長歌集『せめて花だけ』

第1話

おもしろき

こともなき世を

おもしろく

そういう一首を

耳にして

力の限り

すみなすも

スウィングしたなら

空回り

上手くは行かない

前進と

あっという間の

後退に

ぴりりきりりと

張り詰めて

昔が良いかは

知りかねて

しかし光陰

矢の如し

失敗するのが

常ならば

上手くいくのは

金星（きんぼし）と

心得たなら

今もなお

世知辛（せちがら）き世を

おもしろく

すみなすための

手始めに

明日（あした）夜（よ）に出（い）づ

月星（つきほし）が

どんな形で

あろうとも

せめて花だけ飾っておきたい