【短編】夜

ばろんさん

青から黒へ

俺は今、千葉県にいる。


正直に言うが、ここがどこなのか、俺には全く分からない。

あてもなく、ただただ歩いているうちに、海が見えるここへたどり着いてしまったのだ。


海.....


青く、明るい空の下、どこまでも、どこまでも伸びているように見える、空よりも綺麗で、青い。


その綺麗な青の傍には、楽しそうに遊ぶ家族、お互いを愛し合っているカップル、ふざけ合って楽しむ集団、その他様々な人たちがいる。


そんな様子を見ても、楽しくは無い。

ただ、ずっと見てしまっている。

これは、どこか来る、自分自身でも認知出来ない「憧れ」のせいなのか。


ただ、時間は俺を待ってはくれない。


時間が惜しい訳では無いが、この場を後にしなければならない。


この青い空が、闇に飲まれたように黒くなるまでに、俺は18年という比較的に短い人生を、歩いて、歩いて、歩いて......そして最期に「この人生は良かったか?」そう、歩き疲れているであろう自分自身に問いたかった。










歩いた。


明るい青い空が、だんだんと、その明るさを無くしていく中、人を見て、建物を見て、食べ物を食い、そして、空は気づけば、暗く染まっている。


いくつもの星が見える。


どれもこれも綺麗に輝き、まるで、人生という暗闇に、奇跡を起こしてくれるのではないか、そう思わせてくれる希望の一点。

それらは、俺の中にはない。なかったのだ。


朝の時と比べ、静まり返り、綺麗だった青い海さえもが、黒く染って見えてしまう。


人がいない浜辺......そこには行かず、俺はもう少し先にある、高く、少しなら街全体を見渡せそうな崖がある場所へと進んでいく。


その崖から見る街は、美しかった。


今から少し......いや、もっと前だろうか、その時の世界では、こんなにも美しい夜景は見られなかっただろう。


振り返る。


振り返れば、黒く染った海が、朝と同様、ずっと先まで続いているように見える。


時刻は0時を過ぎた。


そろそろ頃合だ。


18年、色々なことが起きた。


友達も出来た。

恋人のできた。

両親は優しい。


でも、そんないい境遇で生まれても、誰もが見れるであろうあるひとつで、俺は自ら命を絶とうとしている。


それは、「世界」だ。


人が人を憎み、嫌い、殺し合う「戦争」という行為。


いつまで経っても終わりがない。

そんな世界が嫌いだ。


人が人を陥れ、自分自身の得しか考えることの出来ない人間を生み出すこの世界が嫌いだ。


他の生物を追いやり、人間の都合で殺して、絶滅さえもさせてしまう、そんな人間も嫌いだ。


他にもある。

けど、総合的に見たら、「現実を見たくなくなった」のだ。


俺はもう引き返せない。


既に水に身を委ねているからだ。


沈んでいく。

別に今は苦しくない。

呼吸をしたくなった時、俺は死ぬ。


呼吸を止め、深く、底のない暗闇のような水の中で、俺は自分の人生がどうだったかを問う。


俺は、声には出せないため、自分自身に向かって、心の奥底から答えた。






━━━━━━━━━と。

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