第17話 トウヤたちのスライム退治
トウヤたち6人の勇者は、いきなりスライムに戦いを仕掛けたことを反省する。スライムのことを何も知らないまま、いきなり切りかかって行ったのである。
これはアンドレアスがトウヤたちに置かれた立場を理解させるためにわざとスライムのことを教えていなかったこともある。
トウヤたち6人の勇者と騎士団長のアンドレアスの間には信頼関係を築く必要があったのだ。トウヤがアンドレアスに質問する。
「アンドレアスさん、お願いがあります。ダンジョンのことを教えてください。」「メジナのダンジョンは52層まで攻略されているが何層まであるのかわからない。」
「そんなダンジョンを攻略していたら魔王を討伐に行けませんよ。」「安心しろ。冒険者ランクがSになるまで続けるだけだ。」
「1層に出てくる魔物を教えてください。僕たちには知識が足りません。」「足りないものに気づくことは良いことだ。スライムはダンジョンで説明した通りだ。」
「他の魔物はどうですか。」「他にはホーンラビットが出てくる。」
「ウサギですか。」「ウサギに似ているが凶暴だ。武器は主に頭の角だ。動きが早いから動きについて行けるようになるまで我々が相手をする。」
「僕たちは戦えないのですか。」「ホーンラビットの動きについて行けるようになったら戦えるようになるよ。」
「分かりました。」「1層目の
「どうやって倒すのですか。」「それは君たちへの宿題だ。経験を積んでアイデアを出し合って考えて欲しい。」「分かりました。」
トウヤたちはアンドレアスへの質問が終わると宿の自分たちの部屋へ帰って行く。アンドレアスに護衛の兵が言う。
「自主性が出てきましたね。」「ここで一人前になってもらわなければ困る。それまでは命がけになるが彼らを守ってくれ。」
「もちろんです。弟分たちですから命をかけて守ります。」「頼む。」
勇者を守りながら魔物から戦うことは、レベルが上がるにつれて過酷なものになるだろう。護衛の兵たちは覚悟していた。
トウヤたちは自分の部屋に戻ると着替えてトウヤの部屋へ集合する。トウヤがみんなに言う。
「今日は、僕たちがどうするかアンドレアスさんに見られていたね。僕たちはダンジョンに入る前にアンドレアスさんに質問するべきだったよ。」「そうね、戦えると思いあがっていたわ。」
ユキコが反省の言葉を言う。サチが明日のことを言う。
「私たちが戦えるのはスライムだけだから、スライムの対策をしましょ。」「今日みたいなら僕たち3人で対処して、数が多かったらサチに援護してもらおう。」
ケンゴが不平を言う。
「僕が数に入っていないぞ。」「ごめん、目立たないから忘れていた。」
「それはひどいよ。」「目立たないのは斥候の役目なんだから。」
確かにケンゴの気配は薄くなってきている。それでもケンゴにはつらい。みんなケンゴを慰める。
翌日、2度目のダンジョン攻略が始まる。6人の勇者が1層目を進んで行くとスライムが5匹現れる。剣士のトウヤ、ユキコ、戦士のヒナタ、斥候のケンゴが向かって行く。
トウヤ、ユキコはスライムに剣を突き入れ核をつぶす。ヒナタは斧でスライムの体ごと核を断つ、ケンゴは2匹のスライムを短剣で切りつけて核を切る。
アンドレアスは感心する。たった1日でここまで動きが変わるとは思っていなかった。次にスライムが20匹近く現れる。アンドレアスはトウヤたちに言う。
「これは我々に任せて下がって。」「アンドレアスさん、やらせてください。」
「分かった。無理をするなよ。」「はい。」
サチが杖をかざして炎を出し、スライムを攻撃する。スライムはなすすべなく、その場に留まっている。そこへトウヤ、ユキコ、ヒナタ、ケンゴが急襲してスライムを倒していく。
ユキコがスライムの体当たりを受けるがセネカがヒールする。結局、22匹のスライムを倒す。
さらに進むと角が生えたウサギが出てくる。護衛の兵が言う。
「ホーンラビットだ。下がって。」「はい。」
トウヤたちは素直に従う。ホーンラビットは護衛の兵に飛び掛かる。一瞬の出来事だった。兵は盾を使って上方へホーンラビットをはじく。
もう1人の兵が空中にいるホーンラビットを剣で首をはねる。トウヤは護衛の兵たちが自分たちよりずっと強いことを思い知らされる。
アンドレアスが、ここで今日の探索は終わりにする。トウヤがアンドレアスに質問する。
「まだ、時間はあると思います。やめてしまうのですか。」「今日は冒険者ギルドに寄るから、これで引き上げだ。」「分かりました。」
トウヤたちはダンジョンを出ると冒険者ギルドに向かう。アンドレスは受付でトウヤたち6人の勇者が22匹のスライムの群れを討伐したことを報告する。
すると受付嬢は6人の冒険者ランクをFからEにランクアップさせる。受付嬢が言う。
「騎士団長のお話があったからランクアップしましたけど、2回の探索で22匹のスライムの群れを討伐したなど普通は信じませんからね。」
トウヤたちは新人らしからぬ成果を出したらしい。アンドレアスはトウヤたちに言う。
「君たちの今日の戦いは良かったよ。しばらくはスライムの相手ばかりだろうが、頑張ってくれ。」
トウヤたちにとってアンドレアスからの誉め言葉は心地よかった。
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