第69話 過去への旅

「ふう、あとひとつ」そういいながら、最後の階段を上がっていく


 結局、ゼンマイをひとつずつ作動させていくだけで、何も起こらなかった


 好きだったロールプレイングゲームでは、仕掛けを作動したら隠し扉があらわれてとか巨大ゴーレムがあらわれて闘うとか

 そういうものを想定して気合いいれていたのに、思っていたのと全然違っていた


 しかし、最後のゼンマイを作動すると、何がおこるのだろうかと、緊張しながら最上階へとあがる

 ゼンマイにオリハルコンの短剣をかざすと共鳴しあいながら作動する


 全てのゼンマイが、動き出した

 そうすると時計が光り輝きながら動き出しだした


 5時45分で止まっていた針がカチリと音をたてて動き出した途端に、遺跡が崩れだしたガラガラと足元が崩れだし落ちていく


 風を纏おうとするが、魔法がつかえない


「うわあああ 」とみんな落ちていく下には、群青色の空間がひろがり俺たちは、吸い込まれるように落ちていく


「ああ、またおちていくのか

 今度はどの世界におちるんだ

 それは、嫌だ、まだこの世界にやり残したことがおおすぎる」


 ブルーと、ホクトは?マシロは? 俺は今どうなっているんだ?

 気がつけば群青色の空間に吸い込まれあたりには、沈黙しかない

 少しすると ほわっとした灯りがみえる


 そして微かな花の香り

「金木犀」

 孤児院にあった大きな金木犀の香りだ


 赤ちゃんの鳴き声が、する

 だれかが建物の中から驚きながらでてきて赤ちゃんを籠ごと抱いて中に入っていく


「 あれは、もしかして俺なのか 」

 独り言をいうと


「そうよ、あの赤ちゃんは、リルあなたなの」


 そう囁く方向をみると

 俺が浮かんでいる横にマシロが浮かんで俺に話しかけてきた


「マシロ、お前話せたのか! 」


「勿論、じゃあリルもう少し時間を遡るわね」

 そういうとマシロは、くるりと回った


 黒髪のスラリとしているがガッチリとした体をしている男性と黒い長い髪の綺麗な女性彼女の腕の中には、黒髪の赤ちゃんが抱かれていた。


「マシロ」


「そう、あなたのお父様とお母様そしてあなたよ」


 俺からみえている彼等は、どんどん色々な表情になり 

 抱かれている俺は、少しずつ成長していく

 でも、変わらないのは彼等の笑顔と

「リル、愛しているよ」と囁く言葉だ


 そうだ、全て思い出したお父様とお母様と過ごした日々

 優しい笑顔そしていつも俺に「愛してる」と囁く声

 手をのばしてみても彼等には、届かない


 そして、あの日…… お父様とお母様が帰らない人となったあの日


「どうして、俺なんかの為に、俺に全てを与えてしまったんだ」

 と泣き叫ぶ


 次の瞬間ふわりと抱きしめられた。


「それは、リルあなたが、私達の全てだからよ・・・リル愛しているわ」


「そうだよ、リル 自分を信じろ 俺なんかなんて二度と思うな」


「リル、誰よりもお前を愛しているよ」

 と、ふたりがギュッと抱きしめて消えた


「ジュリアに、もしふたりに、あなたに危険な事があればジュリアのもといた世界にあなたを5年間すごさせて欲しいとお願いされていたの

 魔法の、魔力が無い世界に、連れて行ってと10歳になったら義兄さんが、きっとあなたを見つけてくれるからって」


「え?じゃあ北斗は、リルの前世でなくリル自身だったのか

 義兄さんって父上なのか

 お母様は父上の義妹だったのか?」

 知らない事だらけで心が追いついていかない


「そう、私も時空を超えてこの世界の人を向こうの世界に移すのははじめてだったから5歳のあなたが赤ちゃんになり成長して20歳の男性になるなんて驚いたわ」


「驚いたわってそれまで、見に来ていなかったのか?」


「私も、ずっと自由に動けない状態になっていたの

 やっと貴方のところに来れたときには、

 すっかり大きくなっていて、あなたアイドルなんてやっていてビックリしたわ」


「そうだったんだ、マシロも長い間とらわれていたんだね」


「それでね、慌ててこちらの世界に戻ってもらったの

 でも、ちゃんと元に戻って良かったわ」


「あ!崖からおちたときのチクリ!ってマシロお前か!」


「向こうの人は、いつも急いで生活しているから、

 きっとこちらの世界と時間の流れ方が違うのね」


 マシロの告白は、衝撃だったがそれ以上に両親との思い出が想いがすべて思い出せたことが嬉しい


「北斗」と「リル」どちらも本当の自分だった


 胸のつかえがとれた気持ちだ


「マシロ、それでここからどうやってでるんだ 」

 とたずねた途端また浮いていた体が落ちていく


 金木犀の香りを感じながら……


 今度は、一体何処におちていくんだ

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