・超大変でした」
「お、おう。そうだったのか」
「僕は乗り気じゃなかったんですが、他の5人のやる気が凄過ぎて付き合わされましたよ。まぁ、おかげで高ランクの
「そういえば、お前達のダンジョン攻略数は異常だったもんな。国内のBランク以下のダンジョンが全て攻略されるかと思ったぞ」
「それは無いですよ。攻略されるダンジョン以上に発生するダンジョン数が多いので」
「確かにな。ここまでダンジョン発生が活性化されたことは無かったんだな・・・。何にせよお前達にだけ頼ることになってしまって申し訳ない」
「ゲインさんは王都で起きてることに当たって下さい。僕たちは大丈夫ですので」
ゲインはグレン達に頭を下げて副協会長であるアリシアと今後のことについて話し始める。グレン達は6人で住んでいる家へと戻り、全員で倉庫へと行く。
「久々に神器を出すなー。神器に頼ると腕が磨かれないからってので使ってなかったんだよな」
「ねぇねぇグレンくん。オロチって聞いた話だと頭がいっぱいの蛇なんでしょ? 誰がどう戦うとかってプランあるの?」
「んー・・・ペインどう思う?」
「僕に聞かれても伝説上の魔物だからねー。正直、分からない。ただ、僕たちなら頭を各個撃破で問題無いと思う。みんなも自信ありだろ?」
「当然ですよ! 私とグレンさんなら余裕です!」
「ミリア~どうしてあなたとグレンくんの2人で考えてるのよ!」
「え~、たまにはグレンさんと2人で戦いたいよ」
「眠いよ~早くヘビさんを倒して休もう。ずっと働いてるよ」
倉庫の壁には6つの指輪が飾られている。真ん中にある指輪を囲うように5つの指輪が並んでいる。その指輪を見てグレンは笑みを浮かべて思い出に浸りつつ真ん中の指を縦から横向きに変える。
そうすると、指輪が飾られていた壁が横へ移動して、奥へ進めるようになる。奥に進むと、6つの台座にそれぞれ武具が綺麗に飾られて置いてある。
「私の神器~! いつ見ても綺麗だよ~可愛いよ~」
「ミリア何やってるのよ」
「神器に話しかけてご機嫌取りしてるんだよ?」
「グレン、これからは強力な魔物と戦うことになる。もう神器を常に解放してもいいんじゃないか?」
「確かにアレスの言う通りだね。
こうして、それぞれの神器を装備したグレン達は迫りくるオロチを倒すために動き出す。
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