第56話 共鳴

 空を駆け抜け父上の執務室のバルコニーに降りる

 バルコニーから父上の執務室に入ると父上は机で政務をし、グーゼラスが傍にいた


「父上もグーゼラスも、私が窓から突然入ってきても驚かられないのですね」


「ああ、先程シファーから連絡があった」


「さすが、お早いですね」


「お前のことだから母上と双子に姿を見せたらすぐにグライシス領に戻れないと思い私の執務室の窓からこっそりくると思った」


「っ!バレバレでしたか、母上と双子にはゆっくり帰る時に会いたかったんです」


「せっかくの気遣いだったが、母上は、実家に双子を連れて遊びに行っている」


「そうでしたか」 窓から入る必要なかったな


「しかし、今夜だけは家で休んでいけ、お前の話も聞きたいしな」


「はい、では先に少し汗を流して参ります」

 そう言って自分の部屋に行こうと、父上の執務室を出るといきなりマーサにあった


「まあ!リル様!なんですかその格好! きゃあ! ブルーもホクトも泥だらけ! 早く! お部屋にお入りくださいませ 綺麗にいたしますよ! 」


「わかった、わかったからマーサ引っ張らないで! ごめん! お願い!」

 久しぶりのマーサのお小言が心地よい


「マーサ、髪は切らないでほしい」


「えっ!長くするにしてももこのままではあまりにも・・・・・・」


「マーサの言いたいことはわかるよ 

 でも少し事情があってね もうしばらくこのままで」


「もう!わかりました、でもお手入れだけはいたしますよ」


 嫌という暇もなくマーサは思い切り、ハチミツのトリートメントで手入れを始めた


「マーサのおかげで久しぶりに公爵家のリル様らしくなったよ」


「本当に、身だしなみはいつもきちんとしてくださいませ」


 そしてもう一度父上の執務室に行く

 父上とグーゼラスはソファで座って待っていた


「父上、遅くなりましたが、

 ミスリルソードありがとうございます」


「クローネに出会ったのか」


「はい、よくしていただきました」


「私からも手紙を書いておこう」


「ありがとうございます」


「少し見ない間に背丈も体も、大きくなったな」


「そうですか?また着るものがないと母上に叱られそうですね」

 ハハハと3人で、笑う、母上は今頃くしゃみでもしているだろう


 そして、本題に入った

 俺はこれまで会ったことを全て父上に話した


「サラマンダーを倒したあとフェニックスが、サラマンダーがサタームスと血の契約をしていたと話していました

 もしかすると蛇螻蛄ヘビケラや今回のクラーケンもそうではないかと……」


「おそらくそうだろう

 グーゼラスもクラーケンについて調べていたが、どういう経緯でかわからないがおそらく裏にサタームスがいる可能性高い」


「奴がなぜグライシス領を狙うのかがわからない」


「ぶどうだ 簡単な話だワインの市場を独占するために、あとグライシス領から崩しにかかってポールステンシャル王国を狙っているんだろう」


「では必ずクラーケンは始末しないといけないですね」

 俺がそういうとおもむろに父上が席を外した

 そして奥から手に木箱を持って出てきた


「開けてみろ」


 中には銀色に光る短剣が出てきた

 手に持ってみると剣が俺に共鳴するかのように赤く光った


「それはオリハルコンの短剣だ お前の父ポーラリスの形見だ」


「オリハルコン・・・・・・・」


「その剣は真の主でないと共鳴しない 剣がお前を主として認めている証拠だ」


 剣はずっと共鳴し続け、赤く光っている


「やっとお前に渡せる日がきたな 

 リル、16歳のお誕生日おめでとう

 その剣は、お前の父、ポーラリスから私からは、新しい指輪を」

 父上からプラチナに蒼い魔石のついた指輪を頂いた


「えっ、ああ、私、今日誕生日でしたか すっかり忘れてました」


「自分で忘れるほど大変だったんだな、リル」

 グーゼラスが頭をワシャワシャしながらお祝いを言ってくれた


 そのあと夕食の時、ジーゼメリウス家のみんなが俺の16歳をお祝いしてくれた

 その夜、

「父上、いいですか?」


「どうした、眠れないのか」


「一緒に寝てもいいですか?」


「16歳になったのにか」と父上が大笑いする


「なんとなく一緒に眠りたいんですよ」


「でかい男が2人、まあいいか、来い」


 父の大きなベッドに潜り込む


「今日、初めて父上にあった日を思い出しました

 大きな手で抱えられてとても安心しましたよ」


「黒ネズミ時代だな」


「父さん、本当にありがとうございます 

 でもこれからもずっと父さんの息子でいさせてください お願いします」


「…… 当たり前だろう、お前が嫌だと言ってもお前がずっと私の息子だ」


「・・・・・・・ ありがとうございます」


「明日、どうせ早く出るんだろ 寝ろ」


「はい、おやすみなさい」

 5歳の頃に戻った16歳になった夜だった


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