#48 思い (5/5)

 天照が安静にするため床に戻り、一同が本殿から出てくると百花が、

 「じゃ、あたし、そのコンペイトウだかキンピラゴボウっての取ってこようか?手分けした方がいいでしょ?」

 悠は眉をしかめ、

 「すぐ裏手の山のようだが、このトンチンカンに任せるのは非常に不安だ」

 斐瀬里は二人を見て微笑むと、

 「鬼窪君、ついて行ってあげて?」

 百花は少し不機嫌な様子で、

 「あー、なんだよー、ひせりんまでー」

 「ほ、ほら、私たち今、八咫射弩のエネルギーほとんど無いし。空から敵来たら、ね?」

 「うーん、仕方ない。同行を許す!悠隊員!」

 悠は気怠そうに、

 「やれやれ、では、他の物資調達は頼んだ」

 傑は残ったイナホ達に、

 「では、君たちも分かれて僕の物資集めと、少彦名の材料集めを手伝ってくれるかい?」

 そうして皆手分けして、目当ての物を探しに出かけたのだった。



 資材集めの最中、ツグミと傑が避難者たちの近くを通るとある話声が聞こえてくる。

 「ほら、言ったとおりだろ?昨日の夜見たって」

 「ああ、確かにあのとき話題になったAIの子に似てるな。でも海に捨てられたんだろ?」

 「そんな言い方するなよ。捨てられたじゃなく、祀られた、だ。祟りでもあったらどうするんだ!?」

 その時、遠方の熱源をツグミが察知する。

 「父さん隠れてください。飛行型の無人機が来ます。今は八咫射弩やたのいどにエネルギーがありません。対空戦闘は不利です」

 「わかった。僕は避難者たちに伝えてくる。みんなは大丈夫だろうか?」

 「他の皆も残弾は僅かなはずです。伝えておきます」

 傑が近くにいた避難者に、他の人々にも危険を伝えるよう警告し、物陰に身を隠した。暫くすると無人機が近づいてくる。避難者たちも息を潜め、何とかその場をやり過ごすと、先ほどツグミの噂をしていた避難者達が出てきた。

 「危なかったな」

 「やっぱりお前があんなこと言ったからじゃないのか?」

 「確かに、タイミングが良すぎるな。祟りって本当にあるのかもな」

 傑はその会話を聞き流すように、ツグミの手を引きその場を去った。


 傑は機械パーツをいくつか抱えたイナホと斐瀬里に合流すると、

 「順調なようだね。少し耳に入れておいて欲しい事がある。避難者の中には、この大厄災をツグミ、つまり人工知能が起こした人類への反乱だと思ってる人々が一定数居る。ここのコミュニティにも少なくない。ツグミといる君らも、民間人からはどのような扱いを受けるかわからない。接触は出来るだけ避けるようにしてくれ」

 斐瀬里は、

 「悲しいですけど、この状況下では仕方ないですね」

 イナホは難しそうな表情を見せ、

 「そういう人たちの考え方も、変えなきゃならないのか・・・・。ほんとに私なんかが考えた作戦で上手くいくかな?」

 傑は弱気なイナホを見ると、

 「僕らはベストを尽くしてる。きっと上手くいくさ」

 ツグミも、

 「私達の信じたイナホを信じてください」

 顔を上げたイナホは、

 「そうか、みんな私を・・・・。うん、頑張るよ!」



 その頃、少彦名すくなひこなに言われるがまま、川の上流へとやって来た慶介と司、そして香南芽。少彦名は香南芽の肩に乗ったまま三人に、

 「お主等の勾玉を強化するために使う、純度の高いヒスイと水晶を、ここで探してもらいたい。なかなか骨が折れるぞい?」

 香南芽は辺りを見渡し、

 「うわー、途方もないなー」

 司も、

 「ねえ、これって・・・・」

 一面ただの石と岩ばかりの光景を見ながら慶介も、

 「こっちの班はハズレくじだね」

 すると、少彦名は大声で、

 「やる前から文句ばかり言うでなーい!」

 思わず肩を竦めた香南芽が、

 「あー!もう!耳元で大声出さないでよ!」

 「命運がかかっているのじゃぞ!?」

 「わかったって!じゃあ、手分けして取り掛かろう」

そうして三人は、地道に石を漁り、時に大岩を両断したりして、宝石探しに奮闘するのだった。

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