第7話 生災孤児


 十年前、この国に大きな変革が訪れた。


 …我ながら壮大なはじまりだったが、実際に経験した身としては決して軽々しく話せる内容じゃない。あの時はひどかっただとか大変だったとかそんな言葉で語れるほどおれ自身が消化しきれていないのだ。

 もう十年も経つのに、何一つあの時のことを語ろうとは思えない。

 

 一つ確かなことは、その変革の過程で国内に無数のダンジョンが生まれたこと。

 そしてダンジョンビジネスが確立し、今日に至る。その過程で生まれたのが生災孤児だ。

 彼ら彼女らはダンジョンにより両親どころか身内も全て奪われた存在なのだ。


「なら、ステーキ一択じゃないか。若いのは肉を食うのも仕事だからね」


「黒地さんは何歳?」


「え? もうすぐ三十だけど?」


「なら、私と十二しか違わない。まだ若いよ」

 

 いや、十二歳は結構な歳の差だと思うんだが。気を使ってくれるのは嬉しかったがまだまだ若さを感じる言動だった。

 というか、十二歳差ってことは彼女は十八歳と言うことだろうか。見た目からはどう考えても中学生、あるいは高校生成り立てにしか見えないんだが。まぁ、流石に、今の段階で年齢を聞くのは気が引けた。

 とりあえず注文を済ませ、ドリンクバーへ。

 注ぎ方から教え、自由におかわりできることを伝えると目を輝かせていた。それだけで今日はここに来た意味があると確信した。


「それで、私は何をすればいいの?」


 席に戻るなり、伊藤さんはそう言って来た。

 実にまっすぐで真摯な態度である。普通なら賞賛される態度だろう。いつの時代だって素直な若者はそれだけで価値がある。

 だから、


「うん、まずはそれをやめよう」


 大人はしっかりと若者に教えなければならないのだ。

 その素直さは強みにもなれば弱みにもなる。ともすればダンジョンの探索者として生きるならば致命的な弱点となることも。


「え?」

 

「何をすればいいって言葉を使うのをやめないか? 大事なのは伊藤さんが何をしたいかの方だと思う」


「……」


 驚いたまま固まってしまった。

 この年頃特有。若いのでどう反応したらいいのかわからないんだろう。というか、どうしてそんなことを言われたのか意味もわかっていない可能性の方が高い。

 反発を喰らうかもしれないが、それでも伝えなければならないことがある。

 

 なにより、これからは対等なパートナーとして付き合うのだから。お互いが不足している部分は補うようにコミュニケーションをとるべきなのだ。


「伊藤さんは自分たちがやりたいこと、やるべきことのためにおれを呼んだはずだ。だったら、そのやり方を尋ねるだけでいいんだ。おれの指示を仰ぐ必要もない。もちろん出来ないことは協力するけど、ただどうすればいいって聞くのは間違いだ」




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